レインメーカー (1) 入社式と騒乱
◆アリマツ通信 2021.4.1
入社式
昨年度はコロナ対策のため中止となった入社式ですが、今年度は万全の感染対策を施した上で実施されました。
今年度の新入社員は例年より多い10 名。それぞれフレッシュな抱負を熱く語っていただきました。
新入社員のみなさんの自己紹介はここから。
また、4.1 付けで新設されたDX 推進室に配属される中途採用の方2名も、合わせて入社式に参加されています。アリマツの今後にとって重要な部門と社長が明言していることもあり、またCC ユニット以外では、久しぶりの新部門ということもあって、お二人の挨拶は大きく注目されていました。
DX 推進室配属の田代さん、朝比奈さんの自己紹介はこちらから。
撮影・文 総務課 土井
「......続いてDX 推進室DX 推進ユニットに配属となる2 名の方から挨拶をいただきます。最初に朝比奈イズミさん、お願いします」
はい、とややかすれた声で答え、イズミはパイプ椅子から立ち上がった。緊張で口の中がカラカラだ。出勤初日ということで、めったに着たことのないパンツスーツを選んだことが悔やまれる。ここ数年、自分自身と周囲の世界に降りかかった様々なマイナス要因が、イズミの体重に関しては真逆に作用していた、ということに思い至らなかったのは誰の責任でもない。
受け取ったばかりの辞令を椅子に置くと、イズミはカメラに向かって一礼した。ネットワークの向こう側で、100 を越えるであろう視線が自分の一挙手一投足に注目している、という事実は考えないようにする。それでも室内にいる人たちの視線は嫌でも目に入ってきた。マスクをしているのは本日付で入社したイズミたちだけで、社長を筆頭にした役員、各部門長、総務課の社員は、みな透明のフェイスシールドだ。
「4 月1 日付で」イズミは何度も練習した挨拶を暗唱した。「DX 推進室DX 推進ユニットに配属となりました、朝比奈イズミと申します。前職はWeb 制作会社で、営業やサイト作成をやっていました。コールセンター業界はわからないことばかりなので、一日でも早く戦力になれるよう努力していきたいと思っています。趣味は映画を観ることと、おいしいものを食べることです。あいにくコロナ禍で、どちらも以前のようにはいかないので、サブスクとデリバリーに頼る毎日です。よろしくお願いします」
室内の人たちが儀礼的な拍手を送ってくれた。イズミはもう一度、頭を下げると、安堵感とともに椅子に座った。
「朝比奈さん、ありがとうございました」総務課の女性がにこやかに言うと、イズミの隣の席に視線を移した。「それでは、次に、田代シュウジさん、お願いします」
「はい」
イズミの20 倍ぐらい元気な声で返事をして立ち上がったのは、がっしりした体格の男性だった。マスクのせいではっきりとはわからないが、26 歳のイズミよりも少なくとも10 歳以上は年上に感じられた。
「みなさん、はじめまして。田代です」田代は緊張など微塵も感じさせない声で話した。「東海営業本部採用ですが、DX 推進室配属ということで、当面は横浜での勤務となります。去年まで名古屋市内のシステム会社に勤務し、某自動車会社の関連企業のシステム開発に携わっていました。その経験はこの会社でも活かせる、と思っています。どうかよろしくお願いします」
てっきり挨拶が終わったと思ったイズミは、拍手の形に手を持ち上げたが、田代の言葉が続いたので慌てて手を止めた。周囲の何人かも同じような動きをしている。ブレーキが間に合わなかったのか、パンと気の抜けた手拍子のような音がひとつ響いた。
「システム開発というものは、様々なプロセスといろいろな立場の人間によって完成するものだと、私は考えています。これまで大小さまざまな企業さまに出入りさせていただきましたが、IT のことをよくわかっていない偉い人が、プロの意見を無視して口出ししたり事を進めたために、できあがったシステムが使い勝手の悪いものになってしまった、という例を何度も見てきました」
総務課の女性が戸惑ったように時計と田代の顔を交互に見たが、田代は意に介さず、声を張り上げた。
「DX 推進室では、社内システムの内製化を進めていく、とうかがっています。そのために私は採用されました。餅は餅屋、と申します。システムのことはシステムのプロにお任せください。そして私はプロです。手順もノウハウも頭と身体に叩き込まれています。ご期待ください。長くなりました。以上です」
今度こそ田代は一礼して腰を下ろした。やや遅れて室内から拍手がバラバラと沸き起こる。手を打ち合わせながら隣を見たイズミに、田代は小声で囁いた。
「同じ部署だね。よろしく」
「はあ」
初対面の相手でも物怖じせずに話しかけられるメンタルの持ち主。苦手なタイプだ、とイズミはマスクの下で唇を噛んだ。1 年前に前の会社を退職した一因となった上司のことを思い出す。同じように押しの強い男性だった。せっかく再就職できたというのに、もしかすると居心地が悪い職場に......
