「残業課長」スピンオフ　ラブライフハック企画『アットマークX'mas－久実チヨ編－』（1）

人間関係

» 2009/12/20

　クリスマス特別企画・ IT業界の恋愛模様を描く集中連載。 ITエンジニアたちよ、恋愛していますか？ 12月20日から12月24日まで、毎日更新！

◆なんかはじまり　

　こんにちは。お久しぶりです、久実チヨです。お元気でしたか？ わたしは相変わらず、元気にやってますよ。今日は「ワークライフバランス推進委員会」が企画した、社員の子供たちによる職場見学会「子供の参観日」を実施しています。

　普段、帰宅が遅かったり、休日出勤で家にいないお父さんやお母さんが、会社でどのような仕事をしているのか子供たちに見せたり、社員や子供同士の交流を通して「ワークライフバランス」の大切さを実感してもらうのが狙いですが、これからの未来を担う子供たちにＩＴを知ってもらおうという社会貢献にもなるし、一石二鳥かな。我ながら、良い企画😃

　「お姉ちゃん、ショッカーやってー！！」

　無茶ブリされて目を白黒させている森村さん。1カ月前から我が社出向してくれているプログラマさんです。22歳だって！ わ、若い……。どうりで鬼の鋼野部長が優しいわけだ。やっぱり若い子の方が素直でかわいくて良いもんね。まぁ、森村ちゃんは年齢に関係なく、すごく素直で一生懸命な良い子だけど。そんな森村ちゃんの代わりにショッカーをやって子供たちと遊んでたら、背後でクスクス笑い声が……。

　「泣く子も黙る久実部長がショッカーかよ。」

　な、何よっ。そっちこそ、鬼の鋼野部長が5歳児相手にパパごっこ？

　「……」

　「……」

　「あ、あのー、チヨ姐さんっこっちお願いしますっ！」

　険悪なムードを切り裂くように、慌てた感じで駆け寄って来た紅サラちゃん。どうやら、日須さんのお子さんが転んで怪我しちゃったみたい。鋼野部長に背を向け、泣いてる子供の元へ。

　運用本部でサーバが並んでる様子にはポカンとしていた子どもたちだけど、開発部に来て森村ちゃんや朝田君が即興で作ったプログラムには興味津々。うんうん、わたしがヘルプデスク研修に出てた時に初めて「Hello　World」をやった時も感動したなぁ。あの時の講師は和久原課長と……。

　「ってことは、5歳の子供と同じレベルで感動してたってことか。ははっ」

　おだまりっ！……て、また鋼野部長じゃない。そうそう。鋼野部長が研修の企画者だったんだっけ。和久原さんの厳しい研修はついて行くのが大変だったけど、部署が違うから質問しに行けないし、同じ部署だった鋼野部長（当時は主任）を、よく休み時間に捕まえて補習してもらってたなぁ。……っていうか、何なの今日は。やたら絡んで来ちゃって。いちいち、こっち来ないで森村ちゃんや子供達と遊んでなさいよっ。

　「久実さーん、時間大丈夫ですかね。」

　内心プリプリしてたら朝田君が。ああ、もうそんな時間。普段はあり得ない時間だけど、フレックスだし今日は特別な日だから、ドサクサにまぎれて帰っちゃうの。じゃあ、朝田君そろそろ行こっか。せっかく早く出るのに遅れたら最悪だもんね。

　「今日は良番だから、最前確実ですよね！」

　そうそう！ うひひひ。楽しみー。ってニヤニヤしてたら、

　「……おい。2人でどこ行くんだよ。」

　訝しげな顔で聞く鋼野部長。まだいたの……。今日はライブなんだー😍フレックス使って早く帰るの。

　「ライブ？！ お前、ライブなんか行くのか？ 聞いたことないぞ、そんな話。」

　「……『お前』？」

　ちょ、ちょっと！ 今、『お前』って言った？『お前』って！！ 朝田君が不思議そうな顔してるじゃない！ 困るわよ、急に。じゃ、じゃあ、鋼野部長、後はよろしくお願いしますっ。今日はちょっと用事で早く帰りますので！

　何とかビジネスライクに言い残し、怪訝な顔の朝田君と共にダッシュで退社。急がなきゃ！ 何のために今日まで残業やら早出やらで帳尻合わせて来たんだか！

　「あー！ 今日も最高だったっ！ 暴れた、暴れた。あ、こんなところに青タンできてる」

　「く、久実さん今日はいつになく大暴れでしたね。ボク、着いて行けませんでした」

　もうっ。これだから草食男子はー。さ、飲みに行くぞー。

　「あのー、こんばんは。」

　おぉ、森村ちゃんじゃない！ 今日はお疲れ様でした。ショッカーごっこ大変だったね。ありがとう。これから朝田君と飲みに行くんだけど一緒に行く？……あ、ドラマ見るの。残念。また女子だけで行こうねっ。

　森村さんと別れて朝田君と共にいつもの飲み屋へ行った帰り。スクランブル交差点にて。

　「あの、も、もうすぐクリスマスですねっ。なんか予定あるんスか？」

　ないわねー。わたし、実家の都合で25日からひと足早く休暇に入るから、イブは仕事かな。その後は多分、いつものメンバーで呑みに行くかも。運用本部の川場田アイちゃん、開発の紅サラちゃんと森田姫子ちゃん、テストチームの梅尾リンちゃんも誘うおうかな。あ、森村ちゃんも誘うし、朝田君も一緒に来る？

　「いえ、ぼ、僕は久実さんと一緒に過ごしたいんですっ！ 好きな人と一緒に過ごしたいんですっ！！」

　へ？？？ い、今、何て言ったの！！？？

　「久実さん、彼氏いないなら、ぼ、僕と付き合って下さいっ！」

　えーーーー！！ や、あの、朝田君が真剣なのはすごく分かるんだけど、いきなり過ぎてどう答えたら良いのやら……。告白とか久しくされてないから、ビックリしちゃった。

　あ、朝田君、あの、ありがとう。すごく嬉しい。でも……ごめんね。

「そ、そうですか……😱」

　ごめん。朝田君のことはやっぱり、わたしにはかわいい弟分としか思えないんだ……。わたしみたいな行き遅れかけてるオバサンより、もっと年の近い若い子が良いよ。あの……じゃあ、また、明日会社でね。

　駅へ向かいながら、何となく物悲しい気持ちに。別にションボリする必要ないのに、妙にションボリしちゃうな。いつもは、独り身が気楽で楽しいけど、こういう時って誰かにいて欲しくなるよね……。

(つづく）