372.『葬送のフリーレン』から学ぶビジネススキル(12)
初回:2024/07/10
『葬送のフリーレン』を、1話づつ振り返りながら、ビジネス的な考え方を伝えていこうという企画です。
今回は、第12話 『本物の勇者』に基づいて話そうと思っています。
P子「『剣の里』と『服だけ溶かす薬』編ね」※1
#12 本物の勇者
あらすじ
https://frieren-anime.jp/story/ep12/
1.じゃあ本物になってやろうじゃないか
雪の降る中、フリーレンが寝てしまった。フリーレンは、80年前の勇者一行が王都を出発した当時の夢を見ていた。
「結局、王様は銅貨10枚しかくれなかったな」とアイゼンが言うと「無理もありませんよ。今まで多くの勇者が旅立ち、魔王の討伐に失敗してきたのですから」とハイターも答えた。「まぁ地道に討伐依頼をこなして、路銀を稼ぐのもいいじゃないか。冒険らしい」とヒンメルも"勇者の剣"を見つめながら答えた。
ヒンメルのもつ"勇者の剣"はレプリカで、昔行商人を魔物から助けた時にお礼でもらったものだった。フリーレンが「それが勇者になったきっかけ?」と問うと、「いいや、村の孤児院にハイターって、ムカつくヤツがいてね。偽物の剣しか持っていないから、偽物の勇者にしかなれないと僕に言ったんだ。じゃあ本物になってやろうじゃないか。そう思ったんだ」とヒンメルが答えた。
『剣の里』では、49代目の里長ちゃんが出迎えてくれた。
「ここが剣の里か。勇者の剣を守っていた里だ。この里の近くの聖域には、女神様が授けたとされる勇者の剣が刺さっていたんだ」「その剣は、歴史上のどんな英雄たちが引き抜こうとしても微動だにしなかった。80年前まではな」とシュタルクが説明すると、「その剣を引き抜いたのが、ヒンメル様なのですね」とフェルンが応じた。しかし、フェルンはその話をハイターからは何も聞いていなかった。
翌日、魔物退治に向かった3名で、多数の魔物を討伐した。シュタルクが「里が近いってのに魔物だらけだな」というと、フェルンが「こんな状況なのに、どうして他の冒険者に討伐依頼を出さなかったのですか」と問うと、「出したいのは、やまやまだったのですが」と里長が答えるた。「ヒンメルは英雄だからね」とフリーレンがフォローした。洞窟の前に多数の魔物が残っており、さらに魔物の主が現れたが3名の連携で主を打ち取ることに成功した。シュタルクが洞窟の中を見て「フリーレン、こいつはどういうことだ。あれは勇者の剣だ」。洞窟の中には勇者の剣が刺さったまま残っていた。「ヒンメルは、この剣を抜けなかったんだ」とフリーレンが答えた。
P子「フェルンが"勇者の剣"の話を聞いてなかったのも、里長が魔物討伐を他の冒険者に依頼を出せなかったのもこれ原因なのね」
『葬送のフリーレン』の良い所は、勇者ヒンメルの生き方、考え方が前向きでまっすぐな所だと思います。話の中で、フリーレンがヒンメルを思い返す都度、ヒンメルの良い面が現れてきます。これが魔王討伐の成否が不明な物語なら、あまっちょろいパーティーだなという印象を受けるところですが、結果を出しているだけに、こういう生き方って、本当に素晴らしいと思ってしまいます。いや、魔王討伐がかなわなかったとしても、それまでの旅の中で十分に人助けができているので村や町の人々にとっては『勇者』だったのではないでしょうか?