「えー、それでは以上をもちまして」進行の声でイズミは我に返って正面に視線を戻した。「入社式を終わりたいと思います。この後、別室に移動し、オリエンテーションを行います。おつかれさまでした」
あらかじめリハーサルをしていたらしい新入社員たちは、その言葉と同時に立ち上がって、スムーズにドアへと移動を開始した。何も聞いていなかったイズミは、あたふたと立ち上がった。対照的に落ち着いた田代は、イズミが蹴飛ばしてしまったパイプ椅子を元の位置に直す余裕まで見せた。
二つ隣の会議室に入ると、先導してくれた総務課社員は、座ってお待ちください、と言い残して出ていった。アクリル板のパーティションで区切られた席の前には、氏名が印刷され三角柱に折られたプレートが置かれている。新入社員たちはそれぞれの席に着くと、小声で私語を交わし始めた。イズミと田代の席は、新入社員とは別扱いなのか、空席を2 つ挟んだ場所にある。イズミが自分の席に座ると、隣に座った田代が話しかけてきた。
「俺の挨拶、どうだったかな」
「え」イズミは少し驚いた。「あー、良かったと思いますけど」
田代の目元が笑った。
「実はちょっと引いたんじゃない?」
「......」
「朝比奈さんの挨拶は無難だったね。気持ちはわかる。未知の業界の会社で、新しい部署のスタートアップメンバーだ。悪目立ちしたくないってところだろ」
何が言いたいんだ、この人は。イズミは疑問に思いながら、改めて田代を観察した。縦も横もイズミより一回り以上大きいが、太って肉がついているというより、骨格自体が頑健に構築されている印象がある。顔はborder-radius を強めにかけたような正方形。耳は大きいが目は細い。髪は耳が半分隠れるぐらいの長さだ。
「でも、俺はそれじゃいかんと思うんだ」
「何がですか」
「最初が肝心ってこと」田代は真剣な声で言った。「DX 推進室は社長の肝いりでできた部署という話だろ。人事の人から聞いたんだけど、反対意見も多かったらしい。まだどんな方針で、何をやるのかもはっきり決まってない。それは知ってるよね」
「まあ、一応」
「俺の経験だとね。そういう部署ができると、やたらと口出ししてきたり関わりを持とうとする人がいるわけよ。もちろん、親切心から手を貸してくれる場合もあるんだろうけど、大抵はそうじゃない。そこがうまく結果を出せば、自分が何かと手助けしたって吹聴するためなんだな」
「出せなければ?」
「そのときは知らんぷりだよ。自分には責任ないから、って顔でさっさと距離を取るんだ。特にIT 関係の部署は、どういうわけか他より低く見られることが多いからね。あわよくば自分が利用できる駒として使えねえかな、みたいな考えで手出してくる人が絶対いるんだよ。そこの人間が御しやすいとみればなおさらだな」
なるほど。イズミはようやく田代の言わんとすることが理解できた気がした。扱いやすい人間じゃないぞ、と宣言したということか。そう言うと、田代は短く笑った。
「ぶっちゃけて言えば、なめんなよ、ってとこだ」
「ははは」イズミは調子を合わせて笑った。「すごい」
「ま、これで成果を出せなきゃ、ただのビッグマウス野郎だけどな」
「自信があるんですね」
「あるよ。朝比奈さんはなさそうだね」
イズミは正直に頷いた。
「まともなシステム開発とか経験ないんです」
「Web 制作会社にいたって言ってたっけ」田代は腕を組んだ。「具体的にはどんな仕事を?」
「営業から始めて」イズミは努めて平板な声で答えた。「事務もやったし、もちろんサイト作成もやりました」
「サイト作成っていうと、いわゆるフロント?」
「そうですね、JavaScript とCSS で。あ、PHP とJava とPython は少し」そう言ってから、イズミは慌てて付け足した。「でも、ほとんどリーダーの言われたままに修正とかしただけなんで」
