言語の歴史は人類の歴史。そして人類はコンピュータを言語で動かすようになった。

同じ失敗は会社を越えて繰り返されている

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SESで仕事をやっていていつも呆れているのですが、本当に技術に対しての記録を全くとらないし、読まないし、見直しません。「現行踏襲」といって、過去の資料をまるまるコピーして、技術体系を網羅した気分になっています。その結果、必要な情報を把握しきれておらずに炎上してしまいます。一回、二回なら笑い話で済みますが、複数の会社で全く関連のないプロジェクトで、まったく同じ要因で失敗が繰り返されています。一般的なSESで行くような現場では、技術的なところに会社の個性というのが出ません。一定のポイントさえ押さえればどこでも働けるという利点はありますが、そのレベルが低いのが問題です。

このコラムを読んでいるということは、たぶん日本に住んでいて日本で育った人でしょう。そうなれば、小学校、中学校と義務教育をこなして、だいたい似たような知識基盤や思考体系をもっていると思います。土台にあるものが同じ人が何も考えずに行動すれば、おのずと似たような失敗をするようです。つまり、全く別の会社や全く別のプロジェクトで同じ失敗が繰り返されると言うことは、日本全体で何も考えずに仕事をしている人がたくさんいるということです。SESで成功できる人というのは、そういうポイントを押さえているんではないかと思います。

働いている当人からすれば「考えていないだと!なんて失礼なことを言うんだ!!」と思うかもしれません。ただ、結果を見れば同じ過ちを繰り返しています。うまくいかなかったことに対して、何かデータを集めているかと言えば、そんなことをしている人は見たことがありません。ただ、上から言われたことを何も考えずに実行するだけです。つまり、考えているつもりで考えていないのです。自分の認識と現状がズレているというのもリスクが高いです。そういう方のお話を色々聞いたことがありますが、だいたいは考えているのではなく悩んでいるだけでした。

こういうパターンは大企業でよく見かけます。中小企業やベンチャーでは、失敗のバリエーションがもっと多彩です。そして、大企業ほど同じ失敗を繰り返す傾向が強いです。私たちが社会的な価値を置いている企業が、長い期間、同じ失敗を何度も繰り返しています。それを個人レベルなら叩いて、企業レベルだとスルーするというのも矛盾しています。こういう理不尽は人間の習性なのかもしれません。「そういうものだ」と割り切って、淡々と対処していくのが賢いのかもしれません。

結局のところ、何かをやる上で一定数の失敗は必ず発生します。経験則からすると、失敗を嫌悪して避けようとすればするほど、結果的には失敗の回数が増えます。嫌味を含んだ言い方をすると、馬鹿ほど失敗を恐れます。失敗の恐怖で頭が回らなくなります。同じ失敗を繰り返す人の大半がこのパターンです。学生時代を振り返ってみて、日本の教育には失敗に対するケアが足りないと思います。失敗経験の少ないエリートに価値を置いています。そういう起点から考えていくと、いろいろな現状に納得のいくものを感じます。

Comment(4)

コメント

大竹

正しいやり方をするためのお金と時間がもらえていない場合が多いとは思いますね。
安かろう悪かろう。
早かろう悪かろう。
正しいやり方をするための、ちゃんとした見積りを出すと相見積もり(競争入札)で負けるんでしょうね。
何やってんだかです。


- Horus -
確かにそういう問題もありますよね。別のコラムで触れてみようかと思います。

おたみ

>「現行踏襲」といって、過去の資料をまるまるコピーして、技術体系を網羅した気分になっています。その結果、必要な情報を把握しきれておらずに炎上してしまいます。


今関わっているプロジェクトがまさにこの状態です。

現場レベルの作業に落ちてきて少なくとも二年以上たちますが、毎年「仕切り直し」の名目で方針を二転三転させていますが以前の経過が全く反映されておらず末端作業員の私から見ると同じ轍を踏んでいるように見えます。

いわゆる PDCA サイクルの PD しかやってないんじゃないかと思います。


- Horus -
むしろDだけのような気もします。単に言われたことをやってるのはプランでも何でもないです。

おたみ

>むしろDだけのような気もします。単に言われたことをやってるのはプランでも何でもないです。

あ~、やってることが1階層ずつ下にずれてるんだ。
自分の PDCA サイクルを回してるんじゃなく、一つ下の層の PDCA サイクルを回そうとしていると。。。


(勝手に)得心しました。m(__)m


- Horus -
Dは Do じゃなくて Down ね。

マスター吹越

「考えている」→進歩がある
「悩んでいる」→進歩がない


本来進歩を出しやすくするためにビジネスフレームワークなんかがあるわけなので、「進歩、してますか?」を問わないといけないんですよねぇ····
ちゃんと(PDCAの)アクションができない···。


- Horus -
PDCAを回すのってかなり難しいんですよね。実際は細かいタスクがいっぱい走っているので、そんな一本の「PDCA」なんて筋を通して進めることは、まずあり得ないです。

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