筆者は1970年生まれ。先輩から、情報技術者を目指す若い方へ生きてゆくためのコラムです。

瞬きもせず ~阪神大震災から15年~

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 2010年1月26日のNHK「クローズアップ現代」で、スタッフが若いサラリーマンに「最近、誉められたことはありますか」と人々に尋ねた。答えはほとんど「いいえ」「最近ないっすね」といった状態。この頑固な不景気。そしてイライラが招く結果。それは、上司が「叱咤」はしても「激励」をしないということ。まことに寂しい限りであります。

 この「ほめる力」というタイトルの番組、最後までは見ていないんですが、ある社内セミナーで、社員に集まってもらい、わざわざ、あえて、社長が社員を誉める機会を与えるシーンがありました。最近の会社は「ダメだ」「お前には無理」「却下だ」「お前、そんなものも分からないのか」「それは無駄だ」「お前、向いてない」etc……。生まれてこの方、けなされてばかりで、よくぞまあ、田所稲造は、グレずに、スネずに育ってきたことか。自分で自分を誉めてやりたい気分で充満しています。

■瞬きもせず

 そんな、何度も震災等による会社都合で、勝手気ままにリストラされて、挙句の果てに、ノイローゼをこじらせて、ついに生活保護と、障害年金生活者に陥った、もうダメかも分からん、田所稲造というオッサンにも、かつて、大切な部下が、そして、後輩が何人かいました。彼らは、仕事の飲み込みが早く、従順で、相手に歩調を合わせるのが上手な子たちでした。これを見た後で、ある1人の元後輩を、思いっきり誉めてあげました。もう上司と部下の関係でもなくなり、あまつさえ、会社そのものすらなくなっても、いまだに、なお。

 ご参考:goo歌詞/瞬きもせず/中島みゆき
 http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND10627/index.html

 だから僕は元部下や、元後輩に言う。「君を映す鏡の中 君を誉める歌はなくても 僕は誉める 君の知らぬ君についていくつでも」と……。たとえ、音信不通になったとしても、たとえ、僕を見限り、見放しても。でも僕は誉める力の限り誉めるあんな会社でよくぞやったとだから僕は誉める。たとえ、縁が切れた後であっても。

■震災後の兵庫県経済を読み解く人

 内橋克人(うちはし かつと)さんが、NHKラジオ第一放送、ラジオあさいちばん「ビジネス展望」でお話をされました。神戸出身の経済評論家です。この人が嫌いな人と、好きな人との両極端があるそうですが、この人のお話は、逐一、まるで占い師のように当たるんです、不思議なことに。僕は良いと思いますが……。

 例えば、阪神大震災後の、兵庫県の域内総生産が、軒並み激減しています。仮に、震災前の1994年の域内総生産を100%とすれば、僕の住む武庫之荘(むこのそう)がある尼崎市(あまがさきし)では、域内総生産が85.6%しか復興していないという事実。また、神戸では、建物は建っても、区画整理されても、そこに人間関係がない。そこにコミュニティがない。あまねく閉店し、シャッター通りになる商店街。災害復興住宅での、高齢化、孤独死、自殺、独居死などなどを、読み解き、解説する。それがもう、逐一当たるんです。いっぺん、見たり聴いたりしてください。

 ご参考:NHK第一放送 ラジオあさいちばん 「ビジネス展望」ストリーミング放送
 http://www.nhk.or.jp/r1/asa/business.html

 ここに置いてある「被災地経済は今」というタイトルの放送を生で聴いて、これはもう、神戸からの悲鳴とでも言うべきものでした。くっきり分かって、当たりすぎていて、怖くなる程でした。皆さんも、被災地の生の声を、期間限定ですので、ぜひどうぞ。たかが淀川と神崎川を渡っただけなのに、大阪市内と阪神間ではこんなにも経済状況が違うことに、あなたも気づかされるでしょう。

■絶えざるリストラのスパイラル

 内橋克人さんは、1月27日のクローズアップ現代( http://www.nhk.or.jp/gendai/ )に、出ておられました。タイトルは「正社員の雇用が危ない」。

 不況が長引く中、新たなリストラの波が正社員を襲っている。会社で突然IDカードを取り上げられたり、長期間自宅待機を命じられるなど、一方的に職場から閉め出される「ロックアウト型」の解雇が増加。また、マニュアルをもとに組織的に多くの社員を退職に導く会社も現れている。しかし不当な整理解雇や退職強要が行われても、労働基準監督署には紛争解決の強制力がなく、裁判で勝訴しても、実際に元の職場に戻るのは難しい。内閣府によれば、企業内の余剰労働力は最大で600万人と推計される。正社員の解雇は今後さらに加速する可能性がある。番組では、正社員切りからどのように雇用を守るか、どんな対策が求められているか、実態をもとに考えていく。

 なぜか、NHKでのエンカウント率が高い方ですが(このへんの事情は謎が多い)、今回のまとめとして内橋さんは、「企業が年功序列型の体質でありながら、それが形骸化しつつある。一度、非正規雇用という便利な使い捨て道具を利用したら、それに味をしめてしまい、ついには正社員にまでそれを適用しようとする。強引なリストラをやろうとする。従来であれば、雇用をなくすことは、会社の恥とされてきたが、新興国の台頭や、株主優遇の現実では、リストラをやればやるほど、株主から高い評価がなされる。そこで、絶えざるリストラのスパイラルに陥っている。これからは、雇用をどう守るのかが課題、従来型雇用の転換点にさしかかってきつつある」とのことでした。

■神戸に来られた時には思い出してください

 もしも、あなたが神戸や阪神間に来られるのであれば、ファッション関連。たとえば、靴でも良いし、鞄でも良い、洋服でも良い。スイーツ好きなら、お菓子でも良い。何なら、阪神タイガースグッズでも何でも構わない。何か1つでも、買って行ってください。そうして、どこかの飲食店で、とにかく何か飲み食いしてください。温泉に行って下さい。インターネットでのショッピングでもいいでしょう、神戸関連であれば。僕には直接の利害関係はないけれど、それが、震災後、県内総生産、域内総生産が縮小した神戸近郊や、2008年現在、約3兆5557億円の有利子負債を抱える兵庫県の被災地経済のために、あなたが出来ることの一つかも知れません。

 尼崎市/るるぶ尼崎市(Amazon.co.jpでも買えます)
 http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/sogo_annai/special/009rurubu.html

 もしもあなたが、旅行で新大阪や新神戸の駅頭に立つとき、ホームページで神戸のお店を見つけたとき、僕の言葉を思い出してくださいね。

(来週も、元気があれば書いちゃうかも知れないなあ……)

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