かわいそうな派遣ではなかったけれど、かわいげのない派遣ではあったかもしれない
Anubisさんの『「派遣はかわいそう」の意識をあらためてほしいよね』と『それでも派遣はかわいそうといい続けられるか』を読ませていただいて、ちょっと思うところがあったので便乗させていただきます。
これまでのわたしの雇用形態はざっと以下のような感じです。
正社員:約8年
↓
派遣:約12年(←途中、計1年半のブランクあり)
↓
正社員:約7年
↓
フリーランス:約2年(←イマココ)
かなりふらふらしていますが、今のところ、いわゆる正規と非正規がほぼ半々になってますね。
最初に派遣になった時は、「非正規になっちゃうのか……」なんて悲壮感はまるでなく、正社員のままでマネージメント系の仕事を押し付けられるより、派遣になってずっとプログラマでいられる方がうれしいだろ、くらいの軽いノリでした。
実際、派遣になってみたらめっちゃ楽でした。営業とか交渉とか事務作業とか苦手分野の仕事は派遣会社に丸投げできるし、お金が支払われないという心配はほぼないし、残業もある程度は拒否権があるし、無駄な会議に呼ばれる機会も少なくなったし、電話もとらなくてよくなったし、辞める時も営業さんに「契約更新しません」と言うだけでもろもろ処理してくれるし……。
特に、現場がイヤになった時に逃げやすい(←契約期間内は我慢するけど)、というのは本当にすばらしいことです。ですから、契約期間は小刻みな方がうれしい、と本気で思っています。多分、世のトレンド(?)を逆走してます。
以前、3ヶ月単位で契約を延ばしていた職場で、「今度は1年契約にして欲しい」と言われた時はびびりました。「えっ? 1年間、逃げられないの?」と思って(←ダメ人間)。
おもわず「1年も?」と言ったら、リーダーさんに真顔で「本当は3年契約にして欲しいと思ってる」と言われ、即座に「3年は無理です! 1年が限界です!」と答えたら笑われました。でも、結局、そのチームにはその後3年間、居座りました。最終的にはリーダーさんの希望通りになったわけです。
いつでも逃げられる、という保険はかけておきたいけど、放浪したいわけでもないので、気に入った場所で慣れた仲間とずっとシステム開発ができれば幸せなのになあ、といつも思っています。この年になってはもう無理っぽいですけど。
わたしはそもそも「変わらない」ということをまったく信じていないんですよね。会社は倒産するものだし、チームは解散するものだし、状況は変わるものです。今、本当にそこの居心地がよくても、1年先もそうであるということを信じられない。おまけに、自分は本当に役に立っているのか、といつもびくびくしています。ですから、居心地が悪くなったら逃げられる、使えないと思ったら気軽に切ってもらえる、ということに安心するんです(←自分でも難儀な性格だと思っている)。
そんなわたしに、派遣という雇用形態は多分、ものすごく合っていました。
ですから、「派遣という雇用形態に向いていない人が派遣をやらざるを得ないのはかわいそう」と言うべきで、ひとくくりに「派遣はかわいそう」は乱暴すぎるんじゃないかな、と思っています。
それに、正社員でも気の毒な立場にいる方はたくさんいますしね。
誰もが知る超有名企業に派遣されていた時期に、労組の方々が門のところで配っていた春闘の結果のチラシをみたら、夏のボーナスの数字がかなり良くて、たまたま仲良くなった別部署の正社員の方に、「これはうれしいでしょうね」と言ったら、「う~ん。うれしいことはうれしいけど、複雑かな」と浮かない顔で言われました。
「ちょっと前に大規模なリストラがあって、おれの同期がそれで辞めたんだ。再就職で苦労してるみたいで、今、こんなに良い数字を出してもらえるんなら、あの時、もうちょっと退職金を上乗せできなかったのかな、とか考えちゃうんだよ」
その話をきいた時、「この人は、これから先、どれだけ会社に不満があっても辞めないんだろうなあ」と思いました。自分とほぼ同じ条件の人が、正社員という地位を失って苦労しているという状況を知っていたら、辞めることに対する恐怖心は相当なものでしょう。
大企業の正社員が、どれだけメリットがあるものかを、わたしはよく知っていますし、ちょっとうらやましくもあります。けれど、何がなんでもそこに留まらざるを得なくなってしまった人は「かわいそう」だとわたしは思います。
そして、わたしが「かわいそう」だと思ったその人は多分、わたしのことを「かわいそう」だと思っていました。その職場から離れることを報告した時「次の仕事は決まってるの?」「不安定で大変だね」とめちゃくちゃ心配してくれましたからね。