さて、仕事を行う中で、資格がないとできない仕事と資格がなくてもできる仕事があります。
P子「前回の『聖杖の証』のお話の時にも出てきた話題ね」
エンジニアの場合は、資格がなくてもエンジニアと名乗ってよい仕事は多数あります。偽物とは言いませんが、エンジニアの能力を見るのは非常に難しいという事にもつながります。また、エンジニア自身も、どれくらい研鑽すればよいのかも自身に任されていると言えます。実際、ある程度の能力があれば、後はエンジニアではなく管理者としての仕事に従事することも可能ですし、残念ながら、ちょっと秀でたレベルのエンジニアより、普通のエンジニアが管理者として仕事をする方が給料も上です。
もちろん『本物のエンジニア』という定義がないので、どういうエンジニアを目指すのかは本人次第ですが、そういう自分の目指す『本物』に少しでも近づければ、仕事も楽しみながら行えるのではないかと思っています。
2.頑張ったものは、みな戦士だ
剣の里での魔物討伐を追え、町にやってきた3名が、それぞれ自由行動となった。フリーレンは宿屋でゆっくり魔導書を読むことにしたので、フェルンが一人でお店とかを見て回ろうと考えていた。
するとフリーレンが「あ、そうだ。今日はシュタルクの18歳の誕生日だから」と突然言い出した。「私、何も準備していませんよ」とフェルンが言うと、フリーレンは「この町で、何か買えばいいじゃん」とあっさり答えた。「シュタルク様の欲しい物が分かりません」「ふっふっふ、フェルンは詰めが甘いね」「フリーレン様のせいなんですけど。ちなみにフリーレン様は、何をプレゼントするつもりなんですか」とフェルンが問いかけると、ベッドから飛び降りたフリーレンが魔法のカバンの中から一つの瓶を取り出した。
「服だけ溶かす薬。男ってのはね、こういうの渡しておけば喜ぶんだよって、師匠が言ってた」とフリーレンが自慢げに答えた。
フェルンが黙ってその瓶を取り上げるとフリーレンにぶっかけた。「この下品な薬、買った時に私「返品しろ」って言いましたよね」とフェルンが静かにブチ切れながら「フリーレン様なんて知りません」と部屋を出ていった。フリーレンが魔法のカバンをかたずけながら、何かメモを見つけた。
P子「旅立ちの時にも見ていた指輪が見えたわね。こういう細かい演出が好きなのよね」
フェルンがシュタルクに直接欲しいものを聞こうと尋ねるも、部屋にはいなかった。そして町でシュタルクの足跡を追うと、至る所で子供たちと遊んだり人助けを行っていることにフェルンは気づかされた。ついにシュタルクを見つけたフェルンが少し歩きながら「シュタルク様、何か欲しい物とかありますか」と尋ねた。シュタルクが「何で?」と答えると、フェルンが「今日が、シュタルク様の誕生日だからです」「そうだっけ。それと欲しい物に何の関係があるんだ」「シュタルク様の誕生日プレゼントです」「え、何かくれんの?」とシュタルクが余りにもそっけなく答えたので「やっぱり、何かムカつくからあげない」とフェルンが少しすねた。
「いやふざけていたわけじゃなくて、俺、誕生日にプレゼントとかもらったことがないんだ。死んだ故郷の家族からも、師匠からも、もらったことがないから、そういうもんなのかと思っていた。俺の故郷は戦士の村でさ。弱いヤツの居場所なんかなかった」とシュタルクが少し寂しそうに答えた。
2人が買い物から帰るとフリーレンはバカみたいにデカいハンバーグを焼いて待っていた。フェルンが驚いていると、シュタルクは「誕生日といったらこれだろ。師匠もプレゼントはくれなかったけど、誕生日のハンバーグだけは作ってくれたな」と懐かしそうに答えた。「どういうことですか」とフェルンが問うと、フリーレンが「シュタルク。アイゼンから聞いてないの?」。シュタルクは「何が?」と全く知らない感じだった。「戦士ってのは不器用だね」とフリーレンが言うと「フリーレン様がそれを言うんですか」とフェルンが突っ込んだ。フリーレンは昔アイゼンが言っていた言葉をシュタルクに伝えた。「これは俺の地方の風習でな。精一杯頑張った戦士を労うための贈り物だ。俺からの誕生日プレゼントみたいなもんだ。頑張った者は、皆戦士だ」
P子「今回は、物語の説明が長いわね」
結論に至る過程がないと、判りにくいかなと思いました。
さて、『本物のエンジニア』を目指して、日々頑張っている皆さんは、みな戦士です。
P子「ある意味、色々な事と戦ってはいるわね」
ここでは勝った負けたという結論ではなく、精一杯頑張ったかどうかが問われています。
最近、思う事があります。時代の流れが速く情報の伝達も早いので、結果も早く求められるようになってきました。昔のように10年、20年先を見ても、数年先が読めない位、時代の移り変わりが早いので結果を早く求められるというのは理解できますが、その結果、『結果だけが重視』される風潮になってきている気がします。
P子「プロセス自体も、いかに早く結果を出せるかという方向に進んでいるものね」
もちろん『結果は重要』でそれに向けて精一杯がんばってはいるのですが、その方向性が少しずれている気がします。結果に至るまでのプロセスにも気を配って、楽しみたいと思います。
P子「辛く苦しい仕事より、終わった後にくだらなかったと笑い飛ばせるような楽しい仕事がしたいのよね」
本当にくだらない仕事もあるので、一概には笑い飛ばせない事も多いんですけどね。
3.まとめ
本物かどうかは、成し遂げた結果で判断されます。ただしその結果も、目的のための一直線の結果ではなく、その間のプロセスで行われた過程で現れた、いわば副産物みたいなもので判断されるのではないのでしょうか?
ヒンメルが魔王討伐という結果だけを求めて旅をしていたとしたら、勇者としてこれほど多くの人達からの称賛を得られなかったのでしょう。シュタルクが町の人達の助けをしていたように、身近な人たちを助けたからこその勇者だったのだと思います。
同様に、エンジニアの仕事でも結果は大切ですが、そこに至るプロセスでの行動も大切だと私は思っています。
ほな、さいなら
======= <<注釈>>=======
※1 P子「『剣の里』と『服だけ溶かす薬』編ね」
P子とは、私があこがれているツンデレPythonの仮想女性の心の声です。