失敗が消えない世界で、どう生きるのか
人間は、失敗しながら学びます。
ところが、サイバーの世界では、失敗が許されにくい。
ここには、大きな矛盾があるのではないでしょうか。
サイバー空間には、時間と場所という物理的な境界がほとんどありません。一度流れた情報は、消したつもりでも残り続けるかもしれません。一人に向けた言葉や、一台の端末で起きたことが、思いがけない場所まで広がることもあります。
けれど、人間は間違えます。
疲れます。焦ります。忘れます。誰かを信じます。さまざまな圧力や環境のなかで、普段ならしない判断をしてしまうこともあります。
そのような人間が、失敗の消えにくい世界で、一度も間違えずに生きていけるのでしょうか。
必要なのは、「間違えない強さ」だけではないのかもしれません。
考えてみると、しなやかさには二つあるように思います。
一つは、間違える前のしなやかさです。
急がなければならない。
上司の指示に従わなければならない。
仕事を止めてはいけない。
そのような圧力に押され、足を踏み外しそうになったとき、はっと気づく。立ち止まる。間を取る。そして、状況を確かめ、判断を切り替える。
揺れないことではなく、揺れている自分に気づき、自分の判断へ戻ってくる力です。
これが、間違える前のしなやかさ-サイバー判断力なのかもしれません。
もう一つは、間違えたあとのしなやかさです。
間違いに気づく。立ち止まる。間を取る。起きたことを確かめる。隠さずに伝え、助けを求める。そして、支援を受けながら戻ってくる。
失敗する前と同じ状態には戻れないかもしれません。それでも、経験から学び、以前とは少し違う自分として戻ってくることはできます。
これが、間違えたあとのしなやかさ-サイバー回復力なのではないでしょうか。
人間の弱さを消すのではなく、弱さを持ったまま判断し、戻れる力を育てる。私は、その試みをHuman Hardeningと呼んでいます。
Human Hardeningとは、人間を失敗しない存在へ変えることではなく、この二つのしなやかさを育てることなのかもしれません。
失敗が消えにくい世界で、間違える前に立ち止まる力と、間違えたあとに戻る力を、私たちはどう育てればよいのでしょうか。
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