新米武装派フリーランスプログラマ男子(0x1d歳)

ジャヴァスクリプター #6「ザ・ラスト・エスイー・スタンディング」

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あらすじ: 時はウシミツ・アワー。エスイーを憎み、エスイーを滅せんとする男、ジャヴァスクリプター。彼は宿敵・ミシマを倒すべくシバウラ・リサーチパークへと突入するが、連戦のダメージは拭い切れず、ミシマことダークプロマネの暗黒シケン技を受けてしまう! しかしその時――!!  全都道府県を震撼させるサイバーパンクエスイー活劇、終幕!!

【JAVASCRIPTER】

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 「ヒグチィーーッ!!」高機動型チョッパーバイク、スーパーパッソルをロデオめいて操る白衣の男が、ジャックナイフ・ターンを決めながら鮮やかに着地!

 騎乗姿勢のまま、オザナリ気味なアイサツを決める!「ドーモ、ミシマ=サン。ナツメです」それは間違いなくヒグチの旧友、ナツメに相違なし!

 「ドーモ、ナツメ=サン。ミシマです」「イヤーッ!!」ミシマことダークプロマネのアイサツを無視し、ナツメのアンブッシュ投擲! 反射的にダークプロマネは連続バック転による回避機動!

 だがナツメの投擲はアサッテ・ムーブ! ジャヴァスクリプターの肩口へと突き刺さる! 「グワーッ!」「血迷ったか! イヤーッ!」ダークプロマネのRFP投擲!「イヤーッ!」

 ナツメは決断的速度でアクセルをフルスロットルに入れ、パッソルを巧みにジムカーナ機動させつつ叫ぶ!「ヒグチ! そのフロッピーディスクを読み込め!」「!!」

 アンタイ・ウイルスチェックせずフロッピーなどのディスク媒体からデータを読み込むのは、通常なら即セプク級の危険行為であり、重大インシデントである。

 だが後悔は、デスマを終えてからすればいい。ジャヴァスクリプターは迷わず、肩にデイジーチェーンされているSCSIフロッピーディスク装置へ接続!

 ジャヴァスクリプターのブロックデバイスがstdin経由でデータを読み込む!「させん! イヤーッ!!」事態を察知したダークプロマネのRFP投擲!「グワーッ!」

 だが数コンマミリ秒ほどディスクアクセスが速い! ディスク装置が破壊されると同時に、既に読み込まれたデータはメモリ空間へと展開! 実行形式ファイル起動!

 ジャヴァスクリプターの身体を強力な緑の光が包み込む!「これは……メモリリーク光!?」応えたのはナツメ!「その逆! これこそ『ガベージコレクソン』!!」

 大気中のジャヴァ・ヒープメモリがプログラムの一点、つまりジャヴァスクリプターへと吸い込まれていく!! リダイレクト/dev/null/めいた勢いだ!! 実際ヤバイ!!

(カカカ、これはクラウドアーキテクトのプログラムを応用したものか? なるほどこのチカラ、ワレに匹敵せんとす!!)

 ウェブキットエスイーソウルの戯言を無視し、ジャヴァスクリプターは四肢を拘束しているシメナワ・ケーブルを力任せに引き千切る!

 ナガ・ドラが突き刺さったままの痛ましい姿だが、シッコロに刻まれた「邪破」「巣食」のミンチョウ・フォントから漏れだす光が、闇夜に灯るデグレLEDめいた恐怖を呼び起こす。

 その身体からは気迫に満ちたジャヴァが溢れ出し、常人なら失禁まぬがれぬ旧友の姿を、ナツメは誇らしげに見ていた。

 ナツメがアンタイエスイー用に作成していたピアツーピア・ジャヴァ転送プログラムを、クラウドアーキテクトの遺した技術を応用して完成させたこのサーバサイド・プログラムは、貪欲に大気中のクラウド資源を喰らい尽くし、シングルスレッド・イベントループ・アーキテクチャの特徴をフルに発揮しつつ、大量のリクエストを処理する。その名も――

 『『ノド・ジェイエス!!!!』』

 「イヤーッ!!!!!!」「グワーッ!!!!」ジャヴァスクリプターが放ったノンブロッキング・ジャヴァI/Oは、ダークプロマネを直撃!

 ダークプロマネは爆発四散どころか素粒子単位で分解され消滅! ハイクを詠む間すらなし! ナムサン! インガオホー!!

 そして過剰ジャヴァ・エネルギーはヌリカベ・ベトンを容易に貫通し、スゴイデータセンタはツァーリ・ボンバが直撃したかのように次々と壊滅!

 過剰ジャヴァは光の柱となり、しばし泥酔するバンカラの若者で溢れるシバウラの街並みを眩く照らしだしていたが、やがて夜露の静けさを取り戻していった……。

……

(休憩)
 
……

 悪夢のようなウシミツ・アワーが終わり、夜明けが訪れた。それは多くのサラリマンにとっては満員電車に詰め込まれるいつもの憂鬱な出勤デーの朝であったが、彼ら2人にとっては、特別な朝であった。

 ――ザ・デイ・オブ・フォーティナイン。惨劇の夜から49日。あの日を境に、2人の運命は大きく変わってしまった。そして2人の歩む道は、二度と交わることはない。そのはずだった。

 センコに点けた火を行儀悪くシケモクに移しつつ、ナツメは尋ねた。「まだ、戦うのか?」ジャヴァスクリプターは祈りの姿勢を崩さず返した。「ああ」「仇は、討ったのではないのか?」

 「ミシマは黒幕の1人に過ぎぬ。コーシャのエスイーすべてを滅し、再びの惨劇を根本的かつ未然的に滅する。それが私のダルマ・デートルだ」

 ナツメは墓石に刻まれた名に目をやる。ナツメの幼馴染であり、ヒグチの妻となった女の名。「それが、彼女の願いでないとしても、か?」ジャヴァスクリプターはしばし沈黙して応えた。「……そうだ」

 今では彼の養女となった少女からの他愛ないオリガミ・メールを手慰みにしつつ、ナツメは言葉を重ねる。「アツコも、それを望んでいないとしても、か?」「……そうだ」ナツメは丁寧にオリガミ・メールを畳み、懐へとしまった。「そうか……」

 それ以上は言葉にする必要はなかった。ナツメは無言で白衣の腕を高く掲げた。かつての新人研修のように。ジャヴァスクリプターことヒグチも、その意図を察した。無言でその所作に合わせる。

 ナツメとヒグチ。それぞれの生き方。それぞれの運命。彼らが失ってしまったものと、失っていなかったものへ。感謝と願い、そして、揺るぎない誓いをこめて。

「「ユウジョウ!!」」

 そしてあとには、供えられたセンコとソトバ・スティックだけが、ぽつりと残された。細くたなびくセンコの煙が、弔いに植えられたバイオ・ヒガンバナと共に、たおやかに揺れる。トヨスの街は、今日も雨に濡れていた。

――ゲキ・ジ・エンド――

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参考文献:   サーバサイドJavaScriptの本命「Node.js」の基礎知識(1/3)- @IT  ニンジャスレイヤー   万能文化猫娘

Comment(1)

コメント

nanasi

面白かった。

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