さあ、定時で帰ろう!
さあ、定時で帰ろう!
……う~ん。なんて魅力的な言葉なんでしょうか。例えば、想像してみてください。もし今が夏だったら、まだ太陽が高いうち帰路に付けるのですよ。
え? そんなことしたら、帰り慣れていないから道に迷うって? まあ、そんな迷い方をしてみたいもんじゃないですか(笑)。いつも別の所で迷っているんですから(開発迷路ってやつですよね)。
「いやぁ~、久々にさ、太陽の高いうちに帰宅しようと思ったらさ、あまりに周りの景色が違うもんで、帰り道を間違えちゃってねえ。ははは」
なあんて言ってみたいですねぇ。そう思うでしょう~(強制してどうする……)。
昔話ばかりで申し訳ないですけど、ちょっと前に
XP(えっくすぴ~)
という言葉が流行りました。ね、ね、ね(同意を求める)。ただし、マイクロソフ○のOSの話じゃありませんよ。
エクストリーム・プログラミング
ってやつですね。
なあに、中身を詳しく知らない方も大丈夫。週40時間労働って聞けば、あなたもピクリと聞き耳をたてることでしょう(月に400時間労働なら経験のある方は多いと思いますが、あれ? そんなことない?)。
1週間で40時間ってことは、週休2日間だと仮定すると1日の労働時間は8時間です。理想的じゃないですか! ワンダフル! 很漂亮(中国語でキレイ)!
おいしいところだけを聞きかじって、「俺は今日からXPをやるんだ!」って息巻いて、ドツボにはまった開発者を何人も見てきました。そういった哀れな彼らに多少の同情を持つとしたら、彼らの置かれている劣悪な環境を知っているから。
定時帰宅こそ! 開発者の憧れ。至福のとき。週40時間……。ああ、美しい響き。
仕事帰りに居酒屋によっても、ほとんどお客が来ていないでしょう。そんな時間からビールを飲めるなんて、セレブ以外の何者でもないですね(レベルをぐっと下げていますけど)そんなこと実現できるのか、って?
まあ、黙って願っているだけでは実現できそうにないですね。人間努力が肝心です。
どんな努力が必要かは、人によると思いますが、一番オーソドックスなものから考えてみましょう。
●ケース1:
仕事をしない。仕事をしなければ、会社に残っている意味は皆無ですから、さっさと帰宅できます。
……。
あんなりパッとしません。っていうより、同僚や上司、加えて後輩からの厳しい視線が痛いです。以前に紹介した妖怪「二の足踏み」や「蕎麦屋」ならば、平気でやってのけますが、ごく普通の一般社員ではちょっと厳しい選択です。
景気は悪いが、人が余っていた時代には、定時間際に上司の方から、「今日できる仕事でも、明日やれ」と言われて帰宅したこともありました。今の不景気とは随分違っていたことが思い出されます。当時はなんて言いますか、不景気だ不景気だと言っても、どこか牧場的なのどかさがありましたね。上記のようなことを言う上司は、このご時世には、絶滅してしまいました。
昨今では、「明日やることも、今日やれ」ですからね。
で、明日になったら、明後日の分の仕事をすることになります。恐怖の未来型ドミノ倒し。未来が襲ってくる未来って……嫌ですね。はっきり。
●ケース2:
仕事を他人にふる。自分では仕事をしないことに変わりありませんが、やるべきことは実施されるってケースです。ただし、自分の他に仕事をこなしてくれる人材が確保されている場合に限ります。後輩がほとんど入ってこない職場においては、かなり厳しい選択肢です。最近は30歳を過ぎても最年少なんていう職場もあったりします。平均年齢は40歳以上なんていう職場もちらほら。
そして、そういった場合、上司は何人も居たりしますから、逆に定時間際に2~3人の上司から、「今日中に、これ頼むよ」と言われて、精神が折れている人も多いでしょう。
仕事をふる相手先に、協力会社の社員さんとか、派遣さんを選択できる人はまだ恵まれていますね。彼らは契約範囲内であれば、嫌がらずに(表面上は)仕事をこなしてくれます。だけど、やっぱりこのご時世。派遣さんはどんどんと会社を去り、協力会社の方も、固定でお仕事をしてもらうのが難しくなってます。
1人の部下に上司が2~3人いたりする「逆ピラミット型」職場の場合は、弱肉強食の食物連鎖の最下層に位置する哀れな社員さんは、「仕事をふられる」立場に徹するわけで。合掌。
●ケース3:
仕事を適当にこなす。
仕事の質は下がりますが、「瞬間最大風速」的には仕事は早く終わります。そしてさっさと、逃げるように帰宅するのです。
まあ、開発と分類される作業でこれを実施すると、後が怖いことはよく分かってますよね。
いま、私がいろいろお付き合いしている開発者の方々は、このケースにハマっている人が多いように思います。先天的に適当に仕事をする人だったとは思えませんが、何かの影響で脳が破壊されたようです(中には、先天的な楽観主義者で脳天気に仕事をする方も居ますけど)。どうやら彼らには後天的に「なんちゃって仕事」が身についてしまったようです。
一時の快楽(定時退社)の誘惑に負けて、永遠に「なんちゃって仕事」を繰り返す亡霊。ただし、その部署やグループの全員が「なんちゃって仕事」亡霊だったら、彼らの定時退社は一瞬で終わります。この場合は、彼らのグループに必ず「サポーター」が存在していることが多いです。
このサポーターは彼らの部下ではなく、同僚は上司である場合があります。つまり尻拭いをしているのです。なんて健気なんでしょう。一旦尻拭いをする便利屋を認識すると、この「なんちゃって仕事亡霊」たちは怒涛のごとく、なんちゃって仕事を繰り返します。そして、あわれなサポーターが「壊れる」まで仕事を「なんちゃって」するのです。
●ケース4:
仕事をバリバリこなす。
うーん。ほとんど絶滅危惧種になってしまいましたが、こういったタイプの人も存在します。彼らは仕事も良くできるので、すぐに出世してしまって、後に残ったのは亡霊ばかりというケースも多々有ります。
もしくは、「こんな奴らと仕事なんてできるか! 馬鹿にするな! 異動させろ!」って言って出て行った人も、ちらほら(正直に告白されて、異動していった人もいます。究極は転職して行きました)。
まあ、そんなこんなでも、なんとか仕事は回ります。これが組織というものでしょうか。全体最適? 部分最適? 高速道路の渋滞がどのようにして発生するかのメカニズムを、会社の中で見ているような気がします。
さあさ、「俺は違う!」って鼻息荒いそこの貴方。さっさと仕事を片付けて、今日も定時で帰宅しましょう!