筆者は1970年生まれ。先輩から、情報技術者を目指す若い方へ生きてゆくためのコラムです。

立ち居振る舞いとセルフモニタリング

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 僕が20年前、社会に出て、まず真っ先に言われたのが「よそさまは、どうしているんだろう」「よそさまから見て、自分はどう見えているんだろう」といったセルフモニタリングということを意識しろ、ということです。自分で自分自身を観察する能力が必要だということです。ひとりよがりになってはいけない、会社員たるもの、芸術家タイプになってはいけない、周囲との協調能力が必要だ、という意味です。

【日常にも、職務にも必要なセルフモニタリング】

 セルフモニタリングをしていないプログラムソースや、セルフモニタリングをしていない言葉や服装などの端々にもそれは自然とにじみ出るものです。たとえば「このドキュメントを見て、みんなはどう思うだろう」「こういうものを作っていて、でき上がったら、それを見てみんなはどう感じるだろう」という類推能力が必要とされるのです。

 たとえどこにいても、何をしていても「こういうことをしていて、みんなはどう思うだろう」という類推能力を働かせてください。仕事だから、単に作ればノルマは達成、さあカネをくれ、オレを褒めてくれ、どうだすげーだろう……では、上司も納得しないでしょうし、対外的な信用も失うことになるでしょう。美しく作る。きれいに、配慮して作る。これは、やっつけ仕事をしているスパゲッティコードな人たちには、到底理解が及ばないとは思うのですが……。

 わかりやすく言えば「自分にアンテナを張る」ということです。しかも、全方位にアンテナを張るのです。アンテナを張って「自分はどう見られているのだろう」ということを意識するのです。足りなければツールや解決手段を用意するのです。プログラミングであれ、HTMLソースであれ、取り敢えず動けばいいや、ではなく「よそさまから見てわかりやすいコードを書く」ことも、必要なことだと思います。

 立ち居振る舞いということを、最近はあまりやかましく言わなくなったような気がするのですが、あなたの性格はあらゆる振る舞い……ウェブサイトに、メールに、プレゼンテーションに、文章に、そしてでき上がった成果物はおろか、その人の立ち居振る舞いや服装、髪型、言葉遣いや態度などにまで表出してきます。

【相手を思い測る類推能力】

 最近は、あまりやかましく言わなくなったこととして、もう1つ。「自分がこう言われたら、相手はどう思うだろう」という、言葉遣いの問題です。同じ意見を言うのでも、紋切り型に言われるのと、慮(おもんぱか)って言われるのでは、同じ意見でも、上司は違う風にとるでしょう。まあ、上司の質にもよりますが、少なくとも「自分が上司だったら、こう言われたら嬉しい」と感じるような言葉遣いを目指すことから始めましょう。

 上に向かって吐いたツバは、やがて自分のところに戻ってきます。上司でない人にでも、たとえば駐車場のおじさんや、定食屋のおばさんにでも、そのような配慮をすることにより、あなたの人格が明日は少しマシになり、決して、数値化できる能力とか、資格とか、学歴とか、カタログスペック的なパフォーマンスなどでは測定不可能な部分で、自分自身の向上に資すると思うのですが、あなたはどう思われますか。

 再三、新渡戸稲造先生の例で申し訳ないのですが、こう言われました。お金を出せば買えるものは幾らでもあるし、お金に困っていない人が、お金を出せば買えるものは多いのですが、ただ1つ買えないものがあります。それは人徳です。店へ行って「10円の徳をくれ」と言っても、どこにも売っていないし、どこかで買えるものでもないので、徳の高い人は、結局得をしているのです、といった趣旨です。

【必殺!! 微笑み返し】

 曹洞宗(そうとうしゅう)の仏教用語で、顔施(がんせ)という言葉があります。わかりやすく言えば「微笑み返し」のことです。「何々さん」と言われて振り向いて「あ~?」と怪訝に振り向くより、にこやかに振り向いた方がいいに決まっています。情報技術者の方たちの中には、ごく少数、この「微笑み返し」ができない方がいます。

 微笑みをするどころか、「オレは大企業の人間で、優秀なんだから、低脳な人間どもに右顧左眄(うこさべん)する必要はない」と威張る人がいますが、そんな人は、メールの書き方1つ取っても、失礼千万な場合があります。中には、着信されたメールを読まずに黙ってデリートする人までいます。他人の揚げ足ばかり取ったりしています。そんな失礼なやからは、微笑みながら「お前さん、うぬぼれなさんな」と言ってあげましょう。

 そんな人は、人としての性能が優秀なのではなく、親に行かせてもらった学校が「たまたま優秀とされているところ」であったり、たまたま入社した「会社や官公庁が優秀なだけ」で、それらレッテルをはがした素の人間として見ると、その人は会社も肩書きもなくした時、果たしてうまくやっていけるのでしょうか。余計なお世話かも知れませんが……。

