今、話題の人工知能(AI)などで人気のPython。初心者に優しいとか言われていますが、全然優しくない! という事を、つらつら、愚痴っていきます

P41.新組織(9) [小説:CIA京都支店2]

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初回:2020/07/29

登場人物

これまでのあらすじ

 Mi7滋賀営業所の山村クレハと、CIA京都支店の川伊(P子)は、共同で新会社を設立した。佐倉部長が用意した新築のオフィースビルで、それぞれのフロア割も決まり改装工事の目途も立った。今回の見学ツアーは順調に終了したのだった

20.業務内容

 新オフィースビルの見学会も無事に終了し、P子と山村クレハのMiracle Communication Systems(ミラクルコミュニケーションシステムズ)の出だしは順調だった。代表取締役の山村クレハとP子は、新会社の業務内容を決めるために、会議を行う事になった。会議と言ってもWeb会議だったので、参加者はこの間、見学ツアーに参加したメンバーで行われた。CIA京都支店の会場はデバイス開発室で行われていた。

「ちょっと狭いんじゃないの?」

 P子が若干嫌がった。この場所を選んだのも機器のセッティングを行ったのも早坂室長代理だったので、半分だけは感謝していたので、大っぴらには反対できなかった。

「まあ、いつもは僕と室長代理の二人だけの所に、P子先輩が一人増えただけですよ」

 城島丈太郎が早坂室長代理をフォローした。P子は、丈太郎が室長代理にスパイグッズを用立ててもらっている事と、SES業務のアドバイスを時々受けていることは知っていたが、それでも少しだけ嫉妬心のようなものを感じていた。配属された時の指導者として、彼が独り立ちしていることに対しての寂しさだったのかもしれない。

『もう、参加してもよろしいでしょうか?』

 小型のスピーカーから、山村クレハの声が聞こえた。ディスプレイには、人型のイメージが表示されているだけで、顔は見えなかった。

『ごめんなさいね。カメラが見つからなくって...』

 P子も丈太郎も理由は判っていた。たとえ会議室と言えども、部屋の様子や備品などは、カメラで映したくないのだろう。

一言言って頂ければ、お貸ししたんですけど

 早坂室長代理が言った。彼自身はスパイではなかったが、彼ら、彼女らの職業については理解しているハズだった。なのでこの言葉が本気か嘘か、P子には理解できなかった。と言うのも今回のWeb会議をセッティングするにあたり、海外サーバーを何台か経由させてお互いの事務所のネットワークを接続しているので、画像を送ると反応が遅くなる事を知っていたからだ。

「そもそも、お互いの事務所の住所を知ってるのに、ネットワークだけ海外経由にする必要性ってあるの?」

 P子が早坂室長代理に問いかけた。

ロケットランチャーとか打ち込まれたら、警察とかが動くからやらないだろうけど、ネットワーク攻撃なら、される可能性があるでしょ

 早坂室長代理は真顔で答えた。この言葉も本気か嘘か、P子には理解できなかった。

『もう、初めていいんですか?』

 この声は、浅倉南だった。いつまでも不毛な会話が続くのが時間の無駄に思えたのだろう。

「ごめんなさい。じゃあ、始めますか」

 P子が仕切り直した。

「さて、警視庁公安部の仕事を受けるのは、たぶん裏の業務になると思うんですけど、受けやすくするための表の仕事も必要でしょう。うちはSESですし、Mi7さんは人材派遣と人材紹介業務ですけど、許認可が必要だし、やはりSESでしょうか?」

『まあ、普通に考えればそうなんだけど...』

「南さん。何か、いいアイデアあります?」

『いいかどうかと言われるとちょっと何ですけど、探偵業なんてどうです?』

「スパイの表の仕事が探偵ですか?」

 丈太郎が(「どうなんだろう」)と思いながら答えた。

それ、面白いかも...。裏でスパイグッズ作って、表で探偵道具作って、大手を振って販売してもいい?

