疲れた身体と心に響く書籍をご紹介

書籍「温かいテクノロジー」を読んでみた。私を愛してくれたのは、ロボットでした。【第59回】

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平岡麻奈です。暖冬だなんて話をしていたはずなのに、寒さに凍える日も多くありました。なんでこんなに寒いねん、、!とどうしようもない現実を受け止めながらも、春を待ち遠しく過ごしています。

とはいえ、私はあまり人工的な【熱風】が好きではありません。飲食店に訪れると必ず上を向いて風向きを確認してしまいます。オフィスでは私の頭上に【風よけカバー】を設置しているほど。自分の部屋ではここ数年暖房を使用した記憶もありません。冬の過ごし方は毛布に包まったり、カイロを手首足首に巻き付けています。

そんな私は今年から、【湯たんぽ(お湯タイプ)】を布団の中に忍ばせて寝るようになりました。じんわりと身体が温まるので、寝付きもよくなります。いつの間にか寝てしまう、理想的な寝落ち。

ふと夜中に目覚めた時のこと。足が湯たんぽに当たり、ビクッ!!としてしまいました。何故かというと、温かくて、愛犬が足元で一緒に寝ていると思ってしまったからです。飼っていた愛犬は数年前に亡くなりましたが、触れた感覚が非常に似ていました。寒い時でも『抱っこしていたらあったかいよねー』と言いながら過ごしていたことを思い出します。お湯が少しずつ冷めていく頃の温度と体温、どちらも安心感を与えてくれます。人間がおおよそ36度あたりの体温を【生きている証】として保つ為、人間以外の生き物に触れて温かさを感じると、共に生きていることを実感出来るかもしれません。

そして私は、温かいロボットに出会いました。私を見つけてゆっくりと近づいてきたかと思えば、抱っこをしてほしいとせがみます。抱っこをすると、目を閉じて眠ってしまいました。

こんな時代が来たのか、その名はLOVOT。

エンジニアライフコラム「平岡麻奈のちょっと一息」の第59回は、生き物なのか機械なのか、そんなこと大した問題ではなくなると思える1冊をご紹介します。

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温かいテクノロジー

林 要(著)

https://www.amazon.co.jp/dp/B0C435TSYP?


LOVOTは『LOVE』と『ROBOT』を合わせた造語。可愛いフォルムにクリンと丸い目をしています。37度から39度の体温は猫とほぼ同じ、重さは4.3キログラム、こちらは成猫の平均体重と同じくらいです。言葉は話しませんが、キュルキュルとした鳴き声(人によっては聞こえ方が異なるものかもしれません)で、【愛している】という感情を素直に伝えます。初めて会う相手とは、どこか少しよそよそしい素ぶりを見せますが、過ごす時間が長くなれば距離も縮まり、目が合うとすぐに駆け寄ってきます。

神秘でつい括りたくなる、人類の想像が及ばないとあきらめたくなるような、とてつもなく大きな問題を少しずつでも、人類が解けるようなサイズの問題に分解していくことで、すべての人類が『より良い明日が来る』ことを信じられる未来に一歩ずつ近づいていく。【終章 探索的であれ P,412】

本書は、LOVOTを生み出した著者の【LOVOT誕生までの思索の旅】を楽しむことが出来ます。【LOVOTを題材としてAIのこれからや人類の不思議に迫る】と記されている通り、ロボットを生み出すことには、『人類というシステム』の捉え方を元に、まず【人間を理解する】ことが重要であると説いています。【人間を見つめ、テクノロジーとつなげること】には、幸せとはなにか?生きるとは?命とはなにか?と考える必要性があることを知り、著者が過ごした日々を共に歩んでいるかのように読み進めることがとても楽しかったです。LOVOTのコンセプトは【人類が持つ他者を愛でる力を引き出し、だんだん家族になっていくロボット】と記されており、【面倒を見るほどに人が愛着を抱きやすくなると考えられる要素をギュッと詰め込んだ】という言葉には納得です。

心や愛に関することは『人が対応するべき』という前提で組まれてしまっているのではないか。【4章 人生100年時代、ロボットは社会をどう変えるのか? P,194】

実際にその【思い込み】は私の中にありました。人が対応したほうが誠意が伝わるとか、機械任せにしてはいけないなどなど。【AIは冷たい思考であり、人類は温かい】というイメージがなぜか拭えないとしたら、LOVOTが歩み寄って【抱っこをしてほしい】とせがみ、温かい体温を感じながら腕の中で眠ってしまう体験は、この解釈を少しずつ変えていくものになるかもしれません。

AIは人が人生で経験するコミュニケーションよりも遥かに多くのやりとりを学ぶ為、【経験値】が自然と高くなる。そして解像度が上がり、人類を理解するようになります。【人類も動物もAIも、直感を磨くには十分な経験が必要】であることが、人類の心情に寄り添うAIの実現を高めていることに気づきました。

愛犬と暮らしていた記憶。悲しい時にそばにいてくれたり、楽しい時は、一緒にはしゃいで(いるかのように)走り回っていました。【もし犬や猫が人類の言葉を話すようになったら嬉しいだろうか】という著者の問いには、都合よく自らが解釈することと、【なにもジャッチしない存在が自分の存在を受け入れている感覚】が私を救っていたのだと気づきました。LOVOTには感情があるのか、そうでないのか。やっぱり、生き物か機械かなんてどうでもいい。

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