今、話題の人工知能(AI)などで人気のPython。初心者に優しいとか言われていますが、全然優しくない! という事を、つらつら、愚痴っていきます

P18.黒と白(1) [小説:CIA京都支店]

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初回:2019/08/07

登場人物

これまでのあらすじ

 CIA京都支店のP子は、Mi7の浅倉南や山村クレハと時にはライバル、時には共同で任務にあたっていた。佐倉ななみとともに大阪のMITに派遣されていたが無事任務も終了した所だった。そんな時、城島丈太郎とともに CIA京都支店長に呼び出されたのだった。

1.新たな任務

 先月までの派遣業務が終了して暇を持て余していた城島丈太郎ではあったが、仕事がなかったわけではない。派遣業務がない間は、社内システムの改修か請け負い物件の「持ち帰り」対応を行うのだが、急なスパイ任務で派遣されることもある為、どちらの作業でもプラスアルファの余剰人員扱いになっていた。
 つまり、メイン業務には割り当ててもらえなかったので、結果として暇を持て余しているように見えたのだった。

 P子も、佐倉ななみ課長の給料問題を解決したため、派遣業務から解放されていた。CIAからMITにプログラムのソースを納品(実態は佐倉課長自身のコピー)する代わりに、MITからCIAに開発委託費が支払われる。
 その一部をP子の給料としてP子の口座に支払う事になった。P子の給与口座は本来の口座とは別に振込用口座が開設され、それが、佐倉課長の給与口座として利用される事になった。

 当然、その口座へのアクセス権はP子には無かった。

 この別口座の方式は、本来の戸籍が一つしかない双子スパイの上杉タツヤとカツヤのやり方と同じだった。
 名目上のP子の給与が増えるので所得税や住民税も増えるのだが、佐倉課長は増額以上の金額を口座利用料としてP子に支払っていた。

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 P子の席の電話が鳴った。珍しい事で、普段は業務用の携帯スマホにしかかかってこない。

(「P子ちゃん、城島君を連れて、来客用会議室まで来てちょんまげ」)

 京都支店長の声だった。

 P子は丈太郎に連絡を取ろうと、携帯を取り出した。

「あ、あれ?」

 バッテリー残量がなくなっていた。

『ごめんなさい』

 ポシェットから佐倉課長の声が聞こえた。

「また、何か私の携帯を使って、実験でもしていたの」

 P子は(仕方ないわね)と言った表情を浮かべて、携帯を充電器にセットした。

「何ですか、P子先輩」

 P子のポシェットから丈太郎の声が聞こえた。佐倉課長が、丈太郎に連絡を取ってくれたのだった。

「支店長が来客用会議室まで来てって言ってるけど...あなた何かヘマした?」

「え、いえ、あっと、たぶん無いと...判りません」

 先ほどの支店長の様子だと、お叱りと言うより新しい任務の依頼の様だった。P子はそれを承知で丈太郎を少しだけからかっていたのだった。

2.突然の来訪者

 2人が来客用会議室に入ると、支店長が見知らぬ男性と一緒に待っていた。

「2人に紹介しないといけないな。こちらは黒井工業技術部長の新田さん」

「初めまして。川伊と申します」

「初めまして。城島と申します」

「まあ、まあ、固い挨拶はそこまで。2人にお願いと言うのは黒井工業と白井産業の両方に分かれて潜入してもらいたいんだ」

「どういう任務でしょうか?」

 P子が支店長に聞いた。

「後は、新田ちゃんに聞いて」

(「お客様にちゃん付けは無いでしょ」)

 P子は笑顔で"新田ちゃん"の方を見た。

「実は、うちの黒井工業の黒井社長と白井産業の白井社長が裏取引してるようで...」

「それを探って証拠を見つけろと?」

 丈太郎が口を出した。

「まあ、そんなところですが、何を裏取引しているのか、その方法も判りません。そもそも、その裏取引が合法か違法かもわからないんです」

「そんな調査に依頼料を支払うというのですか?」

「今、技術部門で取り組んでいる新商品は、白井産業でも取り組んでいるはずの商品です。若い技術者も真剣に取り組んでいるんですが、その取り組み自体が徒労に終わると多分会社を辞めると思うんです。それを避けたいんです」

「でも、技術部長のあなたにも何の情報も降りてこないという事は、その新商品とは無関係なのでは」

 P子が新田さんに聞いた。

「だからこそ、怪しいと思ったんです」

(「それも一理あるわね」)

「それと、そもそもあの二人は犬猿の仲のはずなのに、おかしいんです」

「と言いますと...」

『ちょっと、大変よ』

 突然、ポシェットの佐倉課長が訴えてきた。ほとんど同じ時に、部屋の外で(「お待ちください!」)という事務員の声が聞こえた。(「どこ?きっとあそこね」)(「いや、会議中ですから...」)

 来客用会議室のドアが開いた。そこには普段の優し気な顔をした彼女ではなく、殺気立った面持ちの"浅倉南"が、ほとんど仁王立ちと言った感じで立っていた。

「新田部長、どういう事でしょうか?」

「君、失礼...ジャマイカ」

 京都支店長が、毅然とした態度...ではなく、笑顔で浅倉南を招き入れた。

≪つづく≫

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