もうスピードで勝負する時代ではない
ビジネスは陸上競技ではなく殴り合いだ
「ビジネスはスピードだ。」そんな言い草をよく聞くが、今更そんなことを言っているようではいつまで経っても二流だ。なぜなら、速けりゃ勝てるほど単純なものじゃないからだ。速いのはいいが、速いだけでは意味が無い。タイミングとか閃きとか、色々な要素と噛み合って、初めてスピードは活きる。
色々な要素が複雑に絡み合って、何かの拍子でうまく足並みが揃った時に、ビジネスは成功する。成功すると、何らか理由をつけて法則性を見出そうとする。今までたくさんの成功に関する法則を聞いてきたが、確実に再現性のある法則を聞いたことは無い。なぜなら、成功には運という要素も大きいからだ。
なぜ「ビジネスはスピード」なのか。それは、単に分かりやすいからそう言われてるだけだ。成功するための要素の一つであることは間違いない。だがそれは、「身体を鍛えればスポーツで勝てる」と言うレベルの話でしかない。で、どうやってスピードを出すか?というフェーズに話が移ると、途端に幼稚な発想しか出なくなる。
何が勝負の明暗を分けるか分からない。色々な要素が絡み合う複雑さは、陸上競技のようなスピード勝負ではなく、スピードと駆け引きが必要な格闘技に近いと思う。もっと極端に言うなら、ただのビジネスは殴り合いに近い。あらゆる手段を駆使して目的を達成るすところが、まさに殴り合いだ。
スピードとかぼやく前に何をどうやるか決めとけ
本屋さんに行くと、「Excelを使って速攻で仕事を片付ける」系の本をよく見かける。パラパラと中身を確認すると、ひたすら断片的な操作方法が書いてある。本を読み込んで練習すれば、操作に関しては速くなると思う。では、操作が速くなれば仕事が速くなるかといえば、そうでもない。
小手先の操作が速くても、やり方が間違えていたら仕事自体の結果は出ない。結果がいつまでも出なければ、それは遅いということだ。何をやりたいか目的をハッキリさせないとゴールが決まらない。ゴールを決めないと、仕事という泥沼で延々と彷徨うことになる。ハマった仕事を解決するのに必要なのは、スピードではなく別の要素だ。
あと、スピード大好きな人がよく引っかかる罠だが、途中のプロセスをすっ飛ばすというのがよくある。何をやるかは明確だが、どうやるかが抜ける。手段を省くのでスタートアップは爆速だ。最初だけ効果があるので下手に説明がついてしまうので、失敗しても失敗と認識されない厄介さがある。
スピードは出すものではなく出るものだ。適切な手段を選んでいけば勝手に出る。スピードが出ないということは、手段が間違えているのだ。やたらギリギリなスケジュールを追いかけたり、残業で納期へのキャッチアップを計るなど、間違えた手段の典型だ。休む時に休まないとスピードがでるはずもない。残業を当然と思っている人間ではスピードを実現することはできない。
スピードではなく欲望に翻弄されているだけだ
私は「ビジネスはスピード」という考え方が嫌いだ。欲望に翻弄されて突っ走る人が、言い訳として「ビジネスはスピード」と言うからだ。欲望に翻弄されていようが、最初だけは勢いがあるので下手に結果が出てしまう。だが次が続かない。また、工数の無茶な短縮の理由としてこの言葉が使われることも多い。
現実問題、全速力のスピードでプロジェクトを成功させると、次からそれが普通になる。スピードの追求より、そういう短絡的な考え方を正す方が先じゃないだろうか。仕事でスピードを追求して実際に起こるのは、仕事の効率化ではなく、無茶な納期の短縮だ。これを目の当たりにして「ビジネスはスピード」という考えに賛同できない。
仕事のスピード云々言う割に、残業している人が多いのも疑問だ。仕事をさっさと済ませて定時に帰って、自分の時間を満喫するなら分かる。仕事のスピードを上げて、しかも残業までして何がしたいのだろう。当然疲れるので、実際の効率は劇的に落ちる。それでいて、結果が伴っていない。何かがおかしいと気づくべきだ。
スピードの追求を個人の頑張りに依存したらかなりしんどい。ITを活用せずに仕事のスピードを上げるというのも、今の時代にそぐわない。スピードを追求したいなら、もっとITに投資すべきだ。実際、欧米の企業はそうしてる。根性論でスピードを追求しているようでは時代に取り残される。スピードを上げるには仕組みを見直すことが必要だ。
これからの時代の勝負のしかた
「ビジネスはスピード」と言われるが、実際のところ、日本のビジネスの動きは緩慢だ。スピードの以前に、無駄が多すぎるし、運用も安定していない。不安定な足場でスピードを追求するので、より状況が悪化して泥沼状態になっているというのが現実だろう。
ビジネスをやる人はせっかちだ。やってすぐに結果の出るものでないと納得しない。一般的な会社では、即効果の出る手段はやり尽くされていると考えた方がいいだろう。即効果の出る手段がやり尽くされると、即効果が出るが負債の発生する手段を取るようになる。これをやると下手に結果は出続けるが、苦しい自転車操業になる。
一見、悲惨な状況だが、挽回の方法はシンプルだ。短期的な手段はやりつくされているが、中、長期的に有効なプランはごっそりと未着手のまま転がっている。中、長期のプランに着手しながら、並行して負債を解消していけば、簡単に出し抜くことができる。そういう考え方の切り替えができるかどうかに、未来はかかっている。
現代のビジネスマンの結果の出し方は、快楽的な人のお金の使い方に似てる。手元にお金で遊び回って、お金が無くなると借金をしだす。共通して言えるのが、短絡的ということだ。これからの時代は、スピードの追求ではなく、短絡的な思考からの脱却ではないだろうか。
コメント
Alfonse
ビジネスはスピード、これって本来末端の実行速度じゃなくて経営判断の速さのことですもんね。
ビジネスチャンスを「前例がないから」とやたらとエビデンスを出させたり、リスクを取れなくて保留を続けたり。
単なる思いつきでは困りますが、蓋然性の証明をひたすら求めるようなもすごく困ります。
もちろん、現場のスピードを上げることが「ビジネスはスピード」なんて思ってるのは論外ですけども。
u_zu
何かあったのでしょうか? ここ数回の投稿を読むと現状に対する苛立ちのようなものを
感じずにはいられません。気持ちはよーく分かるつもりですが。。。
真っ赤なレモン
感動した。
どれくらいのスパンでの利益(と損失)を考えるか、には色々な選択があるはずなのに、短期間でしか考えていないことが多すぎる。
想定したスパン、それもできるだけ長期間での利益の最大化(損失の最小化)を目指したいもの。
サステナビリティ、持続可能性、継続性の観点からすると、無理なアウトプットを出し続けることは困難なため、無理は継続できずに短期間で破綻する。
半永久的に継続可能な程度のスピードで、適切な質のアウトプットを出し続けるほうが、長期的な利益は大きい。
・・・と言う人が少ないのは何故だろう。