「ふーん。DB 関係は?」
「言われるままにSQL 文を修正したぐらいです」
「研修とかは?」
「自分で勉強する、というのが暗黙のルールで」
「まあ、小さな会社だとそうなるんだろうね。で、勉強はした?」
「必要なところだけ」イズミは弁解するように答えた。「部分的に。あちこち。広く浅く、という感じで。勤務中は勉強の時間なんかなくて」
田代は少しの間、黙って天井を見上げた。言語化されなくても、失望させたのはわかる。「時間は作るものだ」の類の言葉が返ってくるかと覚悟したが、田代は自分を納得させるように何度か頷くと、イズミに顔を向け直した。
「DX 推進ユニットの中じゃ、俺と朝比奈さんが正社員採用で、後は契約社員か派遣らしいからなあ。協力してチームを引っ張っていきましょう」
イズミが返事をする前に、ドアが開き、先ほどの入社式でビデオカメラを回していた総務課の女性が顔を出した。今はコンパクトデジカメを下げている。
「お待たせしました」
続いて入ってきたのは三人の男性だった。一人は横浜CC マネジメント部副部長の椋本で、イズミは二次面接で顔を合わせている。後の二人とは面識がない。恰幅のいい初老の男性、椋本と同年代の中年男性。男性陣はイズミたちの対面の席に座ったが、総務課の女性は少し離れた場所に移動して、デジカメを構えた。
「えーと」初老の男性が手元のプリントアウトに目を落とした。「新人のみなさん、それから中途採用のお二方、どうぞよろしく。私は社外取締役副社長の桑畑です。こっちは名古屋CC(コールセンター)の根津くん、隣が横浜CC の椋本くん、あっちは総務の土井さん」
名前が呼ばれるたびに、いちいち頭を下げながら、イズミは顔と名前を記憶しようと必死だった。メモを取っていいものかどうか迷ったが、隣を見ると田代は堂々とメモ帳を開いて書き込んでいる。イズミも慌ててキャンパスノートを取り出した。
「では」根津が太い声で言った。「うちの会社のことを、改めて説明していきます。土井さん」
土井は頷いて、持参していたクリアファイルから数枚ずつホッチキス止めされたプリントアウトの束を出して、一番端の新入社員に渡した。全員に行き渡るのを待って、素早く何度かシャッターを切る。雑用係兼記録係といったところか、とイズミは推測しながら、配られたプリントアウトに目を落とした。アリマツ・テレビジネス株式会社のロゴが左上に、「新入社員説明資料 2021.4.1」のゴシック体のタイトルが中央に書かれている。
「新卒のみんなと、DX の二人も、コールセンター業界は初めてなんだっけ?」桑畑が確認した。
全員が頷いた。
「じゃあ、まずはそこからか」桑畑はプリントアウトをめくった。「実際の業務なんかは、別途、見学や実習なんかのスケジュールが用意されてると思うから、とりあえず概要からだな。えーと説明は椋本くんがやってくれるんだったか」
椋本が頷いたが、その隣で根津が小さく手を挙げた。
「ああ、ちょっといいですかね」根津が挑戦的な声で発言した。「よければ私から説明させてもらえませんかね」
「んん?」椋本は訝しげに応じた。「私が準備してきたんだがね」
「椋本くんの予定だったろ?」桑畑が訊いた。
「そうなんですが」根津は食い下がった。「うちの創立は名古屋ですし、昔からの大きなCC もあります。そのあたりの状況は私の方が把握していると思いますね」
「私だって名古屋の状況は把握してるがね」椋本の声は落ち着いている。「それに新規案件の受注はこっちの方が多い。センター見学も横浜CC で行うんだからね。私が説明した方がいいんじゃないかな」
「私だって横浜の現況は把握してるさ」根津が怒りを含んだ声で言った。「そもそも最初は俺が説明することになっていたじゃないか。それをなんだかんだ理由つけて、後からかっさらっていったのはそっちだろうが」
