ふつーのプログラマです。主に企業内Webシステムの要件定義から保守まで何でもやってる、ふつーのプログラマです。

飛田ショウマの憂鬱 (4)

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 飛田がスターバックスに到着したのは、20:00 の1 分前だった。カナは入り口付近の席に座り、強張った顔でスマートフォンを見つめていたが、飛田の姿を目にすると小さく手を挙げて合図してきた。飛田は頷き、レジに向かった。豆が原料の飲み物を好まないので、スターバックスでは数少ないティーのメニューから選択することにしている。

 注文したアールグレイを待ちながら、飛田は横目でカナの表情を観察した。心なしか普段の快活さが薄らいでいるような印象を受ける。スマートフォンに視線を落としているものの、画面上のコンテンツではない別の何かに心を奪われているようだ。何よりもトレードマークである笑顔が片鱗すら浮かんでいない。一言で表現するなら、全くカナらしくない。

 アールグレイを持って腰を下ろすと、カナは待ち兼ねたように前に口を開いた。

 「長谷部ちゃんのことなんだけど」

 おつかれ、も、呼び出して悪かったね、もなく、いきなり本題だった。

 「長谷部がどうした」

 「うちの課で小耳に挟んだのよ」カナは微妙に視線を逸らした。「一人じゃ無理な量の業務を押しつけられて参ってるって。ホントなの?」

 飛田はカップを口に運びながら頷いた。

 「参ってるかどうかはしらんが、業務量が多いのは事実だな」

 するとカナは正面から飛田を睨み付けた。

 「それを押しつけてるのが飛田ちゃんだってのもホントなの?」

 飛田は絶句した。まじまじとカナの顔を凝視していると、カナは身を乗り出した。

 「どうなのよ」

 「ちょっと待てよ」珍しく狼狽した飛田は、しどろもどろに答えた。「お俺が長谷部に何をししてるって?」

 「飛田ちゃんが他のメンバーと結託して、長谷部ちゃんにあれもこれも押しつけて追い込んでるって」

 「誰がそんなことを」

 「誰って......その」カナは言いよどんだ。「うちの課長が話してるのを聞いたから......飛田ちゃんがチームリーダーから外された腹いせにやってるって」

 「お前らしくないな」飛田はいつもの冷静さを取り戻して、紅茶のフレーバーを楽しんだ。「ウワサだけで人を呼び出したのか」

 「あ、ごめん。忙しかった?」

 「そういうことじゃないんだが。まあいい。とにかく俺が長谷部に何かを押しつけてるってことはない。他のメンバーも同じだ」

 「だよね」カナはようやく笑顔を見せた。「いや、あたしもそうじゃないかとは思ったんだけどさ」

 「......」

 「でもさ、長谷部ちゃんが最近、忙しそうなのは確かだよね。LINE しても既読スルーが多いし、そもそも社内にあまりいないみたいだし」

 「チームリーダーだからな」

 「だからって返信ぐらいできるでしょ。そもそもどうしてそんなに忙しいのよ」

 「本人に訊けばいいだろう」

 「そうしようと思ったわよ」カナは憤然と答えた。「今日も実は飲みに行く約束だったんだから。でも、さっきドタキャンしやがってさ。だから......」

 「だから代わりに俺を呼び出したわけか」

 「だって長谷部ちゃんと仲いいでしょ? 同じ仕事してるんだし」

 「......」

 飛田は手短に長谷部の現状について説明した。首藤課長の意図については「俺の想像だが」と注釈を付けたが、カナはジグソーパズルの最後のピースがはまったような顔になった。

 「実はね、うちの課長と話してたのは首藤課長なの。メンバーの抵抗にあっても長谷部はきちんと開発チームリーダーとしての責務を果たしてるって」カナはタンブラーを掴んで立ち上がった。「ごめん、ちょっとお代わり買ってくる」

 やはりそうか。飛田はひとり頷いた。首藤課長ならやりかねない。飛田の心象を悪くする効果と、長谷部が開発課でも実績を出していると印象付ける効果を狙ってのことだろう。さらに深読みするなら、カナが聞いていることを承知の上で、そのような話をしたのかもしれない。もちろん、飛田の耳に入ることを期待してだ。直接自分に言えばいいものを、と飛田は苦笑したが、そうしなかったのは飛田自身の態度にも一因があるのかもしれない。

