中学校の恩師、クリティカルシンキングを語る
千葉時代の中学校の恩師の担任は、非常に面倒見が良く、人なつっこく、シャイで、しかし、背中が物語る努力のかたまりのような人です。僕が1986(昭和61)年に、私立高校を経済的な事情で、併願できずに中学浪人したときも、僕の苦手だった数学をビシバシと、陸上部顧問の合間を縫って、夏休みにも学校で特訓を受けました。おかげさまで、貧乏だったわが家の学習塾代わりになってくださいました。
■教育者は背中で語る、背中が語る
高校合格1987(昭和62)年、千葉テレビで、深夜まで富里市の我が家の食卓で、高校の合格発表の名前が出るのをじっくりと待って、喜び合ったことは、今でも深く思い出に残っています(当時の千葉県立千葉工業高等学校、情報技術科の偏差値は公表値60前後)。おかげさまで、合格することができました。
今でもなお、たまに長距離電話で、お疲れのところ、世間話をさせてもらうのですが、なんと、このたび、プレゼンテーションをされたということで、ますますお疲れさまです。先生が今では、某印旛郡市の中学校の校長先生をされているのだから、大したものです。努力のおかげですね。人間、真っ正直に努力して生きていれば、大人物になれるのだなあ、と思った次第です。
■クリティカル・シンキングの意義
たまたま電話で、情報技術の話題になって、そこから、パワーポイントの話になり、それから「オレ、プレゼンテーションしたんだけど」というお話になりました。「クリティカル・シンキング」という耳慣れない単語を、初めて知りました。それまでにも、ディスコミュニケーションと問題解決、という意味で、千葉県印旛郡市の中でも、特別に千葉県の指定を受けた中学校なのですが、ディスコミュニケーションをなくす教育の一環として、各学年で体系的な指導をされているそうです。
<各学年のテーマ>
- 小学1、2年生 コミュニケーション
- 小学3、4年生 感情
- 小学5年生 問題解決
- 小学6年生 コミュニケーション
- 中学1年生 クリティカル・シンキング
- 中学2年生 セルフ・コントロール
- 中学3年生 意志決定
そして、クリティカル・シンキングって何だろう、と調べて行くと、次のようなことが分かりました。なんと、一番にヒットしたのが、ここ、@IT自分戦略研究所の記事でした。
これを、小学校の段階からかみ砕いて教えて、思い込みで行動していないか、それは事実なのか、自分が思考停止に陥っていないか、などを考える、という試みです。
■恩師の実践 クリティカル・シンキング
千葉県白井市は、印旛郡市の中でも最西端(東京寄り)にあたる市です。ピア・サポート授業の時間の中でのお話です。中学1年生の授業では、段階を踏んでこのテーマに取り組みます。
- 第1セッション:自分の思考の仕方を振り返ろう!
- 第2セッション:出来事を「事実」と「思い込み・推測」に分けられるようになろう!
- 第3セッション:感情とその原因となる出来事を探ってみよう!
- 第4セッション:自分の考えていることを冷静に話せるようになろう!
これを中学1年生の段階から教わるのは、おそらく全国的に見ても、おそらくこの学校ぐらいなもので、これがもし本当に身に付いたら、大したものです。こういう実践の積み重ねで、例えば喧嘩が起きても「誰のせいなのか」「自分はどう思うか」「事実はどうなのか」という検証が自分でできるので、仮にトラブルが起きても、大問題には発展しない、というわけなのです。めでたし、めでたし。
なお、プレゼンテーションそのものの現物は、千葉県教育委員会が著作権を持っているので、興味がおありの方は、次のページをググってみてください。
京都大学/楠見 孝研究室
日本教育心理学会第52回総会自主シンポジウム
クリティカル・シンキング
―小・中・高等学校における教育実践の発達的検討―
■情報リテラシーにも役立ちます
この考え方に沿うと、情報リテラシーにも役立ちます。嫌なことがあっても感情的にならず、冷静に受け止められるようになります。それもこれも、人間関係あってこその情報リテラシー。どんな種類の端末を使おうとも、この端末の向こう側には、怒りもすれば、悲しくもなる、生身の人間がいるということを、肝に銘じておきたいものですね。
(それにしても@ITには何でも書いてあるんだなあ……)