頭文字J ~コーディング最速理論編~ 神奈川エリア第3ラウンド保守運用 1st Stage
この物語はフィクションであり、登場する人物・地名・団体名はすべて架空のものです。 プログラムの製造はコーディングルールを守り、セキュアコードを心がけましょう。
あらすじ:神奈川エリア第3ラウンド。コーディング最速を目指すプロジェクトJの相手はチーム・スパイダー・ラボ! 設計開発フェイズ担当であり、DRY理論の提唱者でもある石田を、全身全霊をかけたギリギリ全開製造により紙一重で制した小鳥遊宗介。そしてバトルの舞台は保守運用フェイズへと移される。迎え撃つのは伝説の「ゴッドリンゴ」こと、国分! 愛機・メビウスムラマサを駆る保守運用スペシャリスト、梶原達海に果たして、勝機はあるのか!?
……
「マジかよ‥!! しんじらんねェ‥!!」
「あの石田さんが負けるなんて‥!!」
「『プロジェクトJ』っていったい ナニモノなんだ‥!?」
「関東各地の開発拠点に遠征をくりかえしながら‥ これまで一度も負けたことないんだってさ‥」
「何なのそいつら!? 大きなベンチャーとかの息がかかっている ハッカーの集団なのかな‥」
「普通の開発コミュニティに そんな大それたことができるわけないもんな‥」
「でもなー オレきのうちらっと見たけど とにかく全員若いんだよ‥ 特にプログラマなんて ふたりとも20歳そこそこの若造にしか見えない‥」
「とてもハッカーの集団っていう感じじゃないんだけど‥ あいつらのレベルの高さは そうでも考えないと説明つかないんだよな‥」
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【サーバ室】
「国分拓哉だ‥」
「プロジェクトJの‥ 梶原達海です‥」
「‥‥1つ 聞いてもいいかね?」
「はい‥?」
「君の年齢でムラマサというマシンを選んでいる理由を知りたいんだ オレにはとても興味深い疑問なんだが‥」
「それは‥‥」
「もともとは自分でこのマシンを選んだわけじゃなくて‥ これはオヤジのマシンだったんです」
「ほーう‥」
「小さいころからずっと家にあって これしかないから こればっかり使ってました」
「ネットにつながる前から 勝手にずいぶんと触ってたんです‥」
「面白いな‥ 相手がムラマサだと聞いていたから あわせてAirも用意してきたんだが‥ どうやらその必要はなさそうだ‥」
「ベストを尽くして 相手をさせてもらおう(ブワァ)」
「よろしく‥おねがいします(ズゥワ)」
「(ほお‥お)」
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「いつでもcheckoutできます 諒介さん」
「そうか 梶原 よく聞いてくれ」
「ハイ」
「ハッキリ言うぞ 今までの中では一番手ごわい相手だ 弱点はない」
「ハイ なんていうか すごいオーラでした‥」
「そうだろう‥ 横須賀リサーチパークを始め 数々の開発拠点を擁する神奈川エリア‥ 相手はその中でも トップクラスの実装屋だ‥」
「‥‥」
「だが 相手が先行を指定してきたのはオレの予想どおり‥ 今回の作戦は ただ1つ‥」
「耐えろ」
「‥‥!?」
「勝てないまでも 負けないためのコーディングは おまえならできるはずだ‥ そしてしつこく喰らいついていれば‥」
「最後の最後に一瞬だけ 勝機が訪れる‥!!」
「えっ‥!?」
「忘れるなよ‥」
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「それではカウントいきます!」
ティンロンリィーン ティリィーン‥‥
●SHARP Mebius MURAMASA PC-MM1(改)
・Efficeon TM8600 1.0GHz(L1 192KB, L2 1024KB)
・256MB DDR SDRAM(オンボード)
・東芝 MK4007GAL 40GB HDD(Ultra ATA/100)
・10.4型TFT液晶(1024x768)
・ATI MOBILITY RADEON 16MB(内蔵)
・IEEE802.11b/g
・100BASE-TX/10BASE-T
・カスタマイズドキャビネット(ブラックカーボン)
・梶原でんき店(自家用)
・Microsoft Windows XP(sp1)
・約0.9kg
VS
ブオォーン‥‥
●Mac Book Pro Retina(Model 2012)
・クアッドコア Intel Core i7 2.7GHz
(L3 6MB、Turbo Boost使用時Max 3.7GHz)
・1600MHz DDR3 SDRAM 16GB(8GB + 8GB)
・768GB オンボード ソリッド・ステート・ドライブ
・15.4インチ Retinaディスプレイ(2880x1800)
・Intel HD Graphics 4000 及び
