「趣味のために転職します!」ってアリ!?
「ワークライフバランス」というと、頑張って仕事と生活を両立するイメージが強いのではないでしょうか。その場合、「生活」にあたる部分は結婚や出産、育児、介護や地域活動など、生き方に関わるものに限定して考えている方が多いように感じます。
一方で、私が転職活動のお手伝いをする方の中には、プライベートな趣味を最優先にした「生活」を楽しむために、仕事の環境を変えようとする方もいらっしゃいます。
27歳の坂本さん(仮名)もそのひとり。中堅規模のシステム開発会社に在職していた彼は、1年前まではただひたすらITエンジニアとしてのスキルアップを目指して、昼夜を問わず仕事に没頭していたそうです。
そんな彼に運命的な出会いが……。
友人から女の子数人と海に遊びに行こうと誘われ、たまには気分転換にと出かけました。そこで、以前から格好いいなと憧れていたサーフィンに初挑戦することになったのです。
最初はまったくコツがつかめず、波にもまれるだけでした。それでも、今まで経験したことがない「海と呼吸を合わせる感覚」に快感を覚え、すっかりサーフィンの虜に。仲間たちがあきれて先に帰ってしまったほどだったそうです。
そして、坂本さんの生活は一変します。
週末にはボードを抱え、2時間以上電車に乗って海へ。
どんなに仕事が忙しい時も、カットオーバーのために前日まで不眠不休でいる時も、足取り軽く出かけていました。
徐々に仲間も増え、よりサーフィンを中心とした生活にシフトしていくにつれ、仕事とのバランスが難しくなっていきます。
体力的には両立することにまったく不安がなかった坂本さん。しかし、以前は気にならなかった休日出勤によって、大切な趣味の時間を奪われることに強いストレスを感じるようになってしまいました。
「仕事よりも趣味を優先して考えるなんて、周囲から見れば不真面目な人間だと思われてしまう……」
そう思うと、誰にも相談することができないまま悶々とした日々を過ごすしかありませんでした。
そしてついに、入社後はじめて過労でダウンしてしまったのです。
彼は、危機感から半ば衝動的に転職サイトへ登録し、私のところへ相談にいらっしゃいました。
それまでの経緯をお伺いした私は、思わず問いかけました。
「趣味を最優先にする人生は、恥ずかしいですか?」
坂本さんは、仕事を中心に考えている人たちには、人生の中心が「仕事」ではなく「生活(趣味)」に置くことを理解してもらえないと考えていました。
「それは趣味にだけ力を注いで、仕事をおろそかにする場合だと思いますよ。仕事をするときには限られた時間に120%実力を発揮して、趣味にたくさんの時間をかけられるようにすれば、仕事も趣味も両方大切にすることになりませんか?」
ハードなプロジェクトばかりを経験し、『残業、休日出勤=頑張りの証』という、ITエンジニアに多い思い込みを持っていた坂本さんは、私の投げかけで少し安心していただけた様子でした。
その後、在職していた会社ではやはり休日出勤が避けられないことから転職活動を開始。
ほどなくして、与えられた業務をしっかりとクリアすれば就業時間は自分で自由にデザインできる、裁量労働制が徹底されているパッケージ製品開発会社への転職を成功させました。
現在は、海と会社の中間点に住まいを移された坂本さん。
朝の天気を見て会社ではなく、そのまま海に出かけてしまうこともあるそうです。
もちろん、仕事は限られた時間で最大限の成果を出せる人材として、社内でも評価されています。
私は、自分を幸せにできる時間を持っている方は、それがどのような内容であっても、本当に幸せなことだと考えています。
幸せな時間を多く確保したいという気持ちは、効率的かつ質を高めて仕事をするモチベーションにも繋がります。
このコラムで取り上げてきた「ワークライフバランスの追求」「仕事と生活を対立させずに両立する」を実現させるチャンスや転機は、人生を豊かにしたいと考えるすべての人に等しく与えられているものだと感じています。
アデコではそのためのサポートをさせていただきたいと考えております。お気軽にご相談くださいね。