 開発課の課長になってからというもの、首藤課長は書籍やネットで聞きかじった知識を元に、システム開発プロジェクトを立派にマネジメントしている、と内外にアピールしてきた。その多くは部下の努力や工夫を、さも自分が指示した結果であるかのように誇示することでなされている。多くの課員は、サラリーマンとはそんなもの、と考えているのか、首藤課長の顔を立てて特に文句を言おうとしなかった。だが、知ったかぶりをする人間が大嫌いな飛田は、そんな首藤課長の必死のポーズに迎合しようとしなかった。面と向かって批判したり非難したわけではないが、そう思っているという態度を隠そうともしなかったから同じことだろう。

 もちろん承認欲求の強い首藤課長のことだから、飛田の内心にも気付いているに違いない。首藤課長にとっては、飛田は最も苦手とするタイプの人間だろう。役職になど何の権威も認めない、ギャグや冗談にも乗ってこない、飲みニケーションを図ろうにも乾杯した後帰ってしまう。かといって生半可な知識で技術的な話をしても、容赦なく論破されてしまうに決まっている。

 技術的スキルでは飛び抜けている飛田が、首藤課長を上長として立てて、業務をこなしてくれる。首藤課長にとって理想的なのは、そんな状況だったのだろう。外部に対しては飛田のような優秀なエンジニアをマネジメントしているとアピールし、内部的には飛田をおだて上げて仕事をさせる。思えば、首藤課長が開発課課長になって、最初に面談をしたとき、意味もなく笑ったり、肩を掴んでみたりと、やたらと馴れ馴れしい態度だった。飛田が冷淡に対応していると、やがてその顔にはりついていたわざとらしい笑みがはがれ落ちていった。それ以後、首藤課長は飛田を懐柔しようとするのを断念したようだった。

 戻って来たカナは、タンブラーからコーヒーをすすると、話を再開した。

 「つまり首藤課長は長谷部ちゃんを忠臣にしようとしてるわけね」

 忠臣、とはまた古風な、と思ったものの、カナがいわゆる歴女だったことを思い出した飛田は頷いた。

 「そうなるな」

 「飛田ちゃんは反対?」

 「反対も何も、長谷部が決めることだ」

 「飛田ちゃんならどう?」

 「前に言っただろ。俺は上に行くなら、技術力を認められて行きたい。誰かにひいきされてではなくな」

 するとカナは寂しそうに笑いながら呟くように言った。

 「それって、そんなにいけないことかな」

 「何が」

 「誰かのひいきで出世することよ」カナは飛田に横顔を向けた。「誰かに好かれるっていうのも才能のうちだと思うんだけど」

 「それを否定はしない。ただ、俺にはできないと言ってるだけだ」飛田はカナの顔を見返した。「長谷部にとって、今の状況がいいことだと思ってるのか?」

 カナは少し考えてから、あくまでもあたしの意見だけど、と前置きして答えた。

 「忙しすぎるのは問題だけど、結果的に人事評価に繋がるなら、悪い事とは言えないんじゃないかな」

 「だが長谷部自身は営業マンとして出世したいのかもしれん」飛田は、以前、篠崎が指摘した言葉を借りて答えた。「あいつにも、その方が合ってる気がする」

 「でも営業課って先輩が多いでしょう。あそこは基本、年功序列だから、順に上がっていくのを待ってたら、係長になるのは何年も先じゃん。開発課は、首藤課長のすぐ下が、もうあたしたち世代よ。年上の人は、ほとんど派遣さんか契約社員でしょ」

