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遅かった転職活動の始まり

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[第3回]

 前回、辞意をほのめかしていたため、急に退職を勧められてしまった斉藤さん(仮名)。今回は、斉藤さんの転職活動を見てみましょう。

 急展開に驚く斉藤さん。退職日が決定し、プロジェクトの後任者との引き継ぎが始まりました。まるで会社から追い出されるかのような過密スケジュールの引き継ぎで、あっという間に退職日の2週間前となり、送別会が行われ、有給休暇に入りました。

 入社してから休みもなく働き続けた反動か、数日間は自宅にこもって何もしない日が続きました。

 2週間が経過し、有給休暇も終わって、事実上、無職の身になりました。

 このままでは良くないと思い、少し無気力気味になっている自分に発破をかけるつもりで、職安に行ったり、転職フェアに足を運んだりしてみました。しかし、どこに行っても応募しようという意欲がわきません。そして、明確な方向性が見い出せないまま、更に日は過ぎていきました。

 退職から1カ月が経過し、斉藤さんの気持ちに少しずつ焦りが出始めました。

 まずは、インターネットの求人情報に目を通しました。すると、求人市場の状況もよく、大手有名企業の求人情報がずらりと並んでいます。斉藤さんの興味は次第に大手企業へと向かいました。

 「これまでの会社と同様の業務、同様の規模、同様の条件では、転職した意味がない。もう転職したくないので、今後は安定感のある大手企業に転職したい」

 彼はこう考えるようになっていました。

 それからは、大手企業の求人があれば、社内SE、システムエンジニア、ITコンサルタントまで幅広い求人にエントリーしました。

 エントリーを開始してから2週間が経過し、企業から次々に返答が届きました。しかし、それらの返事は、不採用の知らせばかり……。このような状態を続け、2カ月が経過しました。

 斉藤さんの焦りはますます強くなるものの、安定志向は変わりません。そこで、応募対象を大手から中堅企業へ拡げたところ、ある事業会社から社内SEの候補者として書類合格の知らせが入りました。

 やっとの思いで獲得した面接です。斎藤さんは、慎重に事前準備をすすめてみるものの、一体何を話せばよいかもわからず、不安を抱えたまま面接に臨みました。

 そして、1次面接。

面接官 弊社に応募いただいた志望動機をお聞かせください。

斉藤さん 御社の安定性と教育体制が充実している点です。

面接官 安定性はなんともいえませんし、中途採用者には即戦力を期待しています。教育や安定性といった点ばかりにこだわられても困ります。

斉藤さん ……。

面接官 今回退職をされた理由をお聞かせください。

斉藤さん 前職は下流工程の仕事が中心で、キャリアアップできないと判断したためです。

面接官 確かに、弊社は上流工程を主にお任せしたいと考えていますが、現状とのギャップはどのように埋めようとお考えですか?

斉藤さん どのようにですか……。

面接官 なぜ、社内SEになりたいと思ったのですか?

斉藤さん キャリアアップできると考えたからです。

面接官 キャリアアップ像をもう少し具体的にお話しいただけますか?

斉藤さん 具体的にですか……。

面接官 弊社に入社された場合は、将来どのようになりたいとお考えですか?

斉藤さん えーっと……。

 こうして、ほとんどの質問に答えられない状態で面接が終わりました。

 数日後、企業から連絡がありましたが、結果はいうまでもなく不採用。

 ここで、面接を振り返ってみましょう。質問の回答でつまずいた点をまとめてみました。

  • 志望動機
  • 退職理由
  • やりたい仕事とその理由
  • 将来のキャリアパス

 この4点は、多くの企業から聞かれる基本的な質問内容ですので、十分な事前準備をしておく必要があります。

 詳しくは、下記のコラムにも掲載しておりますので、ご興味のある方はご参照ください。

 なぜその基本的な答えにつまってしまったかというと、退職理由(現状の課題)とキャリアパス(解決策)が十分に整理できないまま退職してしまったことが要因であると考えられます。さらに、方向性が決まっていない状態の中、成り行きで企業を選択しています。これでは、面接で思いを伝えることはできません。

 その後も、斉藤さんは希望にあった企業があれば応募し面接に足を運びましたが、内定がもらえないまま退職から3カ月が経過し、4カ月目をむかえようとしていました。

 現状の課題と対策が十分整理できていない状態で安易に退職を決めてしまったことが、転職活動に負の連鎖を招いてしまったのです。未だ内定が獲得できていない状態の斉藤さんは、これからどうなるのでしょうか?

 退職後4カ月目に突入し、さらに加速する負のスパイラル。果たして斉藤さんの転職活動は成功するのでしょうか。次回へ続きます。

アデコ株式会社
人材紹介サービス部
シニアコンサルタント
藤田孝弘

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