いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

進捗確認したければ感想を聞こう

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進捗の聞き方で進捗は変わる

進捗を確認する時、いきなり丸バツのリストを持って「◯◯できたか?」と聞く人。寝てた方がいい。女の子を口説く時、いきなり「付き合え」という人はいない。商品を買って欲しい時、何の説明も無しに「買え」という営業はいない。何の工夫もせずに聞いてどうにかなるなら、誰も苦労しない。

まず、進捗というのは丸バツで評価できるものなのだろうか?私はNoだと思う。一つの項目に対して、七割達成していたらどうだろうか?できている七割をもって丸をつけることもできるし、100%でないのでバツとも言える。丸バツをはっきりつけることで明確にしたつもりでも、基準が揺らぐと全く意味がない。

「だったら定義をしっかりすればいい」と反論があるかもしれない。だが、それもあまり意味が無い。基本的に、定義が細かくなるほど人と共有が難しくなる。議論をしたとしても、それぞれの主張はある。結局のところ、それぞれの視点によって進捗の捉え方にばらつきが生じる。

そもそも、「進捗、大丈夫なのか?」と不安そうに聞かれれば、その流れでこちらも不安になる。相手の不安を吹き飛ばすくらい進捗に自信があるようなケースは稀だ。できていないところだけを指摘されれば、簡単に反論もできない。聞き方次第で答えは変わる。物事を自分の主観を入れずに見定めるのは難しい。

感想の表現力は高い

相手に理論的な答えを求めるより、感想を聞いた方が多くの情報が得られる。逆説的だがこれは本当だ。なぜなら、理論的に答えをまとめるのは、高い能力と労力を要する。しかし、感想は誰にでも簡単に答えられる。極論、作業に行き詰まった時に「ウガーーー!」と悲鳴をあげるでもOKだ。

ただ、感想から有益な情報を聞き出すには、聞く方の知性が要求される。感想という大雑把な情報から、うまく話を絞り込んでいったり、言葉からうまくヒントを拾い上げて情報を組み立てたりと、聞く側が工夫をしないと情報は得られない。できるようになるためには、地道な訓練が必要だ。

人にものを聞かれた時、理論的にまとめて分かりやすく答えることは重要だ。ただし、それができるのは十分な経験と技術があり、ある程度の余裕がある時だ。また、理論的にまとめたところで、根本的な考え方がずれていたら逆に分かりにくくなる。理論的だからといって、不明なものが明確になる訳でもない。

感想やフィーリングで話すのであれば誰でもできる。理論的にまとめるのが難しいような事柄でも、何らかのアラートとしてあげることができる。問題を素早く察知したいのであれば、理論的に話させるよりフィーリングを聞こう。理論的にまとめるのは、フィーリングを共有してからでも十分だ。

理論的回答を求めるのは話を聞く気が無いから

相手に論理性を過剰に求める人は、だいたい人の話を聞かない。相手により完璧な返答を求めるので、話を聞き入れるハードルが高くなる。話しているのを周りから見ると、一方的に話しているように見えると思う。こういう人とは、あまり話をしたくないと思うのが普通だろう。言いたいことを言えないので、ストレスが溜まりそうだ。

理論的でない、分かりにくいという理由でいちいち意見を否定していると、重要なヒントを見逃すこともある。「仕事だから理論的に分かりやすく話すべきだろ」というのは分かる。だが、論理的で分かりやすいという自分の理想の押し付けになっていないだろうか。人は自分の望む言葉で答えを言ってくれるとは限らない。

話す内容が理論的かどうかというのは、意外とどうでもいいこどだ。大事なのは相手の言葉を理解する事だ。そうでなければ、いくら理論的でもコミュニケーションが成り立たない。また、自分自身の知性が低ければ、どんなに分かりやすく説明されても難しく聞こえてしまう。難しく聞こえるから相手を否定するというのも視野の狭い判断だ。

手っ取り早く自分の知りたいことだけを話せ。それが、理論的で分かりやすい答えを求める理由だ。本当に答えが知りたいなら、コミュニケーションをとって、相手の言葉から答えを探そう。人間同士のコミュニケーションなら当然の話だと思う。それが仕事でできないなら逆におかしい。仕事がうまくいくはずもなかろう。

進捗を確認する目的

魔女裁判みたいに、進捗が達成できていなかったら晒しあげるような現場を多く見てきた。あれは楽なやり方だ。進捗進んでなければペナルティーがあると、恐怖を刷り込むことで勝手に頑張ってくれる。どう答えても否定的な見方をされるので不安を増長する。進捗の丸バツリストを埋めるだけで、問題解決が二の次になる。これでは何のための進捗を確認するのか分からない。

あくまで、事実を知ることが進捗を聞く最大の目的だ。間違えているのは、誘導尋問で「進捗進んでます」と言わせたり、うまくいっていない点を探して「ダメじゃないか」と言うことが目的ではない。これをやると、自分で事実を捻じ曲げてしまい、誰も正直に話してくれなくなる。

進捗を確認する最大の目的は現状の把握だ。問題の芽を見つけることであり、問題の対処では無い。報告された問題に対して論破して押しつぶしても意味が無い。情報を聞き出して事実を見極めるまでが目的だ。対策を考えたり、アクションに映るのは次の段階の話だ。

的確に情報を聞き出したかったら、まず相手の話で同意できる部分を探そう。同意できる部分を多く共有できると、共通認識が増える。そうすれば、別に理論的でなくても、無理に噛み砕いて話さなくても意思の疎通ができる。進捗に限らず、今抱えている問題や、新しいアイディアでも、いくらでも共有できる。そういうやり方の方が、やっていて楽しくなれるはずだ。

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