 だから出世の階段だかエスカレーターだかを昇りやすい、ということか。飛田はカナの考えに一理あることを認めた。

 「チャンスに飛びついたのかもしれないな。だが、そうまでして出世したかったとは知らなかった」

 飛田がそう言うと、カナは啓示を求めるように宙に視線をさ迷わせた。

 「長谷部ちゃんの弟くんのこと知ってる?」

 「弟?」別方向に飛躍した話に飛田は戸惑った。「いや知らん。いたのか」

 「7 歳年下でね。ちょっと面倒な膠原病らしいの。入院と退院を繰り返してるって」

 「治療費か?」

 「ううん」カナは首を横に振った。「それは高額医療費補助で何とかなるんだけど、別にお金がかかることがあって。弟くんは美大に行ってるの」

 長谷部の弟は小さい頃から身体が弱く、自宅や学校より病院にいる時間が長かったぐらいだった。病気のせいなのか集中力が続かず、本を読むとかゲームをやるといった誰でもやるような遊びもできなかった。屋外で友達と遊んだことも、ほとんどなかったらしい。ただ一つ熱中することができ、かつ周囲が感嘆したのが絵を描くことだった。そして、スケッチブックに風景や静物の陰影を再現する才能は、身内のひいき目を差し引いても、将来性を感じられるものだったのだ。長谷部は何とかその才能を伸ばしてやりたいと思い、弟も懸命な努力の末、都内の美大に入学することができた。だが、美大は学費の他に、何かと金がかかる。健康な学生なら何の苦労もない通学でさえ、長谷部の弟には苦行であり、ときにはタクシーを使う必要もあるという。

 「お父さんは、長谷部ちゃんが社会人になってすぐに亡くなって、長谷部ちゃんはずっと家族を支えてきたのよ。だから出世をしたいというより......」

 「可処分所得を増やしたいってことか」

 「そういうこと。首藤課長の出世主義とは違うのよ」カナはいつもの笑顔を見せた。 「たぶん長谷部ちゃんは、開発課である程度の実績を残してから、営業課に戻るつもりなんだと思うのよね。飛田ちゃんだって、営業が開発経験者だと安心できるんじゃない?」

 「まあな」

 「そうなったら長谷部ちゃんの前途は悠々ね」

 そうなるまでに身体か心を壊さなければな。飛田はそう思ったものの口には出さなかった。

 「ま、将来的なことはともかく」カナの顔が少し曇った。「直近の問題は、長谷部ちゃんの業務量よね。毎晩、終電近いらしいから。いくら営業で鍛えてたっていっても、慣れない開発チームリーダーや課長のお供なんかでストレスたまるよね」

 「だろうな」

 「何とかならない?」

 「何とかって言われてもな」飛田はアールグレイを飲み干した。「首藤課長が与えている仕事をやるなとは言えんしな」

 「表立ってできなくても、裏でこっそり肩代わりしてあげるとかさ」

 みんな同じことを考えるな、と、飛田は野見山のことを思い出した。

 「代わってやると言っても、長谷部がやってるのは顧客との窓口だ、つまり表の仕事だ。どうやって裏で代わってやるんだ」

 「何か考えてあげてよ。長谷部ちゃんのふりしてお客さんに電話するとかさ」

 「そもそも」カナのバカげた提案は無視して、飛田は疑問を投げた。「誰かに助けてもらうこと自体、長谷部が望んでないだろう」

 「他の人ならね。でも、飛田ちゃんなら別よ」

 「どうして?」

 「長谷部ちゃんが信頼してるのは、飛田ちゃんだけだからよ」

 飛田は唸った。

 「あいつは誰とでも仲がいいぞ」

 「うん。社交的だし、誰とでもすぐ打ち解けられるし、他人からも信頼されやすいよね。でも、それは会社の中でうまくやっていくための鎧と兜みたいなもんなのよ。飛田ちゃんみたいに、秀でたスキルがあるわけじゃないからさ」

 「そうなのか」飛田は改めてカナに感心した。「よく見てるな」

 「あたしもそういうところがあるから」カナは肩をすくめた。「わかるのよ。例えば、飛田ちゃんはさ、仮にうちを辞めることになったとしても、次の職場を簡単に見つけるだけのスキルを持ってるじゃない。まあネックがあるとすれば面接よね。その怖い顔で見つめられたら、目を逸らしたくなるからさ」

 「......」

 「あたしや長谷部ちゃんは、そうはいかないのよ。特筆できる資格やスキルがあるわけじゃないし、この会社でやってきた実績だって、他では重視されないと思うしね。今と同じお給料がもらえる保証なんてない。あたしはいいわよ。実家暮らしだし、少しは貯金もあるし。両親も健在だから、いざとなれば頼っちゃう。でも長谷部ちゃんは、そうは行かないでしょ。やりがいのある仕事ができれば給料が下がってもいいなんて、簡単には言えないのよ。サラリーマンなんて、みんなそんなものかも知れないけどね」

