ホワイトな大手企業へ転職!その52 ヘッドハント!?
さて、材料の生産の仕事を任されるようになった私は着実に仕事の方もこなすようになり進捗もそれなりに進んでいった。しかし相変わらず仕事は忙しく定時で帰れる日などほとんどなかった。水曜、金曜は原則として残業は禁止となっているのだが技術部はそんなこと守るわけないし逆に定時間なんかで帰ったら「なんで帰った!?」なんて怒られるからね。今思えばほんとにおかしな部署だったよ。
あるとき、いつものように仕事をしていたらその日はたまたま高橋さんの仕事の関係で私が任されたいた仕事が無くなって「今日は定時で終わろう!」ということになったのである。やった!もうウキウキでしたよ。そして定時間のチャイム、さて帰ろう!としたら高橋さんが「杉沼課長のとこへ行こう!」と言い出した。前にも書いたが杉沼課長は私の製造部署の課長である。「田中君を技術部へ推薦するからさ」って高橋さんが言いだした。
何がなんだか状況が呑み込めず、そのまま高橋さんに付いて行く。その前に技術部の広沢課長のとこへ高橋さんが「ちょっと杉沼課長のとこへ田中君を推薦しに行ってきます!」って。それを聞いて慌てたのが広沢課長だ。「おい高橋、ちょっと待て!なんだ?どういうことだ?」って、「田中君と杉沼課長のとこに行ってきます」「そうじゃない!いきなりなんだ!」って広沢課長。「そんなことしたら一緒に応援に来ている山口君はどうなる?杉沼課長に山口君のことを聞かれたらなんて答えるんだ!」ってやりとりが事務所内で起きている。
20歳そこそこの私は状況が呑み込めず二人のやりとりの間に突っ立っているだけであった。しかし今思うと広沢課長の立場ってものを無視していきなり製造課長のところに人材引き抜きの許可を貰いに行く高橋さんの頭の中が私には理解できない、たしかにこのやり方は常識がないよね。この高橋さん、仕事はできるのだがちょっと変わった人だった。例えば珈琲飲むとき「砂糖が溶けてねえなぁ」って、なにするかと思ったら自分のタバコを取り出してタバコで珈琲を掻き混ぜる人だったしね。まあ、そんなことはどうでもいいんだけど、結局この話は広沢課長のとっさの好対応で何ごとも起きずに済んだのである。私自身の気持ちとしては、技術部に移籍なんて絶対に嫌だったしね。しかし「じゃあ山口君のほう手伝ってもらえる?」ってことでせっかく定時間を期待していたのだが残業になってしまったのであった。。