筆者は1970年生まれ。先輩から、情報技術者を目指す若い方へ生きてゆくためのコラムです。

90歳のミスター

»

 御年90歳にもなって、まだまだ会社関係の人とお話ができる、驚異的な健康達人をご紹介する。にんにく卵黄は関係ないみたいなのだが……。

 東京都武蔵野市吉祥寺のNさん(前述のシスコのNさんのお父さん、僕の叔父さん)が、わざわざ親父の形見を届けるために、阪急神戸線、武庫之荘駅に来てくださったのだ。ありがたいことだ。

【90歳のミスター】

 ミスターは時間厳守で、ふと、駅南口へ通ずる連絡通路から、ひょっこり現れた。意表を突かれた。どうやら間違えて南口改札でお待ちいただいたようだった。このミスターは確か、若い頃はM商事で重役を務めていたらしい。だから、仕事のクセが抜けず、御年90歳になっても、足腰カクシャク、耳はばっちり聞こえる、眼は裸眼で遠くまできちんと見える、スーパーおじいさんなのだった。

 そのミスターが「喫茶店はどこ」と訊くので、長旅の疲れが癒されるよう、ワッフル付き洋食喫茶、つまりは阪急系列の店に案内した。無難だろう。お冷やをゴビゴビ飲むと、ふーっとため息をついて「やれやれ、今日は5時起きじゃった」とニヤリ。冷たいアイスクリーム付きコーヒーをおいしそうに食べる。「のぞみ号でしたか」「いや、ひかり号の自由席が安くて空いているから」とのこと。

 洋風な店なので、訳の分からないカタカナ語のメニューのそれを適当に注文すると、出てきたのは「生野菜のどんぶり盛り」だったので、これまたカクシャクと食べる。もちろん、全部自前の歯だ。すごい。恐れ入りました。僕は、アイスティーとワッフル1個で充分です……。

【月光院観月照道居士】

 元親父の戒名が決まった。というより、Nさんが大枚はたいて、佐賀のお坊さんに頼んで付けてもらったのだ。……なんか立派過ぎやしないか、この戒名(苦笑)。闇夜の道を照らす月のようなストーリー性すら感じるぞ。見方を変えれば、まるで「セーラームーン」のようではないか……。「月に代わって、おしおきばい!!」。……うう、想像するだに気色悪い。まあ、これで、成仏したと思えば、それでいい。それでいいのだ。

【電子メール感覚で葉書を】

 ミスターNさんは、電子メール感覚で葉書をしたためられる。一方、インターネットと親和性の高い世代にとって、葉書を書く、という行為はハードルが高い。書き損じる心配があるし、一旦、脳内メモリに文案を練って、それからそれを葉書に写し取る、といった作業が必要となる。葉書には、バックスペースキーもなければ、コピー&ペーストもないのだ。

 たぶん、我々が常識としている電子メールと同じように、ミスターの頭脳では、葉書を常識としておられるのだろう。葉書ならば、住所さえ分かれば、電子メールのアドレスが、ドメインがどこだと狼狽する必要もなく、きちんと届く。パケットの不着、コリジョンなどを気にせずとも、葉書の場合、集配の日本郵便さえしっかりしていれば大丈夫なのだ。

 葉書を書く作業は、脳内での漢字変換を伴う。ひらがなやローマ字を入力して変換するのとは違い、脳内でつくりとへんを組み合わせて漢字をこしらえてから、それを筆記転写する。葉書は自然と脳トレーニングになっている。一方、電子メールはというと、それほど脳を使わなくとも、つらつらと文章が出てくる。自動筆記の要領だ。……我々電子メール世代の老後が心配になってきた。もしや、パソコン依存症のぼけ老人が多発するのではないかと心配になり、思わず郵便局で葉書(かもめーる)を買うのだった。

【90歳のミスターはサイクリングと散歩がお好き】

 健康の秘訣は「サイクリングと散歩」だそうだ。さすがに1度兵隊に行った人は違う。どこまでもフィジカルで、健康的なのだ。

(思索と模索は続く……)

Comment(4)

コメント

組長

稲造さん、おかえりなさいませー。

私の祖母は91歳ですが、カクシャクとは程遠い「要介護」な老人です・・・。
既に祖父は他界してますです。Nさん、かっこいいですね!!我々も負けてられませんよー★

組長さん、こんばんは。

一時的に帰って参りました(笑)いやあ、静養と勉強でコラムどころではなかったのですが、余りにおもしろいネタなので、ちょっとだけ復活して載せることにしました。

老後は呆けないようにがんばりましょうね。ではでは。

第3バイオリン

田所さん

お久しぶりです。

私の母方の祖母が来月90歳になりますが、カクシャクとはいきません。
体は動きますが、どうも脳内メモリでデータの破壊、改ざん、なりすましが日常的に行われているようです(認知症ではない)。
うちの母親とのやり取りを見ていると、「人は年取ると子供に帰る」という言葉の意味がよくわかるような気がします。
(そして30年後には母親と私がそれを繰り返す・・・かも)

私もNさんを見習って、年取っても元気でいたいものです。

第3バイオリンさん、おはようございます。

さだまさしが「療養所(サナトリウム)」という歌で唄っていますが、「思い通りに飛べない心と動かぬ手足、抱きしめて燃え残る夢たち」という感じです。ですので、僕は、子どもに返る、というのはちょっと違うと思っています。

うちのばあちゃんも、大変だったようで、壁にう●こで字を描くとか、そこここで失禁するとか、えらい騒ぎだったそうですが、やがて母親が壁に●んこで字を描くようになるのかなあ、と思うと、それは末恐ろしいと思っています。

なので、今から呆け防止のために、母親の脳のCTやMRIを撮るつもりで準備しています。

コメントを投稿する