 「いや、俺だって......」

 「だからね」カナは飛田の言葉を遮って続けた。「長谷部ちゃんは、誰とでもうまくやってるように見えるけど、相手を信頼してるからじゃないの。あの営業向きのスマイルは世渡りのツールみたいなものよ。むしろ、そんな上っ面だけで誤魔化されるような相手を心から信頼できるわけないでしょ。そういう人は、状況が変われば簡単に裏切ったり見捨てたりするだろうから」

 「......」

 「でも飛田ちゃんは、そういうことで人を判断しないでしょ」カナは微笑んだ。「飛田ちゃんの信頼基準はシンプルよね。まともなプログラマかどうか、プライドを持ってコードを書いてるかどうか、そんなとこじゃない?」

 「そうだが、別に俺は営業や管理職という職種を軽蔑してるわけじゃないぞ」

 「わかってる。飛田ちゃんは、人好きがするとか、自分をちやほやしてくれるとか、そんな基準で人を判断しないってこと。長谷部ちゃんもそれがわかってる。誠実に接すれば、飛田ちゃんは裏切らない。だから信頼してるってこと。あたしもよ」

 カナは照れたように笑い、タンブラーを飛田のカップに合わせた。

 「言っとくけど、あたしに惚れないでよ」

 「心配するな。お前は俺の趣味じゃないから」

 「へえ、そう。飛田ちゃんの恋愛観をじっくり聞いてみたいところだけど、まあ、それは別の機会にしておくわね。で、どう? 長谷部ちゃんを助けてあげてくれる?」

 「できるだけのことはやってみる」飛田は頷いた。「あいつの負担を少し軽くするぐらいしかできんだろうし、それだって首藤課長次第だと思うがな」

 「首藤課長については、あたしの方で何とかしてみる」

 不穏な言葉に飛田はカナの顔を見直して、何をするつもりなのか問い質したが、カナは無邪気に笑うだけだった。

 翌日の午後、珍しく長谷部が会社に戻ってきていた。首藤課長が午後から課長会議に出席するため、「顧客開拓」がお休みになったためだ。飛田は首藤課長がいなくなるのを待ち、長谷部に合図してリフレッシュルームに誘った。昨日の今日で首藤課長の指示に反することになるので、真面目な長谷部が拒否するか、とも思ったが、長谷部は素直に従った。あらかじめ示し合わせておいた通り、すぐ後から野見山と篠崎が合流した。

 「おいおい」リフレッシュルームに集まった顔ぶれを見回して、長谷部は笑った。「課長抜きのリーダー会議か」

 「長谷部」飛田はストレートに切り出した。「お前を助けてやる」

 「あ?」

 「正確に言うと、お前の負担を減らしてやろうと思う。この二人に来てもらったのも協力してもらうためだ」

 「そりゃありがたいが......」

 「具体的には、各メンバーからお前に直接上がってる質問を、今後は一旦サブリーダーで受けて精査する。その上で問い合わせメール用の文面も書く。お前はそれを、八十田建設の担当者に送るだけでいい。回答や逆質問は、そのまま俺たちに転送しろ。返信はこっちで考える」

 「これなら」野見山が言った。「長谷部さんの負担はぐっと減るでしょう。外出中でもできますし」

 「その他」篠崎も付け加えた。「技術的、システム的なやり取りは、基本的にサブリーダーで引き受けたいと思っています。これはエンドユーザにとってもメリットがあることだと思います」

 「おいおい、ちょっと待てよ」長谷部の笑顔が消えた。「そりゃ、オレの負担は減るだろうが......単なる中継装置になれって言ってるのか。一応、オレはチームリーダーなんだがなあ」

 「この際だからはっきり訊くが」飛田は長谷部の言葉を遮った。「お前、このまま開発課で開発業務をやっていきたいのか?」

 「......」

 「お前に開発が向いてないとまでは言わんが、営業に戻りたいんじゃないのか? 元々、2 週間の席移動だけのはずだったのに、首藤課長に勝手に延長されたんだろう。このまま放置しておくと、首藤課長はお前を開発課から出さないで手元に置いておくぞ。お前としてはそれを望んでいるのか?」

