いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

最近のエンジニアはロックじゃない

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最先端技術を追いかけるのはもう古い

最先端技術を触っていると、エンジニアとして最先端を走っている気分になる。やれAWSだ、やれDockerだ、それはそれでいい。だが、現場で動いてるのはWindows 2008 Serrver(無印) だったりする。勉強して楽しいのはいいが、学んだ成果を試す場所が無い。「いや、市場価値を高めたいからだ。」と言うかもしれないが、日本でそういうテクノロジーを試すというのがどういう事なのかを知ってからの方がいい。

勉強して楽しいのは素晴らしい。だが、「あわよくば」のような実利を求めると現実と噛み合わなくなるケースも多く見る。今の現状で求められるのは、「Ansibleでコードライクにインフラを構築管理」ではなく、「三分で一台サーバを立てろ!」とか、「この死にそうなシステムを不死鳥のごとく復活させてくれ」だ。午後の庭園で談笑するようなノリの優雅な仕事より、死亡率の高い局地戦みたいな仕事の方が多い。

確かに、最新技術を華麗に使いこなして、スマートに構築、運用がこなせればベストだ。しかし、現代という時代に存在するIT案件のほとんどが突貫作業だ。その影響で運用が苦しくなって、中破、もしくは大破一歩手前のシステムを対応するスキルの方が求められる。どっかのガンダムのセカンドシーズンの第一話に出てきた、片腕がもげた旧式の機体で戦線を突破していくようなノリだ。

前提になる状況がめちゃくちゃだ。最新技術を追うことで、こうした方がいい、ああした方が良いと理想を語っても解決策にはならない。本当に問題解決をしたければ、手元にある限られたツールとリソースをいかに使いこなすかが重要になる。

そこでVimだ。

本当の一流は汎用機に乗っても強い

とはいっも、別にVimじゃなくてもいい。使いこなすことで一番効果が高いのがテキストエディタだ。インフラをやるにしても、開発をやるにしても、必ず使うツールだ。また、使いこなす人と使いこなせない人で一番差が出るのもエディタだ。自分の携わる分野で、ある程度スキルに自身を持てるようになったら、エディタを使いこなす練習をしてみるといいと思う。

どここぞの羽の生えたガンダムのパイロットは、量産機体に乗って最新鋭のガンダムと張り合っていた。また、有名なむせる人もガンガン機体を乗り潰しながら戦っていた。本来、スキルとはそういうものだと思う。スキルの高い人は、同じツールを使ってもできることが全然違う。そして、必要なスキルをその場で調達して、不要だと判断したらさっさと捨てる。

本当に凄い人は、その人自身の考え方が凄い。最新技術を追い求める人の傾向として、何を使うかでアドバンテージを稼ごうとしている傾向があるように見える。だから、逆にアドバンテージが稼げない。簡単な話で、普通の人が普通に使って凄い結果を出せるような道具があれば、凄い人が使ったらそれ以上に凄い結果が出るからだ。

自分の携わっている技術の全体像が見えてきたら、自分のお気に入りのツールを探してみるといい。あれもこれもと手を広げていると、気づいた時にはツールの検証屋になってしまう。私もそうだった。手に馴染む高級時計を探すように、自分になじむツールを一つ絞ってみてはどうだろう。

Vimなんて良いと思う。

手に馴染むツールはお前を愛してくれる女と同じだ

ということで、別にVimじゃなくても良い。ツールに惚れるというのは大事だと思う。こういう表現をするとバカっぽいが、勉強会に登壇するようなレベルの人はだいたい自分の使ってるツールに惚れてる。もう、最新鋭だとか機能云々ではない。このツールが好きだから、これを使って問題を解決するんだ!みたいなスタンスだ。こういう人とは、考える方針や好きなツールが違っても共感できるものがある。

実際、Excel方眼紙を人に書かせるような人は間違いなくExcelに惚れてる。俺の最高な彼女の押し付けみたいなもので、あまり近寄りたくないが気持ちはなんとなく分かる。他にも、やたらとパワポで細かい図を書きたがるような人も同じだ。成果物がどうこう関係無い。そのツールを使うことで「仕事」を感じることができるから、ひたすらツールを弄り続けるのだろう。

まず、ツールに惚れよう。そして、その愛を貫いてみろ。一人の女を深く愛した人じゃないと、多くの女は愛せない。同じように、一つのツールを深く使い込んだ人でないと、多くのツールは使いこなせない。一つのツールを深く使いこなすには、理屈じゃない。ツールに対して愛が無ければ追いかけていけない。一つのものをどれだけ追求できるかは、意外と感情論がものをいう。