ちなみに、ここでわたしが言ってる、「かわいそう」というのは、「自分がそういう立場になったらものすごくイヤだな」くらいの意味です。
本人がメリットとデメリットを勘案して自分はこういう生存戦略で生きていくんだ、と決めているのなら、同情なんて大きなお世話です。
わたしは、「派遣はすばらしい!」と言う気はないし、「正社員にしがみついてちゃダメだ!」と言う気もありません。ただ、「わたしは派遣に向いていて、正社員に向いていなかった」と思っているだけです。
大事にしたいことは人それぞれですし、それが変わることもよくあります。
みんなが自分の大事なものを大事にしながら仕事ができるように、多様な雇用形態が取り揃えられていて、そのどれを選んでも社会的な有利不利が発生しない社会が、本当に豊かな社会じゃないかと、私は思うんですよね。
とりあえず、「派遣はかわいそう」の裏側にある、「正社員じゃなければ幸せになれない」という迷信は絶滅して欲しいです。それのおかげで不幸になっている人って、きっとたくさんいます。
コメント
仲澤@失業者
「派遣」老人プログラマの仲澤です。
新法で区別がなくなっちゃいそうですが、派遣法施行令第4条の
いわゆる26業種と、その他の一般業種の派遣とは分けて考える意見が多いですね。
プログラマは26業種の方なのでかわいそうという立場になることは少ないのかもしれません。
自分は病気でクビになったおりフリーになりましたが、
そもそも一度も正社員になったことがない人たちも多数いるわけで、
彼らが社会的な疎外感を感じたとしてもなんの不思議もありません。
それをかわいそうというなら、そうなのかもしれません。
自分的に正社員じゃないとかわいそうだったのは健康保険料で、
60ン万円請求されたことがあります。どう考えても不公平だと思いました(笑)。
pepper
気が付けば、派遣になっていた、です。
一応、社員。 年取ってきたから、派遣も無いよ、、って言われている。
派遣で何が大変というと、派遣元と派遣先の両方の機嫌を取らないといけないのが、辛い。少し前は多重派遣で、中間の機嫌も、、。
>「派遣はかわいそう」の裏側にある、「正社員じゃなければ幸せになれない」
そうとも言えるし、そうでないとも。表裏の関係でもなく、どっちも雇われ人で、幸せかと言うと? 独り身だともっと気軽かも知れない。
もう幾つ寝ると定年かと思う自分が悲しい現実。(実際は、片手じゃ全然足りない年数が必要ですが)
ひでみ
こんばんわです。ひでみです。
仲澤@失業者さん。
> プログラマは26業種の方なのでかわいそうという立場に
> なることは少ないのかもしれません。
確かにそうですね。
プログラマは派遣業種の中では、わりと恵まれていると思います。
私はプログラマになりたくてなったわけではなく、生きていくうえで有利になりそう、という考えでプログラマを選んだ人なので、今になってみると、高校生の時の私はずいぶんとナイスな判断をしたものだと思います。
当時、プログラマという職業の存在を知らない人も多かったのに、すごいぞ、私!(←謎の自画自賛)
健康保険料は確かにびっくりします。はじめて請求金額をみた時は、目が点になりました。何度も手術やってる身なんで、あまり文句は申せませんが。
pepperさん。
30の時に「35になったら仕事がなくなるよ」と言われ、35になったら「40までには仕事がなくなるよ」と言われていましたが、いまだに仕事があります。
で、今では「まだプログラマで稼いでられてるし」と言うと「運がいいだけだよ」と言われますね。
確かにそうかもしれませんが、それならそれで、自分がどこまで運がいいのか試してみようかと思います。どうせ、今さら、引っ込みがつかないし(笑)。
pepper
ひでみさん、コメントありがとうございます。
> いまだに仕事があります。
大幅にオーバーしている今、厳しいが現実。
今のところも年齢で厳しかったようですが、人が足りないが優先した模様。
実際、いくつかは年齢で門前払い。 周りを見ると確実に平均年齢を上げているのが分かります。年寄りが若い人の仕事を奪っていると言われますが、そういう人が目障りなだけでしょう。
> 「まだプログラマで稼いでられてるし」
それが出来なくなった時、どうしたら良いか? 手に持つ技術の問題では無いと分かっても遅いのですが、その時、派遣だとしがみつくモノが無いと分かった今。
> 自分がどこまで運がいいのか試してみようか
それも一興。
早くに気が付いていれば、日本に居なかったかも、と思ったりしますが。(手遅れ)
まあ、派遣の問題じゃなく、中堅技術者の居場所が無い、って問題だったりします。
シャープのニュースを聞くと、大手だと拾ってくれる所がある模様。 中小以下だと派遣も含め、工数扱いしかされてない。