いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

SKK特集 即戦力 Part 1 ―放置プレイの免罪符―

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■即戦力募集

 即戦力。IT系の募集に限らず、仕事の募集を見るとよく見かける。つまり、現場に来てすぐに役に立ってくださいよ、と。教育期間をほとんど設けず、自分で勉強して仕事できるようになってくださいよ、と。なんとも都合のいい話である。

 即戦力というと、雇われる側としては「そんな都合のいいことはあり得ないぞ!」というイメージが強い。いかにも企業側の怠慢の産物と思われがちだが、まっとうな即戦力というものは存在する。

■即戦力で動く職場

 即戦力とは、企業が育てなくても入った時点で、ある程度の結果が出せる人材である。教育もせずに結果を出すなど、都合のいい話だ。しかし、条件次第で、即戦力は成り立つ。

 例えば工場での仕事。来て数日でラインに入って仕事をこなしている。工事現場でも、親方の指示の元で即戦力として動いてる人もいる。発想力を武器とする作家やジャーナリスト、芸能人等もある意味、即戦力と考えられるかもしれない。

■そこにステージがあるから戦える

 一般的には、能力が高ければ即戦力として通用すると考えられている。しかし、能力とは条件を覆すものではない。能力を発揮するには、条件が必要だ。

 体力のみが問われるような力仕事にしても、工程などの仕組みはきちんと考える人が考えて、環境を整えてくれている。ジャーナリストには、媒体は出版社が用意している。芸能人には、ステージはテレビ局やらが用意している。

 即戦力が成り立つ条件は、個人より団体に求められる。能力を発揮できる基盤が用意されているなら、即戦力という考え方におかしなことはない。IT系で即戦力が成り立ちにくいのは、この基盤が崩壊していることが多いからだ。もともといる人がろくに仕事ができないような基盤では、新しい人がすぐに活躍できるはずがない。これは単純に知識とか経験で覆せるものではない。

■即戦力は教育放棄の理由にしてはいけない

 即戦力を考える上でもう1つの問題。それは、誰が人を育てるのか、という問題だ。結局、即戦力と入ってきて役に立っていても、育てる必要はある。即戦力で結果を出せていても、長く結果を出すためには教育は必要だ。即戦力イコール教育の必要のない人材ではない。

 教育する余裕がないというのは理解できる。しかしそこで教育を放棄すると、いつしか人の育て方を忘れてしまう。そうなると組織としては致命的だ。じりじりと衰退していくしか道はない。そうなってしまった企業は思いのほか、多いのではないだろうか。

 即戦力を募集するのは企業としては当然だ。しかし、社員教育の義務を放棄するために“即戦力”という言葉は使わないで欲しいものだ。

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 コラムをシリーズ化する場合、なんか見出しがあった方がいいかなと思い、適当に考えました。

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