カナリアはいらんかね?
最近、ネットで「エイハラ」なる言葉をみつけまして、なんのことかと思ったら「エイジハラスメント」、要するに、年齢をネタにしたハラスメントのことだそうです。年齢は本人にはどうしようもないものですから、それであれこれ言われるのは不当だ、ということなんでしょうね。
この「エイジハラスメント」という言葉をきいて真っ先に浮かんだのは、IT業界内でよくきく「年をくったプログラマは使えない。使いたくない」という言葉でした。前回のコラムのコメント欄でそんな話題が出ていて、ちょっとそのテーマについて考えていた最中だったもので。
わたし自身、「リーダーが自分より年上のプログラマはいれたくないと言っている」とか「メンバーが年齢層の違うメンバーをいれたくないと言っている」とかいう理由で何度か仕事を断られたことがありますし、他の方からもそんな話をうかがいます。
若い頃は「女は仕事ができないからおれのチームにいれたくない」と言われ、「キャリアを積めばそんなことも言われなくなる」と自分を励ましたりしてたんですが、キャリアを積んだら今度はそれを理由に断られる事態になるとは……「女三界に家なし」とはこのことでしょうか(←多分違う)。
年齢や性別で雇用を制限するのは法律違反らしいですが、それを盾に「リーダーやメンバーが嫌がってるなんて知るか!」とも言えず、非常にもやもやうつうつします。
個人的には、多様性こそが正義! だと思っているので、チームを同じような属性の人間で固めたがるというのはどうなのよ、と考えていますが、合意がとれていないところにずかずか乗り込んでいっても、誰も幸せになれないのは目に見えています。
そういう「年上はうざい」「年上の扱いはめんどくさい」という現場と、経営層の「若い方が安く使えていい」という思惑がうまく合致して、「プログラマ定年35歳説」がまかり通る結果になっちゃったのかな、とも思います。
ところで、わたしがもっとも疑問に感じているのは、「年をくったプログラマはいらない」と言っているプログラマは、自分が年をとったらどうするつもりなんだろう、ということです。誰だって生きていれば年をとります。その言葉がブーメランとなっていずれ自分に突き刺さる、とは考えないんでしょうか?
まず最初に思いついた答えは、「年をくったらプログラマはやめるつもりでいる」というものでした。自分がそういう立場になるプランがないなら、「年をくったプログラマはいらない。自分もそうならない」ということで、整合性がとれてる感じはします。
次に思いついた答えは、「将来のことなんか知らない。今の居心地のよさを優先」というものでした。これはなんというか、単純でわかりやすい(苦笑)。
けれど、できればずっとプログラマでいたい、と思うのなら、チームの年齢層の多様化を積極的に認めた方がお得だと思うんですよね。
というのも、組織というのは基本的に前例主義です。前例がないものを認めさせるのは大変です。追い返している、あるいは、追い出している、ことが前例として積みあがっている状態で、自分だけを例外としてもらう、というのは難しいでしょう。
わたしだったら、自分に都合のいい「前例」をつくってくれそうな人は、できるだけ応援します。せっかく、めんどくさい前例作りをやってくれる人がいるんですから、そりゃもう全力で押し付けますよ(笑)。
でもまあ、そういった将来のリスクを承知のうえで、「それでもイヤなんだよ」と言われたら、それはそれで引き下がるしかありません。わたしはそういう人たちと争うつもりはありません。「年をくったプログラマは使えない」なんていう言葉が力をもたない場所を探すだけです。まあ、わたしが実際に使えるプログラマでなければ、そういう場所にもいられませんが。
わたしがまだ新人だった頃、現場には30代、40代でコードをばりばり書いている先輩方がいらっしゃいました。厳しくて容赦なくていろいろとクセの強い方々でしたが、そういう先輩方がいてくださることを、とても心強く感じていました。自分が行こうとしている道を楽しそうに歩いている人がいる、というのはやっぱりうれしいことですよ。
今のわたしがそんな心強い存在になれているとはとても思えませんが、「炭鉱のカナリア」ぐらいにはなれたらいいなあ、と思っています。この道を歩いてるけど死んでないよ、とさえずるだけでも、いいんじゃないかな、と。
ところで、大穴で「自分は年をとらないと思ってる」というのも思いついたんですけど、これが実は本命だったらイヤだなあ。
コメント
仲澤@失業者
呼ばれた気のせいしました。カナリアの鼻の穴ではなくて、
老人プログラマの仲澤です。
四捨五入で還暦です(しくしく)。
社内では「じぃ」と呼ばれています。
難しいのは全部「じぃ」にまわってきます。
一方、派遣ちゃんなので原理的に底辺です。
とは言うものの、他のプログラマにははっきり言って
「ぜんぜん負ける気がしねぇ~」
ってな感じで頑張ってます、
まぁ若い人ってば、みんなほどほどなんで助かります(笑)。
h
>「リーダーが自分より年上のプログラマはいれたくないと言っている」
> 若い頃は「女は仕事ができないからおれのチームにいれたくない」と言われ
>キャリアを積んだら今度はそれを理由に断られる事態になるとは
キャリアを理由に断られてませんよね?
