晴コーディング雨デバッグ@エンジニアライフ 『なれる!SE7 目からウロコの?客先常駐術』――これじゃあ、これじゃあまるで。奴隷じゃないか
Amazon.co.jp: なれる! SE7 目からうろこの?客先常駐術 (電撃文庫): 夏海 公司,Ixy: 本
■どうせ今回もあれでしょ? 客先にキレイな女担当がいて、あんたとイチャイチャしてそれで問題が解決するのよ
ドーモ、エンジニアライフのキチ◯イ担当コラムニスト、terukizmです。
今回はじめて僕が記念すべき初レビュー! 風味の駄コラムを書かせていただきますのは、『システムエンジニアの過酷な日常をコミカルに描く異色の電撃文庫』(公式ホームページより)として一部界隈で大ヒット爆進中、
コミカライズや『ランティス』によるボイスドラマ化(ドラマCD化も決定)などマルチメディア展開爆走中、『このSE向けライトノベルがすごい!(筆者脳内ランキング)』常勝高高度戦略爆撃中の、
『なれる!SE』、シリーズ最新刊です!
とはいえ、中にはご多忙ゆえご存じない方もいらっしゃるかと思いますので、ゼントラーディ軍参謀よろしく簡単に説明しますと……。
- 見た目小学生の合法ロリ上司。ツンデレ系美少女ネットワークエンジニア『室見立華』さん(CV.東山奈央)
- なぜか筆者の周辺で一番人気。ヤンデレ系美少女オペレータ『姪乃浜梢』さん(CV.茅野愛衣)
- 普段の冷静・沈着・無表情キャラとメール本文のギャップがたまらん『橋本』課長(CV.井上麻里奈)
- 某アイドルをプロデュースする奴のバb(■■検閲■■)『カモメ』さん(CV.ホアアーッ)
- たくあん(CV.日笠陽子)
といった美少女たちに囲まれ、弱小SI企業に新卒入社してしまった主人公『桜坂工兵』くん(CV.石川界人)がキャッキャウフフしつつも、愛と勇気と希望を胸に、ダース単位で沸き起こるさまざまな困難や危機へ勇敢に立ち向かい、成長していく姿を描いた、
まさにSEによるSEのための、全米号泣のSEサクセスストーリーなのです!
……そんな間違ったことは言ってませんよね……たぶん……。
■簡単な面談(と言ってはいけないらしい、なぜだかよく分からないが)
で、今作のテーマですが、サブタイトルにもあるように、ズバリ「客先常駐」。もうこの時点で香ばしスメルがプンプンで「イイニオーイ」としあわせのパンをこねこねしたくなるわけですが、当然この業界、もちろんただの「客先常駐」ではございません。
「業務委託」いわゆる「SES」です!
これこそまさに、紙コップの水をこぼさないことに定評のあるとうふ屋のせがれも驚愕のドリフト・ダイブ!
前巻で唐突に通信機器名が実在商品名になったり某転職斡旋サイトの裏事情解説を始めたことすらベイビー・サブミッションめいたワザマエ! アイエエエエエ!!