 結論。どんなときも、イライラ思って煮詰まっているより、ここは社会通念上「にっこり笑ってありがとう」の気持ちですね。昔の人は言いました。「稔った稲ほどおじぎする」。最初からふんぞり返って出世したという人を、残念ながら僕はあまり見聞きしません。どんなに国際化が進んでも、どんなにIT化が進んでも、礼を失することのないよう注意したいものです。

 (思索と模索は続きます……)

Comment(8)

コメント

組長

いやー、大事なことですよね、セルフモニタリング。後輩にも教えたいものです。でも、その前に自分ですが。笑

わたし、人相が悪いんですよ。目が弱いので、ただでさえ一重瞼の平安時代フェイスなのに、お目々をパッチリ開けていられないんです。そして、笑い上戸なくせに、なぜか表情の変化が乏しいので全く怒ってないのに、機嫌悪いように見えたり楽しくなさそうに見えたりするみたいです。気を付けますー。

どうもー。後輩さんに教えてあげてください。「自分がされて感じ悪いなー、と思ったことは、よその人にもしないでね」と。

> 人相が悪い

言わなきゃわかんないのにーw

> 平安時代フェイス

それこそ、そうですね。奥華子か、アンジェラアキみたいな伊達めがねでごまかすのが一番かと。まゆげと口元ぐらいは動くと思うので、がんばれー。

ではでは~。

第3バイオリン

田所さん

はじめまして、第3バイオリンです。

>「何々さん」と言われて振り向いて「あ~?」と怪訝に振り向くより、
>にこやかに振り向いた方がいいに決まっています。

評価の仕事を始めて、仕事を引き受けるときの表情、ものの言い方に気をつけるようになりました。
評価の仕事というのは、開発の都合によって急に仕事が割り込んでくることがよくあります。
時にはあちこちから一度に仕事が入って、まるで売れっ子タレントのようです(人気者は辛いです)。

内心では「もう、みんな勝手さ!」とイラつくときもあります。
しかし、依頼する側も急な仕様変更でドタバタして疲労しているうえ、
評価チームに対して少しばかりの心苦しさを覚えていることはわかっています。
そういうときこそ某居酒屋ではないけど「ハイ!よろこんで」と
笑顔で受けたいと思っています。
そしてできれば、一分の隙もない完璧なレポートをピッと提出したいところですが、
こちらはまだまだ修業中です(汗)。

第3バイオリンさん、こんばんは。プログラムの評価、テストのお仕事をされているようですね。自称コボラーの僕には、とんとついて行けません(^^;)

僕は、体を壊す前に、大阪市内のカスタマーサポート(インバウンド→現地へクルマで赴く→直せないなら持って帰る等々)をやっていたわけなんですが、思わず、京阪京橋の駅で「身体が4つ欲しい!!」と思った時もありましたねえ。案件がバッティングしてまして。

そうですか~。居酒屋ですか~。「通します、評価一丁!!」「評価一丁!! ありがとうございま~す」

プログラムは、僕自身、C言語と、ちょびっとUMLと、Javaアソシエイツレベルのものが作れるだけで、仕事になったら、さぞかし大変でしょうなあ。

ではでは~。

ましゅまろ

こんにちわ。
セルフモニタリング・・・・私ぜんっぜんできていません・・・。
でも、よく”能面”と呼ばれていたので、
気をつけて感情の変化を顔に出すようにしていたら、
イラついた時にも顔に出てしまうように・・・><。

人にされて嫌なことを他人にしない人が増えれば、
きっと満員電車はもっと乗りやすくなるのになぁ~とふと思いました。

大阪の満員電車は、比較的整然と整列乗車がなされています。
(ストリートファイト……つまり、どつき合いを避けるためか)
大阪では、悪に対する反骨精神が強いためか、もしも、ヘッドホン
ステレオがうるさければ「うるさい!!」もしも、脚を広げて
座席に座っていたら「邪魔や!!」と、即座に「喝」が入ります。
こんなに率直なおっちゃんおばちゃんに囲まれている近畿地方は、
ある意味幸せだと思います。

関西地方は、どちらかといえば「IT過疎」ですが(苦笑)

組長

え、でも、関西人のオッサン、オバハンの乗車マナーってひどくないですか?だって、ヤツらは人々がちゃんと並んで降りる人を待っているにも関わらず、堂々と横から入り込んできますし、列なんて存在すら目に入って無いようですけど・・・。若者の方が若い分「まぁ、コイツらは世間知らずなお子ちゃまやから、しゃーないわ」って思えるだけマシな気がする・・・。

えー、少なくとも、朝夕ラッシュ時の、阪急神戸線と、大阪市営地下鉄御堂筋線では、そのようなことはなかったような気がします。

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