いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

それ、仕事の前倒しじゃなく前向きに倒れてるよ。しかも倒れた先にウンコが落ちている。

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■前向きでもぶっ倒れても仕事は進まない

 仕事を前倒しに済ませていくと「仕事ができる」という評価を頂ける。そもそもこれが間違いの発端だろう。言い方を変えるなら、明日やれる事をわざわざ今日やっているということだ。一つの効率の悪さの形とも言える。

 明日やれることは明日やればいい。今日やるべき事が済んだらさっさと帰ろう。これができないなら、言い方は悪いが、計画性に問題があると思った方がいい。仕事を終わりにする時間の計画が立てられていないからだ。

 実のところ、「仕事の前倒し」は炎上プロジェクトのキーワードだ。仕事を先取りしようと、実力以上のことをやろうとして失敗するパターンだ。仕事を早く済ませなければいけないという焦燥感に負ける。この時点で冷静な判断力が失われるので、プロジェクトの失敗は確定する。

 そもそも、仕事を前倒しにして何がしたいのだろうか。プロジェクト後半に定時退社でもしたいのだろうか。残念ながらそれを実現している人を見たことがない。急ぐ割に理由を尋ねると、「仕事ってそういうものだろ」みたいな回答しか返ってこない。理由も無く急いで結果なんて出るとは思えなし、こんなやり方で結果を出している人を見たことがない。

■急ぐことの理由

 同じ量の仕事を短時間で済ますと利益がある。これはビジネスにおいて常識と考えられている。実際は、無理にそれをやろうとして不利益を被る。適切な時間で着実に結果をあげても利益は出るのに、利幅を求めて無理に仕事を詰め込んで破綻する。

 あと、急ぐことと焦る事を混同している人も多い。仕事に緊張感は必要だが焦燥感は不要だ。焦燥感では仕事は進まない。焦って思考が停止するだけだ。ただ、焦っている方が無駄な動きが増えるので、躍動感がある。これを見て「仕事頑張ってるな」と誤解するのだろう。

 そもそも、急いでる時点で負け決定だ。普段のペースでこなせないという裏返しだからだ。急がないと仕事に追いつけないなら、その時点で実力不足だ。厳しい言い方をするなら、仕事に追いつけていない。頑張るだけでは解決できない状況に陥っている。

 普段から急がなければ仕事が回らないのであれば、何が問題か見直しが必要だ。やり方に無駄が多いか、仕事自体が無茶な仕事だったりしないだろうか。見直した結果、プロジェクトの破綻が確定したり、最悪、転職しなければならないこともあり得る。現実はそのくらいシビアだ。

■前倒しは不安の表れ

 プロジェクトをうまく進めたいなら、仕事の前倒しをするより、ワーカーホーリックを排除する方が有効だ。仕事が済んでいるなら休め。それを判断して行動に移すのも勇気だ。判断することを避ける人にプロジェクトがまともに回せるとは思えない。

 とりあえず、仕事を前倒しにする、多く働いたという実績は、失敗した時の言い訳として協力だ。だが、逆にとれば、失敗した時の言い訳のために頑張っている。つまり、失敗する不安が拭えていないのだ。そういう心理的な弱さが背景にある。

 失敗する不安に対して根本的なアプローチができないなら、どんなに仕事を前倒ししても意味が無い。不安を理由に長時間働いて疲れるだけだ。しかも、残業代がかさむ上に、疲れて思考力が落ちる。結局、自分たちの首を自分たちでしめているだけだ。

 こういう、無駄な仕事の前倒しを熱意と勘違いしている人は多い。しかも、一時的な結果は出てしまう。最初の方に多く結果が出て後でしぼむパターンになるので、失敗しても言い訳がついてしまう。しかし実際は、不安を解消できずに奔走しているだけなので、最終的に膨大な無駄が生じる。

■エンジニアなら技術で仕事を前倒しにしよう

 仕事の前倒しの何が問題かというと、手数で不安を解決しようとすることだ。だったら、根本的な不安に対してアプローチするか、手数を減らすアプローチを考えてはどうだろうか。

 不安に対しては、情報を集めたり整理することで対応できる。情報を曖昧にしているからリスクの洗い出しができない。手数を減らすのは、単純に技術やフローの見直しで対応できるはずだ。

 仕事を前倒しにできたら、浮いた時間を早めに消化しよう。自分の勉強の時間に使ったり、さっさと帰って休むなり、自分のために使おう。金を貰っている分の義務は果たしているのだから、その権利はあるはずだ。

 単純に手数が減るので、周りから見ると一生懸命な感じがしない。しかも、残業せずにさっさと帰るとなると、見た目的には問題もあるだろう。そこは、明確なデータを提示したり、結果を示していくしかないだろう。

 現実問題、効率の悪いバカほど輝いて見える。全力でぶっ倒れる方がドラマになる。倒れた後にハァハァ言ってたりしたら最高だ。そんなしょうもないドラマを演じるくらいなら、さっさと帰って美味しい物食って寝よう。そういう、人としての幸せを噛み締めるための仕事だと思うし、技術だと思う。

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