■困りますよ、いつまでも指示待ちで、もっと自発的に動いてもらわないと
とまあ、本当毎度毎度申しわけないのでレビューに戻りますと(おくすり、のみました)、今回のお仕事は就活生の憧れのスーパー大企業様(頭文字N)の引き継ぎ案件(前任企業は撤退、既存資料は現状乖離、政治的受注、絶賛赤字炎上中という四暗刻役満(16000オール)。
これにSES常駐の2人月標準160H(上限20)という契約でドナドナされていく主人公工兵くんと、その上司でメインヒロインの立華さん。
この常駐先の描写がこれまた秀逸なのですねー。
- どこかの倉庫を改造したプロジェクトルーム
- 1つの机に2人が座る
- ファイルのダウンロードは一切禁止
- 私物持ち込み一切不可のセキュリティ対策
- 全部まずは稟議書を通してから
- 客先では社名を偽り「名刺切らしてまして」
架空!! 架空の話!!(迫真)
ご覧になっている方の中にも反射的に左手薬指とか邪眼が疼きはじめたり、普段は眠っているもう1つの人格を抑えるのに必死になってしまう方も多いんじゃないでしょうか。
あ、該当しない人はそのまま。該当する方にはおくすりを出しておきますので次の方どうぞ――
■It's not my business――ってやつですよ
とまあ、説明になってない説明をだらだらと書き連ねたわけですが、今作が秀逸であるのは「リアルな」技術描写や精神面の描写、背景描写だけではなく、「撤退戦」をテーマにしているという点だと個人的に思います。
言うまでもありませんが、プロジェクトは常に成功裏に終わるわけではありません。
今作まではシリーズを通して「困難なプロジェクトを技術やアイデアで成功に収める」という大逆転劇、いわば勧善懲悪ヒーロー的なストーリーでした。
分かりやすく言うとニチアサ枠ですよ。シャバドゥビタッチヘンシーン。あ、分かりにくいですか。すみません。
話を戻すと、これは「なれる!SE」シリーズがジャンル的にはあくまで「ラノベ」であり、読み手が純粋にそういった『良い』読後感を求めているのも理由の1つだと思います(ベストセラー・ライトノベルのしくみ キャラクター小説の競争戦略、飯田一史、2012年、青土社)。
僕はこれ自体は決して悪いことだと思いません。というか、むしろフィクションくらいは楽しい話を読みたいじゃないですか。
空から美少女が降ってくる話とか、美少女型ド◯えもんが未来からやってくる話とか、あとはイカの娘とちゅっちゅしたりとかしたいんですよ!!(壁ドン)
ですが今作のメインテーマは「いかに炎上プロジェクトから撤退するか」というもの。もちろん勧善懲悪的な要素はありますが、登場人物の過去を含め、非常に重たい展開を見せます。
常駐委託業務の生々しい問題(ないはずの直接指示、残業未払い、倒れていく人々)や社内政治といったキーワードを絡め、SEという職業について、さらに掘り下げてきたなあ……と感じました。
名前は聞いても今まで「ラノベだし」「しょせんフィクションでしょ」と敬遠していた方、もしくは、「もっとですまを」「いっしんふらんのだいですまを」「ですま ですま」というどえむぞくせいな方は、ぜひこれを機会に一読してみてはいかがでしょう。オススメなのです?
■さいごに
今作で最も印象深いシーンを1つ選ぶなら、
「どうすれば人を売る立場になれるんでしょうね」と尋ねた彼女と、
「私達エンジニアの売りものは技術、それ以外の何物でもないわ」と言い切った彼女、
この対比につきるのではないか、と思います。
どちらが社会人として、会社員として、そしてエンジニアとして、正しいのでしょう?
判断は皆さんにお任せしたいと思います。
ここまで乱筆乱文をお読みくださいまして、まことにありがとうございました。
■余談
以下はまるきしの余談かつ蛇足でありトイレ紙レベルの駄文でありうんぬん。
他人様に薦めておいてなんなんですが、お仕事が本当にキツめなときは、ぶっちゃけ読まない方がよいです。ラノベと侮るべからず、かなり重めのパンチ放ってくるので精神的余裕があるときにでもじっくりとお楽しみください。
さもないとPTSD(心的外傷後ストレス障害)の危険性があります。僕は3回くらいナムのジャングルを思い出しイカの娘の写真と真剣に向き合う必要性にかられました。嘘ですが。
あと注意が必要なのはミリヲタめいたアトモスフィアの人ですね。「3割は全滅」「ルデル様が見てる」などシリーズ全体的に症状を悪化させる成分がかなり含まれております。
というかシリーズ1作目冒頭からチャーチル英首相のパロディですから、これはかなり練度高いですよ。なので次はぜひ、ハルトマンとシモヘイヘとマンネルヘイムと舩坂軍曹と日系422部隊を……
あっ あっ くすり くすりがー あああー
(SEは眠らない ―Fatal / stay night―)
コラムニスト terukizm