イズミは面食らって椋本と根津の二人を交互に見た。根津は険悪な目で椋本を睨んでいるが、椋本の方はその視線を受け流している。派閥争いみたいなものだろうか、とイズミは考えた。それとも出世競争か。どちらにしても、新入社員のいる前で行うことではない気がするのだが。
二人の副部長はしばらく言葉の応酬を続けたが、やがて椋本が根負けしたように肩をすくめた。
「私はただ、自分の方が適任ではないか、と思っただけだよ。まあ、根津くんがやりたいなら任せる」
不毛なやり取りにケリをつけるように、桑畑が「じゃあ根津くん、頼む」と言った。驚いた様子ではないので、特段、珍しいことでもないのかもしれない。そういえば転職サイトの企業情報にも「言いたいことを自由に発言できる社風」とかなんとか書かれていた気がする。
「では」根津は咳払いしてプリントアウトを見た。「改めて。えー、アリマツ・テレビジネス株式会社は1987 年、愛知県名古屋市で有松コンタクトサービス株式会社として創業され......」
余計な邪魔が入るのを防ぐような早口の説明が始まった。イズミはメモを取りながら、こっそり椋本を盗み見た。テーブルの上で指を組み合わせ、涼しい顔でスクリーンを見つめている。予定していた役目を奪われたことで、腹を立てている様子は見えない。むしろ無表情と言ってもいいぐらいだ。そうか。この人にとって、さっきの一幕は想定の範囲内だったんだ。イズミがそう思ったとき、ドアの向こうから誰かの話し声が聞こえてきた。
顔を上げたのはイズミだけだった。可聴域ギリギリだったので、ドアに一番近い位置のイズミ以外の耳には届かなかったらしい。この会議室はエントランスに近い位置にあり、来客応対用にも使われるらしいので、訪問者の声が聞こえたのかもしれない。コロナ対策の換気のため、ドアがストッパーによって細く開けてあるからだ。それでも通常なら、オフィス環境音として聞き流していただろう。イズミが注意を惹かれたのは、その響きに何やら不穏な気配を感じ取ったからだった。
『そういう話じゃないんですよ!』
不意に女性の金切り声が響き、全員がドアの方に顔を向けた。説明をしていた根津も言葉を切り、不愉快そうな表情を浮かべた。話が得意な人によく見られるように、根津も自分の話が遮られたり、聞き手の注意が他に逸れることを嫌うようだ。反面、新入社員たちは、驚くと同時に、面白がるように目を輝かしている。
『すいません』応じた女性の声には困惑が混じっていた。『システムの人間は今、みな席を外しておりまして。お約束のない......』
『一方的に切っておいて、それはないんじゃないですか』
『そう言われましても......』
「チッ」根津が露骨に顔をしかめた。「何やってる」
「あー、誰か」桑畑は居並ぶ部下を見渡すと、一人に視線を止めた。「土井さん、悪いがちょっと......」
「はい、見てきます」
土井がそう言いながら立ち上がり、急ぎ足でドアの向こうに姿を消した。出ていくときにストッパーを外したので、声の大部分は遮断されたが、イズミの座る位置には断片が届いていた。
『これが御社の......とにかく......てくれれば......システム......』
ドアの外を誰かが走っていく音が通り、続いて、別の男性の声が聞こえてきた。
『......さん、あれ、今日って......たっけ?』
『そんなもの......せんよ......さんに会わせて......か』
『......は......多忙で......とにかくこちらへ......』
会話は次第に遠ざかっていた。エントランスで騒がれるよりは、ということで中に通されたらしい。
「はい、静かに」根津が一喝して、室内の私語を中断させた。「なんだかしらんが、非常識な奴がいるもんだ。えーと、どこまで行ったかな。沖縄CC 開設の......」
ドン!
