工業高校生の就活について
工業高校生は、17~18歳の段階で進路を決めなければなりません。ご両親の支援があり、スネをかじって進学できる人はいいのですが、問題は17~18歳で社会に出なければいけない人の進路について、情報があまりにも少なすぎることです。大学全入時代には、高校から就職する人を想定した記事がなかなかないからです。ただ、言えることは、ジェネラリストは不利。「わたしは何々をやっている誰々です」と、胸を張って言えるようなスペシャリストが有利。これだけは言えます。
■職安求人の見方
まずは、続けられる距離に会社(勤務先)があるか、ということです。情報技術者は、夜っぴて仕事をすることが多いので、終バス、終電などを確認して、その日のうちに帰宅可能で、通勤に無理のない事業所が、健康のためにも良いような気がします。
会社の従業員。あまりにも従業員が少ない場合、そこはただの口入れ屋でして、社長が従業員を請負で雇って、他の企業に派遣するだけの場合が多いので、それに抵抗がある人は注意しましょう。いや、別に派遣には抵抗はないよ、という方はかまいませんが。
また、こういうケースもありました。千葉県船橋市の例。会社は全然別なのですが、就業場所が同じな場合、それは、案件が一緒だということです。貪欲に職安に通い、類似案件がないかどうか確認してください。ハローワークでは、ネットで調べた求人番号をもとに、最大1日10件ぐらいは、求職票をプリントアウトしてくれます。この際ですから、ハローワークカードを作っておきましょう。無駄にはなりません。
資本金だけ無駄にでかくて、給与水準がそうでもない場合、従業員の給与を犠牲にしてまで、会社を守る体質の企業かもしれませんのでご注意ください。また、福利厚生。何日間、有給休暇で休ませてくれて、厚生年金、健康保険、労災保険は完備してあるのだろうか、という点にも注意が必要です。サービス残業であるかないかを見分けるのは極めて難しいですが、定時で帰れるように書いてあっても、あくまで建前で、実際そうでもないのがこの業界です。
どれだけ教育してくれるのか。きちんとした教育を行うOFF-JTなのか、それとも、OJTという名のぶっつけ本番なのか、教育制度にも目を向けてください。若年者専用求人の場合、その点にも注意が必要です。また、機会があれば、若年者専用の就職説明会が行われますので、それに参加してみる。どうにもこうにも、今の自分のスキルでは、給与水準が合わなければ、進学という手もあります。
民間の就職斡旋業者ですが、よい会社もあれば、悪い会社もあります。職安や労働基準監督署などの指導に従わない会社が、職安に載せられなくなったので、無理矢理、応募者を募るために、民間の就職斡旋業者にしか載せられない、という場合もありますので、注意が必要です。
資格取得に関して、会社がどこまで資格費用を、どのように負担してくれるのかを、よく確かめましょう。全額自分持ち、受かったら手当をくれる、会社と個人で折半する、などの種類があるそうです。
■どんなキャリアパスを目指すのか
【プログラム系】ときにデスマーチ(目論見を誤ったがために、末端の技術者に時間的、精神的余裕がなくなる)などもありますので、注意が必要です。また、30~35歳になったら、プロジェクトマネージャになるか、それとも、別の道を探すかをしなければいけないので、注意してください。一生プログラマは希有な存在です。
【DB系】基本、SQLから入ればいいので、オラクルの資格を受けておくことをオススメします。最初はBronzeから入りましょう。いまのうちから、まずはテーブルの作成と、SELECT文などをマスターしておいてください。
【インフラ系】ここも残業が多い職場です。また、常に、資格の本を買い、資格を取り続けないと、取り残される場合がありますので、トレンドをキャッチアップする必要があります。常に他部門と連携を密にし、お客様と直接タッチする部門なので、コミュニケーションスキルをつけておいてください。
【Web系】最新の技術は高く買われる傾向にありますが、工業高校だけの知識では追いつかない(学べない)と思うので、専門学校に行ってからにしましょう。Flash(の制御コマンド)、PHP、Perl、DHTMLぐらいは組めるようにしてください。
【エンベデッド系】最近の高校でどこまで教えているか分かりませんが、とりあえず、C言語を極めてください。また、論理回路や、リレー、LEDなどのデバイスにも詳しくなっておく必要があります。組み込みを究めるには、実際に回路と、オンボードマイコンの振る舞いに慣れ親しんでおく必要があります。学校には内緒で、こっそりH8マイコンボード(C言語で走るやつ)を、こっそり自費で買うことをオススメします。
【印刷系】特殊印刷以外はやめとけ(苦笑)。絶対に後悔します。斜陽産業ですからね。
■いつまでも、あると思うなカネとコネ
新卒というのは、買い手市場であっても有利に働きます。それはなぜかと言うと、新卒しか採らない企業=自社カラーに染めやすい人材を求める企業、だからです。率直に言えば、企業にとって新卒は、飼い慣らしやすい、安価な即戦力だからです。これは中年には真似ができません。若いうちの特権です。
やがて独立し、所帯を持つと、何かとお金がかかります。資格を取り続けて、展開を優位に進める必要がある、つまり、自分が自分のために投資する必要があります。いつまでも、親のスネにはかじりついていられません。また、二度目以降の転職の場合、新卒カードが切れないので、よほどポテンシャルのある、しかも、メリットのある人材しか企業は採りません。なので、新卒&学校推薦というコネを最大限活かして、できるだけその企業で、職場の中で、短気を起こさずに過ごすことが大事です。
なので、カネとコネはいつまでも無限にあると思ったら大間違いです。二度目の転職から、たぶん味わったことのない痛みが襲って来るでしょう。ちょっと脅かしているみたいですが、これは転職を繰り返してきた人間が語る真実です。心を落ち着けて、なるべく多くの求人票に当たることが大事です。
■進学組の皆さんは
進学。親御さんにとっては、痛い出費です。履歴書の学歴欄に「○○大学卒業」と書くだけで、何百万円ものお金が出ていきます。ストレートにセンター試験を受けて大学、というのもアリですが、ここはいっちょ、千葉県の場合、木更津高専4年次からの編入学や、職業訓練大学校など、ちょっと変わった寄り道もアリです。民間の専門学校もいいですが、せめて短大は目指しましょう。途中で気が変わって、自力で学力をつけようとすると、後々苦労しますから。僕なんか、放送大学(当時のベンチャー企業論)でどれだけ苦労したか分からない。
と、いうわけで、工業高校の皆さんにおかれましては、幸多い人生を歩まれる事を希望します。僕を反面教師にして、ぜひ頑張ってください(とはいえ、うちの場合、全部親父が悪いんだけどね!!)。