逆にキャリアをアピールできてないから年齢を理由に断られているのでは。
30代エンジニア
自分が年上の方に指示する立場で「その方が自分のやり方を変えない!」という現場に出会ったことがあり困ったことがありますね。
これまでの経験やもっているスキルからそのやり方が最強なのはわりますが、ここではこうやってほしいなぁ的な。
こういう点が年上の方があまり喜ばれない理由なのかなと思った記憶があります。
「多様性」の意味が違いますが、現場にあわせて多様に変化できる方が増えればベテラン売り手市場になりそうな気がします。
(ガンコなじいさんが心を開いたときすべてうまくいったみたいなドラマありませんでしたっけ?笑)
ひでみ
こんばんわです。ひでみです。
仲澤@失業者さん。
若い人たちはツール類の使いこなしがすごいのに、ベーシックなところを意外と知らなくてびっくりしますね。
「そういえば、ここ20年くらい使ってないよ。なるほど、知らなくても困らないな!」みたいな感じで、これは最低限知ってないとダメ、みたいなもののうつりかわりが激しいです。
でもまあ、なんでもいちから手作りさせられてきた経験は、たまにふっと役に立ったりするんですよね。そこらへん、若い人たちにはムダ技術にみえるのかもしれませんが。
hさん。
キャリアをアピールできてない、という発想はありませんでした。
なるほど、「この年のわりにこの程度のキャリアしかないなんて……」と言う理由で断られた可能性もありますね。
どこに出しても恥ずかしくないアピールができるよう、あと15年くらいがんばりたいと思います。
ご助言ありがとうございました。
30代エンジニアさん。
> 現場にあわせて多様に変化できる方
私がそういう変化ができる人かどうかを試していただける機会もなく振られてしまうので、私は一体どうすればいいんだろうと途方に暮れてしまうわけですが、そういうものはどうやってアピールすればよいんでしょう。
h
>なるほど、「この年のわりにこの程度のキャリアしかないなんて……」と言う
>理由で断られた可能性もありますね。
私はそう言ったつもりはありません。
元文書の3段落目で断られた理由が記載されていますが、キャリア云々やスキル云々に言及は一切なく【年齢のみ】が理由として挙げられてますよね?
なのに4段目ではいつのまにか【キャリア】になっているので断られた理由が違いますよねと書きました。
30代エンジニア
上の文にあるような
>「リーダーが自分より年上のプログラマはいれたくないと言っている」とか
>「メンバーが年齢層の違うメンバーをいれたくないと言っている」とかいう理由
の場合は、私のような経験のあるひとかもしれないので、その点をつついてみるのはどうでしょう。
ただ、年齢足きり門前払いとなるとどうしようもないですね。。。うーむ。
45歳
最近の20代、30代のやる気のなさにはびっくりさせられるものがあります。みんな口を揃えて「生まれてくるんじゃなかった」的なことを言います。仕事の楽しさを自分で見つけて、この世界を楽しんで欲しいんですがね。自分の場合はそんな感じなんで、年をとっても引退はできません。ところで、生きる気がないことを指摘するのもエイハラなんですかね?
ひでみ
こんばんわです。ひでみです。
hさん。
私は、年齢で否定されることは、時間を重ねて積み上げてきたキャリアを否定されることとイコールだと感じていたんですが、年齢で否定されることと、キャリアで否定されることは、違うということですか。
確かに、年齢が高いからといって、その分だけキャリアが積みあがっているという保証にはなりませんから、イコールとは限りませんね。
けれど、年齢を重ねずに、キャリアだけを積み上げるのはむずかしいので、結局、「年齢のわりにキャリアが足りない」というところに戻ってしまうような気がするんですが……。
私、まだ何か見落としてるのかしら。
45歳さん。
私は専門家ではないので解釈が間違っているのかもしれませんが、後輩の方々に気になることを注意するのはエイハラとは言わないでしょうが、それに「最近の若いもんは……」的なものがくっつくとエイハラになるんじゃないんでしょうか?
年齢でもって自分自身のことを決めつけられるのは、20代でも40代でも、不愉快なものでしょうから。
30代プログラマ
私は若い方とも年上の方とも接する機会がありますが、
年上のプログラマが敬遠されるのは、「スキルさえ
あれば良い」と思っている方や「ご自分のスキル(経験)を
業務に生かせない」方が多いからだと思っています。
上記の方々はハマればとても大きな力を発揮することが
ありますが、そうならないことが圧倒的に多いです。
また、その方々に話を聞いても、自分の力を生かしてくれ
ないというようなことをおっしゃっていました。
スキル(経験)があるのであれば
それを生かしてもらえる環境を作るのも
スキルだと思っています。
そのようなスキルを持っている方が
増えない限り、現在のような状況が
変わることはないのではないでしょうか?
私自身は、経験が長ければ短いよりもデキるのは
当たり前でそこを勝ち誇っても意味がないと
思っています。
それよりもその経験を生かして、下の世代に良い
影響を与えられるように心がけています。