NVIDIA GeForce GT 650M(1GB GDDR5)
・IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0
・Thunderbolt ギガビット Ethernetアダプタ(増設)
・Mac OS X Mountain Lion
・約2.0kg
「5」
「4」
「3‥」
「(耐えろって‥!?)」
「2!!」
「イーチ‥‥ Go!!」
ギ ョ ワ ア (ブワン)
ゴ ワ ァ ア ア ァ (ガッ)
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when that music
is a looking newer
been to let be go
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「いよいよバトル始まったぞォ 本気の全開製造だァ!!」
ギ ャ ア ア ァ ァ ァ(ギャン)
ゴ ワ ヒ ャ ア ア ァ ァ(ドン)
「はっえぇ――っ!! さすがゴッドリンゴのMBP!! クアッドコアは ダテじゃねえ!!」
「勝負になんねェ!! ムラマサのコンパイラなんて まるで止まっているようにしか見えねーよォ!! 第1チケット完了まで もうあんなでかい差になっている!!」
「MBPなんてハッキリ言って モバイル最強のコーディングマシンだもんな!! ユニットテストはいったら 差はますます開く一方だろ!!」
ゴ ワ ァ ァ ァ(ギャアア)
カ ア ア ァ ァ(ブォン)
「くあ――っ!! すんげーっ なんだあのムラマサッ!!」
「すごいスピードで打鍵しながらコミットしてきて‥ わけわかんない速さでそのままテストケース通してくっ!!」
「見ている方がゾッとするぜ!! 頭のトルクスネジ 何本か吹っ飛んでんじゃねぇかァ!?」
「いつビルドが吹っ飛んでもおかしくねぇ!! あいつ‥ 何者だぁっ!?」
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crazy dancing
get you higher
check hands along me
I'm at a rolling you
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カ ア ア ア ア (ワオン)
ギ ャ ワ ア ァ ァ ァ (ワンッ)
「すっげえ‥ 見ましたァ‥? オレ‥ もう泣きそうな気分ですよォ‥」
「あの達海が今や‥ プロジェクトJ不動の‥ 保守運用エースだもんなァ‥」
「進捗会議をサボって 来た甲斐があったぜ‥(じーん)」
「‥‥しかし よりによって相手が MBP Retinaとはなァ‥」
「ああ‥ さすがの達海も‥ 今回ばかりは‥」
(しーん‥‥)
「‥‥? Macマシンなら 達海は今まで 何度も倒してきてるじゃないですかァ‥ ほら‥ ベントーバコとか‥ Airとか‥」
「バカ‥!! MBP Retinaは別モンだ‥!! あれはハッキリ言って反則だよ‥ 一般に販売しちゃいけないレベルだ‥」
「そうだよ‥!! 市販されているモバイル用クアッドプロセッサの中でも最速のCore i7を 最大3.7ギガまで加速させている‥」
「さらにメモリは16ギガを積み‥ ストレージはもちろんSSD‥ 生半可なデスクトップでは歯が立たないくらいの 超モンスターマシンなんだ‥!!」
「でも‥ 達海のムラマサだって 基盤焼けした後 MM2のマザボを移植してあるじゃないですかァ‥」
「EfficionのTM8600‥ しかも研究所から発掘されたという 幻のLongRun2実装版プロセッサ‥!! あれなら‥!!」
「それだってCeleronがPentiumになった程度だろ‥ それにLongRun2のリーク電流を削減するというアイデア自体 Retinaに使われているCore i7のIvy Bridgeで 3次元構造トランジスタとしてより洗練された形で実装されているんだ‥ 優位性にはなりえないよ‥」
「致命的なI/O割り込みのオーバヘッドが改善されたとはいえ‥ マシンの頭脳ともいえるプロセッサはシングルコアで1ギガあるかないか‥ そのうえメインメモリはオンボード256メガ固定‥ Retinaとは比べるまでもないぜ‥」
「MBPシリーズ唯一の泣きどころであるバッテリも 先行を選択しているからには 短期決戦を狙っているんだろうな‥ サーバルームなら空調も十分に効いているし‥ ファンの熱ダレも期待できそうにない‥」
「それじゃあ‥ 達海に勝ち目は‥ 勝ち目はないってことですかァ‥!?」
「保守運用は新規開発に比べ‥ マシンパワーを必要としにくいとはいっても‥‥」
「ムラマサでは正直‥ 厳し過ぎるよなァ‥」
「達海はオレ達アキバのヒーローだから‥ 勝ってもらいたいけどなァ‥‥」
「そんなァ‥‥!?」