テストエンジニア時代の悲喜こもごもが今のわたしを作った

「JaSST'10 Hokkaido」参加レポート(その3)――北海道に来たらスープカレーでしょ

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 こんにちは、第3バイオリンです。

 (その1)(その2)と連載してきた「JaSST'10 Hokkaido」レポートもいよいよ最終回です。今回は、ワークショップの模様をお届けします。

■ワークショップ「ユーザー視点とテストの素敵なコラボ ~魅力あるソフトウェアを創り出すのはテストから~」

 TEF北海道ソフトウェアテスト勉強会(以下「TEF道」)の皆さんによるワークショップです。

 TEF道とは、TEF(Testing Engineer's Forum:ソフトウェアテスト技術者交流会)の北海道の部会です。

 まずはワークショップの概要が説明されました。

  • テスト対象は「英語読書日記システム」。これは、英語の文章を読む速さと、文章の単語数を記録・グラフ化することで、英語力向上の目安を知るための携帯電話のアプリケーションである
  • テスト対象について、要求仕様書をもとにシステムテストのテストケースを作成する

 参加者には要求仕様書と、仮想ユーザー「中山由信さん」がこのアプリケーションをどういう目的・状況で利用したがっているか、という説明が示されたプリントが渡されました(なお、仮想ユーザー「中山由信さん」は前回のレポートで登場した「中岫信さん」と名前が似ていなくもないですが、まったく別人です)。

 制限時間10分のあいだに、わたしは要求仕様書を見て、必死でテストケースを考えました。

 10分後、テスト分析表を使って、考え出したテストケースが、どういう目的のテストなのかを整理しました。通常であれば目的が先にあって、それをもとにテストケースを作成しますが、今回は「テスト設計書を書いたことがないという人でも、実は頭の中でテスト設計を行っている」ということがわかるように逆の順序をたどりました。いわばテストケースの「リバースエンジニアリング」です。

 テスト分析表ができたところで、隣の席の人とお互いの表を見せ合ってディスカッションしました。

 自分が作成したテストケースを見て思ったことは「システムテストと言っているのに、単体テストレベルのテストケースになってしまっているな」ということでした。要は1つの機能につき、1つのテストケースを考えているような感じでした。

 仕様書だけを見ていると、機能要件については理解できても、非機能要件についてはなかなか気づきにくいものです(わたしだけかもしれませんが)。

 どんな機能にも、目的があります。目的を果たさない機能は、仕様通りに作ったとしても、正しい機能とはいえません。

 システムのゴールと、ユーザーのゴールは必ずしもイコールではありません。「英語読書日記システム」のゴールは「ユーザーの英語力向上」です。しかし、ユーザー「中山由信さん」のゴールは何でしょうか。確かに、英語力向上はゴールの1つかもしれません。では、「中山由信さん」は、何のために英語力向上を目指しているのでしょうか。「英語読書日記システム」に何を期待し、どのように使用するつもりなのでしょうか。これを考えるには「中山由信さん」の性格や、ライフスタイルも考慮しなくてはいけません。

 そこで今度は、中岫さんの発表にも登場した「スープカレー表」を使って、同じテスト対象、同じ要求仕様書をもとにシナリオテストを考えてみました。

 まずは、「ユーザーとしての非機能要件」を「品質特性」に当てはめることで「システムとしての非機能要件」を導き出します。

 スープカレー表で「システムとしての非機能要件」と「システムの機能要件」をマトリックスにし、それぞれの交点について、どのようなテストが必要かを考えてみると……なんということでしょう! システムの各機能について考えられる非機能要件がスラスラと出てくるではありませんか! しかも、非機能要件をうまく整理することができて、最初に作ったテストケースよりも「システムテスト」らしいテストケースを作ることができました。

 「スープカレー表」がすごいなと思うところは、TEF道のメンバー、つまり、北海道の現場で働く人が、自分たちの現場で役立つものを作りたいという気持ちから生み出したものだということです。まさに「ゲンバノチカラ」そのものを感じることができました。

■情報交換会、そして懇親会

 情報交換会では、飲み物と菓子パン片手に、湯本さん、細川さんたちのご講評をいただく形となりました。司会者の名司会ぶり(皆さんから「神司会」と呼ばれていました)も手伝って、終始楽しい雰囲気でした。

 途中、細川さんが、 「WACATE 2010 夏」のディナーセッションの映像を流しました。この映像には細川さんご本人だけでなく、基調講演をされた湯本さんや、TEF道のメンバーの1人が出演していましたからね。

 しかし、わたしは「あちゃー、このままじゃわたしが『コラムニスト 第3バイオリン』だってこと、みんなの前でバレちゃうよ!」とひそかに慌ててしまいました。別に隠すつもりはなかったのですが、今回は発表もしない「普通の参加者」だったので、わざわざ皆の前で名乗る必要はないだろうと思っていたのです。

 なるべく細川さんと目を合わせないようにしていましたが、さすがに見逃してはくれませんでした。細川さんはわたしを指し、「この映像の中でバイオリン弾いてるのがこの人。さ、ごあいさつして」と言いました。

 わたしはその場に立ってあいさつしました。もはや「普通の参加者」として、こういうイベントに参加することはできないと悟った瞬間でした。いいんですよ、隠すつもりはなかったので。

 情報交換会のあとは、地元の居酒屋に移動して懇親会が始まりました。懇親会では、毛ガニやイクラといった北海道の名物を楽しみながら、参加者の方といろいろなお話をしました。ここでも湯本さんに「目をそらしてしまってごめんなさい」と、きちんと謝罪しておきました。

◇ ◇ ◇

 翌日からの2日間はTEF道のメンバーの方が主催する「ニセコツアー」に行ってきました。余市にあるニッカウヰスキーの工場を見学したり、ニセコで温泉に入ったりして北海道を満喫してきました。もちろん、本場のスープカレーもいただきました。

 今回、北海道に行ってみて、テストを愛する人たちが地元を盛り上げようと奮闘する姿を目の当たりにしました。それは同じ北国である新潟でテストの仕事をするわたしにとって、なによりの励みとなりました。

 また、今までTwitterでしかお話ししたことがなかった人と実際にお会いできたことも、とても嬉しいことでした。来年もまた、行きたいと思います。

 3回にわたってお送りした「JaSST'10 Hokkaido」のレポートはこれでおしまいです。ここまで読んでくださった読者の皆さん、ありがとうございました。

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