いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

議論のやりかた

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■議論の目的

 議論と喧嘩は違う。議論と勝負とも違う。ちなみに私はスポーツというのが嫌いだ。単純に勝ちか負けしか無い。じゃんけんの複雑版みたいなものだ。ああいうのと同じ感覚で議論をしたら、いつまでも収集が付かない。

 議論の目的は納得を得ることだったり、事実を見極めることだ。その経過で、自分の考え方が覆されたり、気に入らない意見を言われることもある。それが嫌なら、最初から議論など成り立たない。

 そういう意味で、純粋に議論が成り立つことは少ない。会社なんかで行う議論っぽいものは、実質的には交渉だ。学校とかでやるにしても、あらかじめ答えが決まっている。そんな出来レースみたいなのは議論と呼べない。

 議論とは模索だ。道筋と最終結果を固めた状態では成り立たない。立場などの力関係を振りかざしても成り立たない。純粋な知性と知性のぶつかり合いだ。自分の意見を押し通すより、人の考え方を聞くことが主目的になると思う。

■日本人は議論慣れしてない

 日本人は議論が下手クソだ。議論をやったことが無い人が多い。問題解決を人間関係に依存しすぎている。組織ではそれが正義で通じてしまうので、あまり理論的に考え無い。脳みその理論的思考を司る部分が貧弱だ。

 人間関係を円滑に行うには、自分の意見を立証するより付和雷同した方が早いし楽だ。そういう目線から考えると、わざわざ議論したがる人の方が効率が悪いし、扱いにくい。組織ではあまり喜ばれ無いタイプだ。

 これを良しと見るか悪しと見るかはそれぞれの自由だ。ただ、周りが初心者だらけなので、ちょっと議論のやり方を覚えるだけで、大きなアドバンテージになる。問題解決に人間関係、プラスもう一つ手段が追加されることになる。

■具体的な議論のやりかた

 まず、議論ができるようになるには、発想力を高める訓練が必要だ。最初に誰でもできる発想力を鍛える方法をお伝えする。それは、自分と反対意見の人の立場になって考えてみることだ。

 自分と反対意見の人の理屈が分かると、自分との違いが分かるようになる。なので、話を聞いていて、いちいち一喜一憂せずに済むようになる。これは重要だ。議論のできない人は、この一喜一憂の内容を拠り所とする。つまり、どんなに理論的に振舞おうとしても、根本がフィーリングなのだ。土台がもろいので、議論にさえ至らない。

 自分と反対意見の人の理屈がつかめるようになったら、次は条件分けというのができるようになる。条件付けについては、ここで言うまでもなくよく聞く話だと思う。だが、大概の人は、自分と反対意見の人の理屈を掴めない段階で条件付けをやろうとする。

 つまり、貧弱な土台の上に大きな理論体系を構築しようとするので崩れる。そういう簡単な話だ。ついでに言うと、相手の一言に一喜一憂しているようでは議論なんて成り立たない。感情の起伏にエネルギーを浪費して、考える部分にエネルギーが回らない。

■突き詰めると感情を制御すること

 議論をするための重要な基礎は、自分の反対意見の人を理解することに尽きると思っている。極端なことを言うなら、自分のことを間抜けと罵る人と笑顔で話す。そういう寛容さというか、精神的な成熟度だと思っている。

 現代人の感覚からすれば、精神性と理論性は別物と考えるだろう。だが、怒り狂った状態でまっとうな理論が練れるか?歓喜に酔いしれている中、対極にある価値観に理解が及ぶか?何かを考えるなら、精神的にフラットな状態にもっていく必要があるんじゃなかろうか。

 反対意見の人の立場に立てないから理論に穴が多くなる。あたりまえだ。反対意見の人の立場を理解しない分、単純に把握している情報量が減る。貧弱なデータで理論を練っても大して広がらない。元データの要素が一つ違うだけで、組み合わせの分岐で最終的な情報量は乗算で変わってくる。

 あと、自分を正しいと強く思いすぎると、Yes,Noの切り替えが鈍くなる。結果、思いつく条件の分岐の数が少なくなり、返答に詰まり易くなる。これを解消するには、精神的に成熟して寛容さを身につけるしかない。

 最後に結論を簡素にいうと、精神的に成熟した人でないと議論は無理だ。これに尽きる。

Comment(2)

コメント

forseti

> 自分と反対意見の人の理屈が分かる
以前ここでコラムを書いていた時に、
とても意識していた事ですね。
(出来ていたとは限りませんが)
読み手の突っ込みやどう反応するかをイメージした上で
構成する理論は、人の共感を得ることが多いかなと思います。

また、感情的になればなるほど、
自身の論理構成が崩れていくのも非常に実感しています。

いつもこれらが出来ていればよいのですが、
仕事でよく直面する困る事が、
「これらを維持するコストが出せないとき」
ですね。(パンクしてる、またはしかかってるとき)

自身の状況が苦しい中でも、
議論が出来る状況を作り出す方法は無いものですかね。

ksiroi

感情を廃してスタート地点。まさにそのとおりだと思う。
YesかNoか。WhatかHowか。区別が出来るようになって一年生かな...

怒気に任せるほど思考がクリアになって正論しか吐かなくなるタイプもいるけど、
その辺は通り一遍 周り巡ってアホなのか優秀なのか。

議員さんに多い気がするけど、幼稚なのか成熟しきった結果なのか...
企業の上のほうは感情を廃するスキルを持った人が多いね。中間管理職は少ない気がする。

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