@ITで記事を書いているキャリアコンサルタントの転職コラムです。

「地方で働くということ」札幌編

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 住みたい都市の調査をすれば、必ずといっていいほど上位にランクインする札幌。私はその札幌の住人ですが、窓の外には粉雪が舞っており2月ともなると極寒の日々。自然環境から見ると、とても「住みやすい」環境とはいえないのですが……。

 「北海道に来た時、絶対、将来はここに住もうと決めていました」

 Aさんは、そう話してくださいました。北海道に住むために数年前から準備し、それまで積み重ねてきた回路設計系のキャリアを捨て、30代になってから北海道にある受託系システム企業に転職しました。未経験だったソフトウェア開発の分野に飛び込み、すぐに札幌市内に開発拠点を新設したメーカーに出向することになりました。週末はツーリングやフィッシングなど、北海道ならではのアウトドアを満喫されていました。

 しかし、受託系の企業は、景気に大きく左右されるというリスクもあります。

 結局、出向先の組織改変の影響もあり、ご実家がある神奈川県に戻られることになりました。

 「仕方ないですね、こんなご時世ですし。でも北海道の生活は楽しかったですよ」

 札幌を離れられる前、私にそう言い残された姿がとても印象的でした。

 「よくわからないままに東京で就職したけれど、やっぱり肌に合わなくて。仕事の内容もなんか違うと思ったし。今は小さな会社だけど、家も買えたしトータルでOK」

 そう語るのは高校、大学と一緒だった私の友人B君です。B君は10年以上前に東京で大手通信インフラ系のシステムエンジニアとして働いていました。その後、北海道に戻り、札幌に本社がある創業間もないベンチャー企業に転職した、いわゆる『Uターン技術者』です。

 現在、会社の従業員数も転職当初の5倍近くになり、会社を創り上げてきた面白さや、自分に与えられた裁量の大きさにやりがいを感じているようです。

 「でも、札幌以外だったら北海道はいやだな。地方とはいっても、札幌だからいいんだよな。海も山も近いし、ある程度都会だし」

 仕事が充実していて、オフの生活とバランスよく過ごせることが、長く住む決め手だといいます。

 一方、そのB君が在籍していた東京の会社から、期間限定で札幌の子会社に出向してきた方もいます。その方は「こっちに来てから、睡眠時間が倍になったよ。家族も喜んでいる。3年の約束で来ているから、滞在中はとにかく徹底してゴルフをやろうと思って」

 そういいながら、週末ごとにゴルフ場へと通っていらっしゃるようです。

 「実際に、『戻れ』って言われたときにならないとわからないけど、もう、東京では生活できないな」

 彼の任期はあと2年。そのとき、どのような決断をするのでしょうか?

 また、雇用側の視点では、次のような話を私の周りでもよく耳にします。

 札幌に惚れ込み、この地でIT企業を立ち上げた社長は、「ここには技術力はあるけど、売る人や発想する人が少ないんだよな……」と、嘆いていらっしゃいました。

 前述のベンチャー企業に転職したB君も同じようなことを言っていました。高い技術力があるのにニーズとかけ離れ、独りよがりな商品を市場に提供してしまう。逆に、よい商品なのにアピール不足で誰にも気がつかずに埋もれてしまったり、その価値に気がつかず安価で販売している場合もあります。技術力に加えてマーケティング力を強化していくことが、今後の課題といえます。

 地方での生活を満喫している方、やむを得ずその生活を手放してしまう方もいます。また、自分の意思とは関係なく地方に住み、すっかり気に入ってしまう方もいる。そのパターンは、仕事や生活に対する価値観によって実にさまざまです。

 読者の皆さんも、それぞれのスタイルに合った地方生活を設計してみてはいかがでしょうか。

 地域の市場に精通した、私達コンサルタントが、よりよいキャリアアップのお手伝いをさせていただきます。

アデコ株式会社
人材紹介サービス部
コンサルタント
横山光紀

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