壁を力任せに蹴りつけたような打撃音が、会議室に伝わった。続いてガラスが割れるときの特徴的な尖った音と、誰かの――おそらくは土井だと思われる女性の悲鳴が聞こえた。
「何をやってるんだ」桑畑が顔をしかめた。「おいおい、席を立たない」
その声でドアの方に向かいかけていた2 名の新入社員が、恥ずかしそうに元の席に戻った。椋本が苦笑しながら立ち上がった。
「ちょっと見てくる。みんな、おとなしく座って待っているんだよ。おすわりトン、手はおひざ」
三歳児向けの口調で言いながら、椋本は素早くドアを開け、するりと外に出ていった。何人かがクスクス笑った。
イズミは田代と顔を見合わせて、相手の目が笑っているのを見てとった。自分の顔にも同じ表情が浮かんでいるのだろう。少なくとも入社初日の緊張感など、空の彼方に消し飛ばされてしまっていた。
「痴情のもつれかねえ」田代も明らかに面白がっている声で囁いた。「それとも不倫か。なんだっけ、昔の、マイケル・ダグラスの怖い映画」
「危険な情事、ですか」
「それそれ。女は怖い」
「そういう決めつけはどうかと思いますけど」
ドアが開き、椋本と土井が入ってきた。事故や事件ではないらしい、とイズミは安心した。椋本はいたって冷静な顔だったし、土井は少し顔が赤くなってはいるものの、混乱や動揺に見舞われている様子はない。ドアの向こうでは、何人かが話す声が聞こえていたが、何かを片付ける手配についての事務的なやりとりのようだ。
「ちょっとした誤解があって」椋本が桑畑に説明した。「少しばかり興奮した人物が、自らの意見を表明するために、やや過大な力を使ってしまい、その結果として、エントランス横のガラスケースがささやかな被害を被った、というわけでして。怪我人はいませんのでご安心を」
「その迷惑な奴はどうしたんだね」
「奥の応接室に通して、総務が話を聞いています」土井が付け加えた。
根津が咳払いした。自社の什器が損傷したことよりも、自分の話が中断されたことに怒りを感じているようだ。
「その愚か者は、どこの誰なんだ」
「ああ、それは......」
前途ある若者たちに聞かせていいのか、とでも言うように、椋本は新入社員たちを意味ありげに見たが、桑畑がもどかしげに手を振った。
「構わんだろう。別に部外者じゃないんだ」
「なるほど」椋本は肩をすくめた。「残っていた名刺によれば、オリクスという会社の営業でした。若い女性ですね。新卒採用の2 年目といったところですか」
「うちの顧客か?」
「いえ。オリクスはシステム開発会社のようです」
「業者かね」桑畑が訊いた。
「耳にしたことはありませんね。今、総務に調べさせています」
「ふーん」桑畑はすでに興味をなくしたような顔になっていた。「わかったら報告してくれ。じゃあ、根津くん、続けて」
根津は説明を再開しようとしたが、新入社員たちの集中力が目に見えて落ちているのは明らかだった。さきほどの突発事態に興味津々なのだ。何人かはテーブルの下でスマートフォンを取り出していたが、それを目ざとくみつけた椋本に機先を制された。
「君たち、言うまでもないことだけどね。社内の出来事を許可なくSNS に上げたりしたら、従業員規程に抵触するよ。これ、入社前研修で習ったはずだから、知らなかったってのは通用しない。最悪の場合は懲戒解雇ね。それでも構わなければどうぞ」
そんな脅しに屈するものか、と笑い飛ばすような猛者はいなかった。その後は、少なくとも表面上は粛々とオリエンテーションが進められた。それでも何人かは、この会社に入社したことが、果たして正しいことだったのか疑問に感じていることだろう。他ならぬイズミもその一人だった。
(続)
この物語はフィクションです。実在する団体名、個人とは一切関係ありません。また、特定の技術や製品の優位性などを主張するものではありません。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