 早坂室長代理が言った。

「室長代理は、CiA京都とMi7滋賀と両方に販売しようとしてます?」

 丈太郎が(「案外行けるかも」)と思いながら答えた。

「即答は出来ませんけど、候補の一つとしてあげておきましょう。他にあります?」

 P子が司会進行を進めた。

「コンサルタント業なんてどうです?あれって、適当に何か言ってお金貰える楽な商売でしょ」

「丈太郎君、コンサルタントの人に暗殺されるわよ」

「うちとこでコンサルタントして、実装をCiA京都とかMi7滋賀に依頼すれば親子逆転できるんじゃないですか?」

「あなた、CiA京都の人達をこき使おうって思ってるんじゃない」

「そんなことは無いようなことは無い感じもしないでもないかもしれないこともないかも...」

「でも、実装部隊を持たないんだから、コンサル的な動きで仕事を取ってくるのはありかもね」

『なら、営業もやってみない?』

 スピーカーから、クレハの声が聞こえた。

『お客様の困りごとをヒアリングして、場合によってはコンサルを紹介...つまりここね。場合によってはSEを紹介...つまり、CiA京都とかMi7滋賀ね。場合によっては実装まで受け持つって感じ』

「コンサルティング営業ってことですか?」

『それに、Mi7滋賀には人材紹介や人材派遣の人員として、フリーランスの方々もたくさん待機しているの。その人達もコンサルできる人もいるし、仕事を回せればバンバン受注を取ってこられるわよ』

「そんなに受注取ってこられないですよ」

「あら、丈太郎君、弱気ね」

 P子はからかった。この会社の最大の強みはバックにCiA京都とMi7滋賀という実行部隊を抱えているという事。これは非常に心強い。どちらも半数以上の人材は本物のSEだし結構優秀な人材が揃っている。経営的には裏稼業があるので無理な受注は行っていないし、場合によっては発注元の恐喝材料を入手してから、価格交渉を行っているので、やり方はブラックでも社員にとっては非常にホワイトな会社なので、優秀な社員が集まるという環境だった。

『探偵業はどうします?』

 クレハが浅倉南に気を使ってか、最初の提案を持ち出してきた。

『もう、いいわよ』

 浅倉南も、クレハの気遣いに最初の提案を引っ込めた。南としてもコンサルティング営業なら、Mi7滋賀のメンバーに仕事を回せるし、裏稼業のターゲット企業に堂々と営業活動の名目で潜入できる。

え~、探偵グッズの販売はどうするんですか? コンサルタント探偵も、やりましょうよ

 早坂室長代理が言った。早坂さんとしては、探偵グッズの販売をメインにデバイス開発室をひとつの部署に格上げしたいようだ。なにせ、社員は早坂室長代理ただ一人だったから。

『その提案、嬉しいけど、もういいわよ』

 浅倉南は、自称シャーロキアンなので、スパイになった。どうせこちらの仕事は兼務と言う事だったので自分の好きなことが出来れば御の字だった。専任のクレハにしてみれば、優秀な浅倉南をこちらをメインに活動してもらう方が助かるし、好きな事をしてもらえるなら、専任として来てもらえるかもしれない。でも、早坂室長代理の方が結構乗り気の様だったので、案外行けるかもしれない。

「まとめてもいい?」

 司会進行役を買って出たP子が、頃合いを見計らってまとめに入った。

「メイン業務はコンサルティング営業とします。さすがに犬猫の捜索や浮気調査を受けるのは出来ないので、探偵業は残念ながら出来ません。コンサルティング営業と並行してIoT機器の設計・製造も視野に入れます。これは裏ではCiA京都とMi7滋賀へのスパイグッズの提供・販売と、表ではコンサル業務で出てきた課題解決に必要な機器の調達を含みます。こんな所でどう?」

『それで行きましょう』

 真っ先に浅倉南が答えた。たぶん、探偵業を発案した負い目から、即答したに違いない。少し間があって、クレハも賛同してくれていることを伝えてきた。

「僕たちも、オッケーですよ」

 丈太郎は、早坂室長代理と顔を見合わせた後で、そういった。

「所で、早坂室長代理の言葉が聞き取りづらいんだけど、マスクのせい?」

 P子が疑問をぶつけた。

「最近、コロナの関係で、話が長いとか理屈っぽいのが嫌われるって言うんで、腹話術で口を開けずに話す訓練をしているそうなんだ」

 丈太郎が説明した。理屈っぽいのはコロナじゃなくても嫌がられるんじゃない?って、P子は思った。クレハは本当にこの人達で大丈夫なんだろうかと疑問に思った。浅倉南はコンサルタント探偵に賛同してもらえたので、早坂室長代理は悪い人ではないと感じていた。

 それぞれの思いが交錯する中、新会社の業務内容も決まり、Web会議は終了した。

======= ≪つづく≫ =======

 この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありませんが、あなたの知らない世界でこのような事が起こっているかもしれません。

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