いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

エンジニアとユーザ、どちらが歩み寄るべきか

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▪︎お互いの立ち位置のままでいいんじゃないか?

 よく、ユーザはエンジニアに歩み寄るべきだ。とか、エンジニアはユーザに歩み寄るべきだ。という話を聞く。私は、どっちも無理に歩み寄る必要は無いと思う。それぞれに立場があり考え方がある。その差は大きいからだ。個人の努力だけでその差を埋めるにも限界がある。

 エンジニアとユーザだと分かりにくいが、男性と女性とすると分かりやすい。人類誕生以来、男性と女性は存在するが、高度に文明が発達した現在でさえ完全に分かり合えない。立場の違う者同士が理解しあうのは難しい。エンジニアとユーザも似たようなものだ。

 もしユーザがエンジニアを完全に理解できるとすれば、技術を勉強してエンジニアになった時だ。エンジニアにしても、自分の作ったものから一度離れないとユーザとしての立場から見ることは難しい。両方の要素を兼ね備えるというのは、なかなか努力のいるものだと思う。

▪︎歩み寄るのではなく間に人を置く

 一人のエンジニアが高度な技術と幅広い対応力を同時に兼ね備えるのは難しい。技術と対応力は別分野だ。例えるなら、オリンピックで金メダルを取った後に、スポーツと関係の無い分野で一流の実力を発揮するような、そういう難しさがある。

 技術力と対応力を兼ね備える人は少数だ。万人にそれを求めるには無理がある。無理に実現しようとするより、技術に長けた人と対応力に長けた人でチームを組むのが良いと思う。自分に無い能力は人に借りれば良い。無理に自分でどうにかする必要も無い。

 ユーザには、エンジニアの雰囲気だけで「No!」と言う人もいる。これはエンジニアの努力ではカバーしきれない。そんな人がエンジニアに歩み寄る努力をするとは到底思えない。だったら、エンジニアじゃない人の協力を得るのが一番やりやすいと思う。

▪︎人と人を繋げるスキル

 それぞれが分かり合えないのは、エンジニアとユーザに限ったことではない。Windows系が中心のエンジニアとUnix系が中心のエンジニアでも分かり合えないこともあるし、同じUnix系のエンジニアでも、Vimを使う人とEmacsを使う人とで分かり合えないこともある。スキルのレベルに差があっても同様だ。

 自分と違う価値観を持つ人と分かり合うのも一つの技術だ。自分の正当性を押し通せば分かり合えるというものでもない。歩み寄ろうとして、逆に怖がれて逃げられる事もある。適切な教育や訓練があって、初めて人と分かり合う技術が身につく。

 両極端な人ではどうしても距離が大きくなる。間に人をかまして通訳をしてもらおう。最初は通訳を介してのコミュニケーションになるが、慣れていけば互いの距離は縮まっていく。こういう通訳のできる人のスキルはもっと評価されるべきだと思う。

◾︎放っておけばエンジニアとユーザは離れていく

 考えてもみよう。エンジニアは高い技術を求められるので、難しい技術を追求する。ユーザは「より便利に、より簡単に」を求めるので、深く考えないのが普通だ。両者の思考が離れていくのは当然の摂理だと思う。

 ユーザは、相手がエンジニアだというだけで構えるらしい。私でも、エンジニアライフの担当者と、どうしたら乙女心を掴めるかの話になると構える (そんな話はしたことは無いが)。まるで想像のつかない世界だからだ。ユーザにとってエンジニアとは、それと似たようなものだろう。

 今の世の中において、ユーザが考えなくなる流れは止められない。放っておけば、どんどんお互いの距離ばかり開いていく。エンジニアとユーザの間に立てるスキルがある人が繋ぎ止めてくれないと、両者の溝は深まるばかりだ。

 だからこそ、間に立ってくれる人が重要になる。エンジニアが活躍するには、そういう人の助けが必要だ。役割としてはっきりと認知されてもいいのではないだろうか。人と人との間に立てる力のある人は、もっと評価されるべきだ。

Comment(1)

コメント

へっぽこエンジニア

おはようございます。
いつも楽しく読ませていただいています。

お互い無理をして歩み寄ろうとするよりは「間に人を置く」考えは
それぞれの立場の人間が専門性を発揮する上でとてもいいと思います。

ただエンドユーザと開発者間の情シス部門とか
発注元と高スキル水準の開発ベンダの間の一次受け(中抜き)企業とかは
あまりいてほしくないですねw

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