久しぶりの投稿となります。
間が開いてしまったのは、コロナのせいでも、ウクライナの戦争のせいでもなく、家庭内にちょっとした変化があって、多忙だったためです(身内の不幸といった類のことではありません)。
このコラムのコメントは、以前に組んだJava プログラムでGmail に届く通知を読んで、自動で公開にしていたのですが、先日、動作を確認したところ、5月末のGmail のセキュリティ強化のため、見事に動作しなくなっていました。仕方なく、Python で書き直すことになりました。こういうちょっとしたプログラムを書くのに、Python は便利だな、と改めて感じた次第です(Python の優位性を主張するものではありません)。
同時に、コメント自動公開プログラムを走らせていたラズパイも、原因不明のエラーが出ていたので、OSを最新のバージョンに入れ替えました。うちのラズパイは、ナルミンがみなとみらいの(今はない)PC DEPOTで拾ったのと同じ型なので、6、7年ぐらい前の製品です。動作するのか不安でしたが、あっさりOSがインストールでき、Python も必要なライブラリもしっかり動いています。堅固な基本設計のなせるわざですね。新しいのを買わなくてよかった。
というわけで、月曜日の朝8:00に公開の予定なので、お時間のある方は、またしばらくお付き合いください。
コメント
h1r0yuki
待っておりました!
今作も第一話だけでワクワクしました
月曜日が待ち遠しくなr生活が始まり嬉しく思います
にゃんきち
毎週月曜日の朝に新作始まらないかなとサイトを覗く日々が終わりました。
とても楽しみです。
ロコ
待ってました~~!
>ぶちゃけて
ぶっちゃけて ですかね
砂付近
新作待ってました。
もう10年以上?憂鬱な月曜のささやかな楽しみをいただいています。
さかなでこ
お盆の時期だからねえだろ、と思いつつ来てみたらありました!イヤオ!
真剣にお付き合いさせて頂きます。
匿名
待ってました新連載!!毎週、更新がない…の日々もいったん終わりだ!
今まで同様に不穏な空気からスタートするも、これまでと雰囲気が違いますねー
匿名
新作来た!!
じぇいく
ヒャッハー!!
新作だ!新作だ!!新作だー!!!
SQL
新作待ってました
いつも以上に危険な職場みたいですね
あしの
おかえりなさい!
R.2
新作感謝!
月曜朝のお楽しみだぁ!!!
にんにん
新作!旧作を読み返して待ってました!
月曜朝のお楽しみが戻ってきて嬉しいです!
ななし~
> 「Web 制作会社にいたって言ってたっけ」田代は腕を組んだ。「具体的には"どんなこと仕事を?"」 → どんな仕事を?
...でしょうか??
新連載、楽しみです o(^^)o
リーベルG
ロコさん、ななし~さん、ご指摘ありがとうございました。
「ぶっちゃけて」
「どんな仕事を」
でした。
侘助
面白そうな新作始まってました!
しかし入社式でこれだけ揉め事続出の会社って相当やばそう・・
さきよみ
今回の騒動が後々の伏線になりそうな予感、それも忘れた頃に
ななし
新作ありがとうございます!
社外取締役副社長というのは結構レアな役職のような気がします…
社外取だとこういうところで説明というのも結構不思議な感じですし、代表取締役副社長といったあたりでしょうか?
まなしん
おかえりなさい!
ずーっと待ってました。
月曜日の朝が楽しみになります。
期待しています。
匿名
前作棚橋で今回オカダ・カズチカか。
プロレスファン?
匿名
初回から肝が冷える展開だなぁ。
匿名
まってました!
月曜に期待する日が終わるとどうなるか知ってるかい?
月曜を待ち望む日がくるんだよ!
匿名
(ラズパイ の優位性を主張するものです)
匿名
更新確認忘れてたら新作が…orz