今、話題の人工知能(AI)などで人気のPython。初心者に優しいとか言われていますが、全然優しくない! という事を、つらつら、愚痴っていきます

177.【小説】ブラ転21

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初回:2021/9/1

 ブラ転とは...
 『ブラック企業で働く平社員が過労死したら、その会社の二代目に転生していた件』の略

1.技術課題

 早坂さんとの技術部へのヒアリングの後、社史編纂室に戻った私(杉野さくら)達は、ヒアリングの内容を整理することにした。

「内容を整理するって、私よく分からないですけど...」

 実際、話は聞いていたが内容は理解出来ていなかった。

「リーダー、お願いしますよ~」

 早坂さんが冗談交じりに答えた。

「取りあえず私の理解の範囲で説明しますね」

 早坂さんがどこから持ってきたか判らないホワイトボードに書き出した。多分、社史編纂室...実際は総務部の倉庫のある建屋なので、どこかにしまってあった備品だろう。ただ、だいぶ古びた感じだったので、破棄予定の品だったのかもしれない。

 ・クラウド対応が必要なのか?
 ・社員証のRFIDは機械への巻き込み防止のために使えない
 ・監視カメラの顔識別の方法
 ・サーボモータの駆動用の電気回路設計

 ・そもそも需要があるのか?

 早坂さんが書き終えた後に、最後の一文を私が書き込んだ。

「勤怠管理システムって、需要はあるけど、儲けは少なそうだね」

「私はシステムの事は判らないんですけど、勤怠管理は人事や給与システムと連携しておかないと、使い勝手がよくない気がします」

「そうなると、総合的に対応する必要があるから、導入まで持って行くには知名度とかが重要になるだろうね」

「だとすれば、勤怠管理システムでサクッと外販って訳にはいかなさそうねえ」

 私が言い出した事とはいえ、ちょっと単純すぎたかな?

「まあ、技術部へのヒアリングも別に無駄ではなかったので、これはこれでよかったと思うよ」

 早坂さんが珍しくフォローしてくれた。

2.新商材の模索

「でも、このままじゃ、君の給料がベーシックインカム分だけになってしまうだろ」

「ほんとですね」

 私としては、実際は技術部の事務職も兼務しているので、ベーシックインカム分だけじゃなかったが、一応気にかけてくれているみたいで少しうれしかった。

「何かあてでもあるんですか?」

「酒の肴でも探しているような言い方だね」

「ちゃちゃを入れないでください。私のお給料がかかってるんですよ」

「ああ、そうだったね。おいしいもの食べたいよね」

「それじゃ単なるくいしんぼうじゃないですか。他にも使い道はありますから」

「なら、早く考えないとな...」

 そういって早坂さんは椅子に座った。

「技術者としては、あまり商売の事は考えたくないんだけどなぁ」

「でも、専属エージェント契約って、一人経営者って事でしょ」

「でも、本当の一人じゃ出来ない事を、会社のリソース...つまり『人・物・金』を利用して実現しようという話なので、商売が苦手なら、商売が得意な人に考えてもらえばいいんじゃないかな?」

「どういう事?」

「例えば、ニーズ(要求、需要)が判らないなら、シーズ(種。転じて商品やサービス開発の素となる技術やノウハウ等)を提示して、それを使ってみたいという人とコラボレーションすればよいんじゃないかなと思うんだ」

「社内から探すという事ね」

「いや、何もしなくても、ベーシックインカム分があるから、オープン化して社内・社外に関係なく探せばよいと思うんだ。ただ、まずは社内からの反応を見たり、フィードバックを頂くとはか、社内からの方が、より質の高い情報が得られるかもしれないかもね」

「じゃあ、シーズの探求ね。で、方針は?」

「まだ、何も考えてないよ」

「そんなことだと思ったわ」

3.シーズの探求

 「とりあえず、先に上げた技術課題って言うのは、勤怠管理システムだけに言える事じゃなくって、色々な所で出てくる要求事項だと思うんだ。それに、すでに他社では技術的に行われていて、私たちが一歩も二歩も遅れている分野なんだ」

「それって、シーズじゃなく、単なる後追いじゃないの?」

「後追いだけど、追いかけないと、ますます置いてきぼりになると思うよ」

「そら、そうね。で、どうするの?」

「どうするどうするって、リーダーも考えてくださいよ」

「私にどうしろと?」

「例えば、杉野さんが一番興味を持った事から...とか?」

 私は、早坂さんが書き出したホワイトボードの課題を見直してみた。クラウド、RFID、監視カメラ、サーボモータ...どれも関連性がない。

「どれも関連性がないと思います」

「あ、そうか。僕は現場端末として『ラズベリーパイ』を想定していたからね」

「ラズベリーパイ...って、何?」

「名刺サイズのワンボードコンピュータ...ていえばわかるかな」

「名刺サイズ...つまりマイコンみたいなもの?」

「マイコンって、ポットとか炊飯器とかの電化製品に組み込まれている物で、ラズパイはOSも実行できて、キーボードやマウス、ディスプレイを接続すれば、ちょっと性能の悪い一昔前のコンピュータという感じかな」

「へえー...よく分かんない」

「じゃあ、予算取って購入しようか?どうせなら、RFIDやカメラも一緒に購入しよう」

「予算ってあるの?」

「うまく申請すれば経費精算である程度は購入可能って、二代目がおっしゃってたような気がするよ」

「じゃあ、選定の方、お願いするわね」

======= <<つづく>>=======


 登場人物
 主人公:クスノキ将司(マサシ)
     ソフト系技術者として、有名企業に入社するも、超絶ブラックで
     残業に次ぐ残業で、ついに過労死してしまう。そして...
 婚約者:杉野さくら
     クスノキ将司の婚約者兼同僚で、OEM製品事業部に所属。
 秘書部:山本ユウコ
     二代目の秘書で、杉野さくらのプロジェクトに週2で参加している。
 社史編纂室:早坂
     妖精さん。昔は技術部に在籍していたシステムエンジニア。

 社長兼会長:ヒイラギ冬彦
    1代でこのヒイラギ電機株式会社を大きくした創業社長。ただし超ブラック
 姉:ヒイラギハルコ
    ヒイラギ電機常務取締役。兄に代わり経営を握りたいが、父親の社長からは
    弟のサポートを依頼されている。もちろん気に入らない。
 二代目(弟):ヒイラギアキオ
    ヒイラギ電機専務取締役。父親の社長からも次期社長と期待されている。
    実はクスノキ将司(マサシ)の生まれ変わりの姿だった。

 ヒイラギ電機株式会社:
    従業員数 1000名、売上 300億円規模のちょっとした有名企業
    大手他社のOEMから、最近は自社商品を多く取り扱う様になった。
    社長一代で築き上げた会社だが、超ブラックで売り上げを伸ばしてきた。



スピンオフ:CIA京都支店『妖精の杜』

 ここはCIA京都支店のデバイス開発室。安らぎを求めて傷ついた戦士が立ち寄る憩いの場所、通称『妖精の杜』と呼ばれていた。
 P子:CIA京都支店の優秀なスパイ。早坂さんにはなぜか毒を吐く。
 早坂:デバイス開発室室長代理。みんなから『妖精さん』と呼ばれている。

 P子:「今更ラズパイってないんじゃない?」
 早坂:「話の流れに収拾がつかなくなってきてるんだよ、きっと」
 P子:「じゃあ、そろそろ打ち切りね」
 早坂:「まあ、飽きっぽい性格だから、仕方ないかもね」
 P子:「スピンオフもネタ切れっぽいし」

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