 長谷部は顔をテーブルの表面に向け、しばらくの間、そのまま動かさなかった。

 「......オレだって」やがて長谷部は蚊の鳴くような声で言った。「営業に戻りたいよ。決まってるじゃないか」

 「だったら......」

 「でも首藤課長はオレを買ってくれている」長谷部は顔を上げた。「なのに営業に戻りたいとは言えないよ。それに、その期待に応えたいとも思ってるんだ」

 「それは出世したいからか?」飛田は容赦なく切り込んだ。「開発課なら、すぐに出世できると思ったか?」

 野見山と篠崎が驚いたように飛田を見たが、飛田は気にしなかった。

 「お前なあ」長谷部は苦笑した。「人が答えにくいことをズバズバ訊くね。お前らしいといえばらしいが」

 「どうなんだ?」

 「そういう気持ちがないと言えばウソになる。だが、自分の職務経歴に行を増やすチャンスだって思う方が大きいな。開発業務を理解してる営業だったら、会社にとって大きな戦力になるだろう?」

 飛田は、二人のサブリーダーと顔を見合わせて頷いた。

 「もう一度確認するが、このままチームリーダーとしてやっていきたいし、きちんとこなせる自信もあるんだな?」

 「ああ」

 「開発が佳境に入ったら、今以上にやることが増加するぞ。それでも大丈夫か」

 「大丈夫だ。やってみたいんだ」

 「長谷部さんを信用しないわけじゃないんですが」野見山も確認した。「テストフェーズの苦労は並大抵じゃないですよ。PM はあの通り、役に立たないでしょうしね」

 「おい飛田」長谷部は苦笑した。「お前の後輩、お前に似てきたんじゃないのか。言うことが過激になってきてるぞ」

 「どうなんだ?」

「もちろん甘く見てるわけじゃない。お前たちの協力があれば大丈夫だと思ってる」

 「よし。そういうことならお前が実績を残せるように協力する。首藤課長にはバレないようにやる」

 「わかった。任せる。助かるよ。終わったら、3 人に酒でもおごらせてもらうよ」

 「以上だ」

 首藤課長が戻ってこないうちに、と席を立ちかけた飛田を、長谷部が制した。

 「ちょっと待ってくれ。実はオレの方からも話があるんだ」

 「何だ?」

 「実装の協力会社の件だが」長谷部は頭を下げた。「交渉中の2社がどっちも断ってきた。すまん。オレの力不足だ」

 「ということは」野見山が緊張した顔で訊いた。「実装はどうなるんです?」

 「今から新しい協力会社を探す時間はない。実装はうちでやることになる。実は夕方に首藤課長から話をしてもらうはずだったんだ」

(続)

Comment(11)

コメント

riri

いつも楽しみに拝読しております。
リーベルGさんの生み出すキャラの中で特に飛田くんが好きだったので、この連載を小躍りしながら読んでおります。

「お俺が長谷部に何をししてるって?」

「し」がひとつ多い気が・・・

kemi

しが多いのは予想外のことをいわれてどもってるだけかと思いました。
今回面白いので全五回と言わずもっと続いて欲しいです

tako

>ririさん

(作者ではありませんが)最初に「お俺」と書いているので、言葉がしどろもどろになっている様子ではないでしょうか?


予想通りの自社開発の流れ。首藤課長がいかなる説明をするのが非常に楽しみでしょうがない!予想を超えてインドに発注とか始めたらおもしろい。

wada

飛田君も動揺するんですね(笑)
変な外注掴んでしまうよりはマシなのかもと思いましたが、最終回も楽しみにしています

mon

カナのバカげた提案の箇所、いきなり呼び捨てになっている気が

jo

長谷部が典型的な分かってない営業で救いようがない。

リーベルG

ririさん、どうも。「し」が多いのはどもってるためです。
mon さん、ご指摘ありがとうございます。
wadaさん、どうも。全5回の予定でしたが、もう少し長くなりそうです。

popo

毎回楽しみにしています。

ちょっと気になったので・・・。
飲みニュケーションではなく、飲みニケーションだと思います。
よく間違える人がいますけど、元はコミュニケーション(communication)ですよね。

shin

飲みゅニケーションですな

カズマ

いつも楽しく読ませていただいてます。
「上司のご機嫌取りなんぞに興味はない」という飛田君の姿勢にあこがれます。
どんな展開になるか、楽しみです。

リーベルG

popoさん、shinさん、ありがとうございます。
ずっと「飲みニュケーション」だと思っていたんですが、「飲みニケーション」が正しい、というか、Wikipedia などで定義されているようですね。

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