いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

Yesと答える度にエンジニアの質は落ちていく

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▪︎一流は「Yes」で答える

 お客様にできるかできないかを問われて、一流のエンジニアはどんな難題にも「Yes」と答えるらしい。でも、本当にそれ言っちゃっていいのかな?私としては、相手への説明を「Yes」から始めれば良いという解釈だ。

 実際は、「予算が多くかかります!」とか「人知を超えた能力を持つ人が現れればできます!」、「画期的なオープンソースのソフトが出ればできます!」とか、かなり確率の低い条件を交えれば、大概の条件に「Yes」と答えられる。

 とりあえず、「Yes」から話を始めないと耳を貸してくれない人は多い。最初に「Yes」と答えて、条件の難しさで相手を納得させる。そういう手法をよく使う。これなら、どんな難題にも「Yes」と答えることはできる。

▪︎「Yes」を連発すると自爆する

 だが、自分が一流だと思いたい二流の人は、間違いなく「Yes」で自爆する。答えを全部「Yes」で埋めようとするからだ。たとえ大統領だろうと、エンジニアライフの編集者だろうと、相手の要望に全て「Yes」で答えるのは不可能だ。

 ただ、一流っぽく「Yes」と言いたい誘惑は強い。「Yes」と言えば評価される、信頼が得られる。頼りにしてくれる・・・。ほど世の中は甘くない。言うだけでなく、実現してこそ評価や信頼は得られる。また、得ても意味の無い評価や信頼というのもある。

 ここを勘違いしている人が多いと思うのだが、「Yes」は自分が言うものでなく、相手に言わせるものだ。自分が「Yes」と言っても相手が「Yes」と答えるかは別の話だ。ここを勘違いして「Yes」を連発すると、責任を背負い込み過ぎて自爆する。

▪︎相手のYesを導き出す手法はチェスに似ている

 チェスでは駒を取りまくるのが強い訳では無い。有り駒全部取られても、最後にチェックメイトをかけられる人が強い。目先の駒を大量に取る戦法で勝てるのは、せいぜい初心者レベルの場合だ。

 同じように、単に多くの「Yes」を言うことが優秀さではない。最後に「Yes」と言わせるのが一流だ。そのために多くの戦略、戦法を考える。現代人は最初から最後までの右肩上がりを望み過ぎだ。そういう点で、戦略的な思考能力は退化したのかもしれない。

 一つ一つ、丁寧に不安事項を潰していって、最後に相手に「Yes」と言わせる。この経過がチェスに似てるように思う。見るべきは、ポイント毎の「Yes」ではなく、最後の「Yes」につながる道筋ではないだろうか。

◾︎不安だから「Yes」と答える

 あともう一つ。断られるのが怖いと、つい「 Yes」と言ってしまう。どんな人でも「No」と言われると不安になる。相手に気に入られようと思えば、「Yes」を連発するか、不安を与えない曖昧な回答をするのに限る。よくそういう人を見かける。

 不安が多いと「Yes」が増えるようだ。ちなみに、モチベーションが低いと「No」が増える。課題と向き合う前には、まず心理的な問題を解消してはどうだろうか。自分の答える「Yes」や「No」が変わるかもしれない。

・・・ところで私はこのコラムで何度「Yes」と書いただろうか。エンジニアライフ担当の編集者さんは、きっとこの曲を思い起こしていることだろう。

Comment(1)

コメント

nsh1960

気の弱い and/or 押しに弱い人はyesと言う暗示にかかってしまうことはありがちです。それを第三者は無能と再定義するわけですが。

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