新米武装派フリーランスプログラマ男子(0x1d歳)

頭文字J ~コーディング最速理論編~ 神奈川エリア第3ラウンド保守運用 3rd Stage

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run wan way to now

bridge now and bridge here

give it me that power of the ride

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ギ ャ ア ア ア(アアア)
ギ ャ ア ア ア ア ッ(ワッ)

 「きついきつい‥ いっぱいいっぱいだ‥」

 「たいしたもんだぜ アキバのボウヤも‥ 運用保守とはいえ‥ ムラマサでオレのMBPにぴったりついてくるんだからな‥」

 「本当に楽しい‥ 久しぶりだ‥ こんな気分は‥ いくつになっても プログラマで‥ よかったと思う瞬間だぜ‥!!」

 「くっ‥!!」

 (何本目だっけ‥‥このコミット‥!? 何が何でも‥ くらいついていく‥!!)

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 「保守運用で速いということは 躊躇なく既存コードへ手を加えられるということでもある‥」

 「どれだけコードを知っているかということが 重要な要素なんだ‥ コーディング最速理論も コードへの練達が基本だしな‥」

 「プロジェクトJの遠征でも事前に外部仕様書を読んだり 少しでも多くの情報をプログラマに提供し‥ 練習実装(プラクティス)を重視しているのはそのためだ‥」

 「それでも長い間作りこんでいる 古参のプログラマにはかなわない‥ 技術的に高いレベルのプログラマ同士の戦いになれば 最終的にはコードをよく知っていることが武器になる‥」

 「相手が相手だけに‥ 梶原にとっては とてつもない試練だ‥」

 「だけど アニキ‥ 梶原には特別なしぶとさがあるだろ‥?」

 「今までだって 明らかに格上の古参プログラマを相手に きびしいバトルをくぐり抜けてるんだ‥」

 「新規製造はともかく 保守運用についたときの梶原は 誰にも負けてない‥」

 「そう 保守運用で一番おそろしいプログラマは‥ 梶原なんだ!!」

 「オレもそう思いたいがな‥ しかし戦いの主導権は‥ どこまでいっても相手に握られている‥ 梶原にできるのは とにかく耐えることだけだ‥」

 「今は‥‥な!!」 

 「‥‥!?」

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ゴ ア ア ア ッ(シャアアアッ)
ド ン (ズシャァァァッ)

 (いくらコンパイルやビルドで突き放しても コミット履歴でベッタリとくっついてくる‥ 敵ながらあっぱれと言うしかない 見事なコーディング技術だ‥!!)

 「だが ゴールまではあと チケット1つ!! 最後まできっちりと 仕事をさせてもらう!!」

 (あ‥ 最終チケット‥!?)

 (そうだ‥ 諒介さんの指示‥ 最後に‥)

 ハッ

 (そうか‥!!)

 「ここしか‥ ない!!」

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could me be a say

true geek try way

follow me over around way

in ready for the fight

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 (ムラマサのディスプレイが‥消えた‥!?)

 (まさか‥!?)

ギ ャ ア ア ア ア ッ

 「げえっ‥!!」

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 どんなときでも慌てない冷静沈着な男が この時ばかりは 激しく動揺する

 無理もない 薄暗い開発室でのコーディング中 自らのソースを映している唯一の光源 ディスプレイを消すなど 常識ではありえない

 再び冷静さを取り戻すまでのわずかな隙間を‥ ディスプレイを消したままの ブラインドタイピングで達海が突いていく

 ここまで読んでしまっている諸君には いまさら説明の必要もないことと思うが 達海が用いたのは2つの得意技のダブル攻撃である

 起死回生のブラインドアタックと 一発逆転のプロセス落とし この2つを同時に繰り出したのだった

 さしもの国分拓哉もこれには意表を突かれてしまう

 しかし達海は あくまで並びかけたにすぎない

 テストを通し コミットを完了するまで‥ バトルの行方は 神のみぞ知る!!

