ジャヴァスクリプター #5「スリーピング・ナイト・オン・ザ・チェア」
あらすじ: 時はウシミツ・アワー。束の間、旧友ナツメとの邂逅を経た、エスイーを憎み、エスイーを滅せんとする男、ジャヴァスクリプター。彼は宿敵・ミシマを倒すべくシバウラ・リサーチパークへと突入。血で血を洗う最終決戦の幕がいま、切って落とされた――!! 全都道府県を震撼させるサイバーパンクエスイー活劇!!
【JAVASCRIPTER】
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「ドーモ、ジャヴァスクリプター=サン。ミシマです」ミシマは内心の驚愕を可能な限り出さぬよう心してオジギした。あの完璧な防御体制をこのエスイーは1人で突破してきたのか? そのようなことができるワザマエ、一体全体どのようなものか?
しかしミシマはエスイー解析力を駆使してコンマ1秒以下で即答! 奴はたしかにタツジン! だが今は見るからにマンシン・ソイ。奴を倒すのはアカチャンの手を握りつぶすに等しい!
「ジャヴァスクリプター=サン。ここまで来たのは褒めてやる。だが私のダークプロマネの2つ名にかけ、今ここで貴様の息の根を止める!」「エスイー滅すべし。イヤーッ!」ジャヴァスクリプターのシヨーソ投擲!「イヤーッ!」
ミシマことダークプロマネは流麗なブリッジで回避!「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」ジャヴァスクリプターのシヨーソ連続投擲!「苦し紛れと断定! イヤーッ!」
ダークプロマネはネックスプリングで跳ね起き、右腕のエクセルガントチャートで弾き返す!「イヤーッ!」ジャヴァスクリプターはさらにシヨーソ投擲!「馬鹿の一つ覚えと断定! イヤーッ!」反射!「イヤーッ!」さらに投擲! 反射!
「しつこさ断定! イヤーッ!」ダークプロマネは一転して攻勢に転ずる! 左脚のマインドマップツール・ワカメコンブを抜いた!「イヤーッ!」
ダークプロマネの血中ジャヴァが魔プロダクトであるワカメコンブにより具現化し、有刺鉄線めいた数百本ものシメナワ・ケーブルとなってジャヴァスクリプターの四肢を拘束!
「グワーッ!」ケーブルがジャヴァスクリプターの全身を強固に締め上げ、さらにダウン追い打ちでデータセンタ直通のDC380Vの超高圧電流を放電!「グワーッ!」
それはまさしく伝説化的なレジェンド=ジツ、シュッカ・ジャッジメント!! 古くはナラの昔からヒンカン・セクションで行われていた、ナゼナゼ・アナリティクスという拷問の一種を用いて、執拗にエスイーの肉体と精神を痛めつけヒョウカするという、陰湿めいた暗黒シケン技だ!!
「グワーッ!!」シッコロの下の顔が激痛に歪むのを想像し、ダークプロマネは満足げな笑みを浮かべる。彼はさらに懐から4本のナガ・ドラを取り出し、ジャヴァスクリプターの両手両足にそれぞれ突き立てる!「グワーッ!!」苦悶するジャヴァスクリプター!
「『ノー・ジャヴァ、ノー・エスイー』……知ってるか? 平成時代に活躍した稀代の数学プログラマ、ユーキ・ヒロの格言めいたコトワザだ。今も昔もエスイーは、ジャヴァを極めた奴が上を行くんだよ」
ダークプロマネはさらに数十本、数百本、数千本ものナガ・ドラをジャヴァスクリプターへと突き刺す! まさにハリセンボン・ステート! ヒドイ!
「ア、アバ……」ジャヴァスクリプターのニューロンCPUは彼のサイバネ義体各部が発するフェイタル・エラーにより処理能力の限界を超えていた。
ノイズ混じりで彼の脳裏に流れるのはソーマト・リコール。微笑む美しい妻と、愛らしい娘。慎ましくも幸せな家庭。職場ではともに幾度の死線を乗り越えてきた頼れる仲間と、誇らしき友。
――ああ、これまでなのか。混濁する意識の中、ジャヴァスクリプターは必死に思考の糸を紡ぐ。結局、何一つ報いることはできなかった。血で血を洗うようなカイハツ・イクサで、エスイーを滅し、エスイーを滅する。それだけを正義とし、それだけを望み、それだけに生きた。そのすべてが…………無意味であった。
ジャヴァスクリプターは己の無力に絶望した。無念と絶望、そして己に忍び寄る死の恐怖。すべてがあの時と同じだ。妻と娘、愛する家族を目の前で失った、あの時と。
(セイジよ、ワレに身体を貸せ)ウェブキットエスイーソウルの邪悪なる声が囁く。あの時と同じく。(さあ、すべてを捨て、ワレに身を任せよ!)
邪悪なる声はさらに声量を増し、ジャヴァスクリプターことヒグチへ畳み掛ける。(憎いか? 憎かろう? ならば仇を討つのだ! そして滅すのだ! エスイーを! エスイーすべてを! この世のエスイーすべてを! エスイーすべてを!)
ヒグチの意識が砕かれ、その身体をまたしてもウェブキットエスイーソウルへと預けんとした。その時!!
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参考文献: ニンジャスレイヤー