使っている端末のデスクトップやスタートメニューを見てみよう。そこに愛するツールはあるか。黒い窓で入力補完をして、心ときめくコマンドが出てくるだろうか。持てる機能の範囲内という条件はつくが、ツールを愛する人にはツールも応えてくれる。

つまり、愛のない奴にツールは使いこなせないということだ。

愛とは何だ

エンジニアライフで愛を語ってる時点で、私は頭がおかしい人の仲間入りは間違いない。だが、それでも私は愛を説く。愛とは、常人の壁を突き抜けるだけの原動力になり得る力だ。愛は狂気だ。故に強い。そこに理屈もトレンドも無い。ただ、「好きだ」という思いだけがある。限りなくピュアで、突き刺すような鋭さがある。それが愛だ。

仕事で結果を出す人は仕事が大好きだ。仕事に愛がある。だから仕事のためなら何でもできてしまう。そう考えると、狂気じみるほどに何かを好きになるというのもありかと思う。そのくらいのパワーが無ければ人より突き抜けることはできない。実際、結果を出している人はそういう狂気じみた面が大抵あるはずだ。

日本のIT業界のクソさは理屈では説明できない。だったら、理屈を超えたもので対応しろ。こねくり回された理屈で問題が解決しているのを見たことがない。最適解とか論理的とか、そういうのはクソくらえだ。エンジニアっぽくもいいが、技術に愛が無ければ熱くなれないし、やってて楽しくなれない。純粋に技術に取り組めるか取り組めないかの差は、技術に対する愛で決まる。

知識やら理屈を詰め込むのだけではエンジニアじゃない。ただのガリ勉だ。思考のしがらみをぶっ壊して自由になるのがエンジニアの醍醐味だ。技術はアクセサリーじゃない。不可能を覆すための武器だ。理論に理論をぶつけて概念の壁をぶっ壊して、その先に広がる自由な発想の世界へ歩みだそう。それがロックだ。最近のエンジニアにはロックな魂(ソウル)が燃えていない。もっと熱くなれ。

・・・そして、Vimを覚えてみるといい。便利だぞ。

Comment(5)

コメント

仲澤@失業者

DOS時代にEC(エコロジー)を使ってたのですが、
いまだにFDなんぞを使っている人をたまに見かけますね。
これは愛かもしれません。

ところで、このFDって名前。
「IBM=>HAL」的なECのインクリメントという説もあるようです。

ちなみにDOS時代のエディタはRED、Final、MIFESなんぞを使ってましたが、
現在は統合開発環境(XcodeやVS)のコードエディタをちょっとカスタマイズして使ってます。
大昔のコーディング環境に比べると夢のように便利。
かつじじい向きのいたれりつくせり感が満載で、とってもきゅぅと。

u_zu

Vimですか。。。全くの素人(私です)向けのサイト、もしくは書籍をご存知でしたら教えてください。よろしくお願いします。

はりねずみ

あれ?AWSやDockerの設計や構築ができる人って、需要>供給で昨今、引く手あまたなんだけどおかしいな~?単金も7桁狙えるくらい高いし。

と思ったら、Anubisさんはたしか大阪なんですね。大阪なら仕方ないです。AWSやDocker使ったプロジェクトなんて数は非常に少ないです。こういうのは全部東京でやってますから。まあ、Abubisさんの力作「君のスキルが上がらないのは環境のせい」でも主張されているように「環境」が要因ですね。「君のスキルが役に立たないのは環境のせい」ってなところでしょうか。Abubisさんが悪いわけではありませんよ。


あと、さすがにAWSの設計や構築やってる人だとVimやEmacs(とLisp)なんて基本中の基本なので使えない人はいないと思いますよ。下手すりゃ工業大学や工学部の入学時から使い倒していることでしょう。

匿名

awsやDockerできたら仕事たくさんあるよ

Anubis

> はりねずみ さん


>> 需要>供給で昨今、引く手あまたなんだけどおかしいな~?
勉強会でかじった程度の人には仕事は来ないですね。なので、「試す場所が無い」です。
このコラムの趣旨は仕事が有る無しではないので、コメントは控えさせて頂きます。


横道にそれたコメントが増えるとアレなので、一応指摘させていただきます。
ただ、いる状況によって見えるものが違うので、そこはご理解いただけて助かります。


>VimやEmacs(とLisp)なんて基本中の基本なので
一緒に働いている人の学歴等を把握していないのでコメントし難いです。ただ、ツールに対する情熱とか、そういうのは学校で継承されていれば素晴らしいと思います。せっかくコメントをいただいたので、そういうコラムも機会があれば書いてみようかと思います。

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