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 「すぐそこまで来ている‥!! 最終コミット 突っ込んでくるぞォ!!」


ギ ャ ア ア ア ア(グォン)
ガ ァ オ(グワッ)

 ブワアッッ

 「翼が授かっている‥‥ 後ろの白いノート‥‥」

 「えっ‥‥ ムラマサに? エナジードリンクは飲んでなかったわよ‥‥」

 「エナジードリンク‥‥? いや‥そういうのじゃなくて‥‥」

 (ボクには見えたんだ‥ Apacheみたいな‥ 赤い羽根だよ‥!!)

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 「宗介 このソース どう思った?」

 「どうって‥ RDBMSにポスグレを使ってる以外は‥ 普通の3層Webアプリだったぜ‥ 業務システムの割には 妙にブッサク(物理削除)が多かったけど‥」

 ハッ

 「‥‥まさか‥‥!?」

 「そう‥」

 「MBP Retina唯一の弱点‥‥ それは専用SSDを直付けしていることに起因する ストレージの柔軟性の低さだ‥」

 「そして専用のサムスン製SSDは ランダムアクセスにウェイトが置かれている‥!!」

 「つまり!!」

 「ディスクシーケンシャルなら 勝ち目があるってことさ!!」

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 2台のソースコードはもつれたまま タフでテクニカルな 最終テストシナリオへと突入していく!!

 ディスプレイを消灯したまま 精確なビルド・アンド・デプロイで warファイルを /webapps直下へ叩き込む達海!!

 MBPからワンテンポ遅れて テストコードをリリース!! 待っているのはこのコード唯一の 大量ログデータ削除バッチだ!!

 2台のオンラインバッチ処理はヨコ並びで 最終コミットへと飛び込んでいく!!

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nothing is the beast

nuke and I love you

murder for you all forever

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 「いっ‥‥けぇぇ――っ!!」

 「くっ‥‥そぉっ‥!!」


ズ ド ォ ォ (ヌルポッ)
ギ ャ オ ッ (ガッ)

 (まいったな‥ ごていねいに‥ この土壇場で AutoVacuumかよ‥)

 (ついてないときゃ‥ こんなもんか‥)

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 勝敗は決し プロジェクトJの不敗神話に 新たな1ページが加わった

 PostgreSQLというRDBMSの特徴である Vacuumと呼ばれる不要領域の回収作業には 高負荷のディスクアクセスが伴う

 DELETE文やUPDATE文によりマークされた不要領域は通常 ディスク上にバラバラに配置されるが 今回改修のバッチプログラムの対象はログデータであったため 領域は非常に 連続性の高いものになった

 ゆえにディスクアクセスは ランダムではなく必然的に シーケンシャルアクセスに近いものとなる
 
 諒介はこれを見越して ムラマサの内部ストレージを 通常の高速化セオリーからは逸した HDD MK4007GALへと換装したのだ

 磁気ディスクの弱点であるシークタイムを最小化し さらにあえて小容量ドライブを選択することで プラッタ枚数を抑え シーケンシャルアクセスに特化した高速化を図る‥

 そう プロジェクトJで本当に恐ろしいのは 卓越した技量を誇る 2人のエースプログラマではない

 この男 小鳥遊諒介の頭脳なのだ!!

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 ムラマサのWindows終了音が ひときわカン高く抜ける

 それは悲しげな木霊となって

 光の丘に反響し 夜の闇へ吸い込まれていった

 Jenkinsのおっさんは達海に微笑み

 二度と成立することのない 奇跡ともいえる保守運用バトルは

 記録に残る生産ステップ数とともに 幕を閉じた

 あとはただ 真夏の星空だけが 実装屋たちを見つめていた‥

参考資料:  頭文字D  どくそせん

BGM:  Don't Break Me Down(TOHO EUROBEAT VOL.1)

歌詞ヒアリング: by terukizm(TOEIC 400点)

※本コラムの内容は、実際の技術的検証に基づいたものではなく、また劇中マシンを利用した際の生産性を一切保証するものではありません。※

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