懺悔します、わたしこそがひどいテストリーダーでした
こんにちは、第3バイオリンです。
今月のお題は「これまで出会ったひどい上司/部下/チーム」だそうです。なかなか挑戦的なお題ですね。
わたしの会社にはネタになりそうな人(かつ、コラムに書いても問題なさそうな人)はいないなあ……と思ったら、1人だけいました! その人とは何を隠そう、このわたしです。って、偉そうに言うことではないですね。
実はこの前、テストリーダーとしてありえない大失敗をしてしまいました。この失敗と、そのときのわたしの態度のせいで、多くの人に迷惑をかけてしまいました。
今回は反省の意味も込めて、そのときの顛末(てんまつ)を振り返ってみたいと思います。
■気がつけば見積もりの20倍の工数を使ってしまいました
それはテストの前に、チェックリストを作成していたときのことでした。
そのときのチェックリストは過去バージョンのものを流用することになりました。そのため、チェックリストの作成にはそれほど工数はかからないだろうと思っていました。当然、見積もり時にも必要最小限の工数を申請しました。
しかし、実際に流用元となるチェックリストを見たとき、テスト内容以外にも気になる点がありました。テストの手順と予想結果が混同されていたり、レイアウトが見にくくなっていたりして、そのままではちょっとテストしにくい印象を受けました。
今はわたしがリーダーを務めている案件ですが、この流用元のチェックリストが作成されたときはまだ前任の先輩がリーダーでした。今は先輩はプロジェクトから離れ、当時のテスターも残っていません。わたしは「いい機会だ。今回のバージョンで追加される機能のテストを盛り込むついでに、レイアウトも見やすいように修正しよう」と思いました。
そこで新規機能のテスト項目を盛り込んだ後で、チェックリストの手直しを始めました。「これは直すところがけっこうあるな」と思い、いつのまにか直すことに夢中になっていました。もちろん、このときにもチェックリスト作成のために申請した工数を使用していました。
それからしばらくたった頃、開発リーダーに呼び出されました。彼はわたしに言いました。
「今プロジェクトの工数を見てたんだけど、チェックリストの作成だけで見積もりの20倍使ってるよ! これだけでテストのために取った工数を全部使っちゃって、まだ足が出てるよ!」
テストリーダーにとって大切な仕事のひとつがテスト作業の工数管理です。わたしはその仕事がまるっきりできていなかったというわけです。信じられない話だと思いますが、このときのわたしは自分の作業について「工数を使っている」という意識がスッポリと抜けていたのです。
結局、このときは課長が工数の振り替えを行って、一応何とかなりました(根本的解決ではないですが)。年末締めギリギリの忙しい時期に奔走してくださった課長には感謝しています。しかし当然ですが、課長には叱られました。「普段から、消化工数をチェックしていたらもっと早く気づけたはずだよね」と。
さらに、前任の先輩からは「テスター目線だったね」と言われました。先輩はこうも言いました。「僕も今のプロジェクトに移ってチェックリストを直そうと思ったけど、工数なくて『無理だ』と気がついたんだよね。工数の範囲内でできることを把握しておかないと」
普段から「今どれだけの工数を消化して、残りはどれくらいか」「見積もった工数の範囲内で収めるにはどうしたらよいか」意識しないと大変なことになると痛感しました。
■テストリーダー、機能停止
チェックリストの作成で工数を使いすぎてしまい、これ以上の遅延は許されない状況になりました。そんな中で、いよいよテスト作業を始めることになりました。
このテストでは、新しいOSでの動作確認があったり、作業をお願いするはずだったテスターがインフルエンザで休んで急遽代わりの人に入ってもらったりと、先行き不安な要素が満載でした。しかし、テストリーダーが不安になっていたら確実に失敗します。わたしは不安な気持ちを封印しました。
その甲斐あってか、最初は順調な滑り出しでした。このまま終わってくれたら……と思ったのですが、そうはいきませんでした。あれほど時間をかけたチェックリストでしたが、実際にテストをしてみるとテストしにくさはほとんど変わっていませんでした。結局、チェックリストを修正しながらテストを進める羽目になりました。「どうせテストしにくいんだったら、直さなければよかった……」と思っても後の祭りです。こうしてテストはどんどん遅れていきました。
さらに、テスト前に心配していた新しいOSの設定が、当初予想していたやり方ではうまくいかないことがわかりました。設定方法を調べているうちにテストはますます遅れ、工数超過は避けられなくなってしまいました。もうどんなに頑張っても、消化工数を見積もりの範囲内に抑えることはできないと思うと、急に何もかもバカらしくなってしまい、わたしは作業を止めてしまいました。
少しでも遅れを取り戻そうと必死に働くメンバーの横で、戦意喪失して椅子に座り込んだまま動かないテストリーダー……まさにテストチームとして最低、最悪の構図でした。
結局、うちの部署の課長と開発リーダーとわたしの3人で、テスト項目を削るための打ち合わせを行いました。打ち合わせでいくつかのテスト項目を削ったのですが、その後で、元からあった案件と追加案件を混同していたことに気がつきました。
追加案件は別に工数を取っていて、開発チームにもスケジュール変更を伝えていたのに、最初に申請した工数で元からあった案件と追加案件をこなすことになってしまっていたのです。これでは工数の範囲内に収まらないのは当然です。
テストリーダーにとって大切な仕事のひとつがテスト案件の管理です。わたしはこの仕事にも失敗してしまいました。結局、打ち合わせで一度削ったテスト項目を元に戻しました。完全な手戻りです。
ミスをして焦っているところで別のミスをしてますます焦る……まさに「負のスパイラル」にはまり込んでしまいました。
■立て直しのきっかけは、課長と開発リーダーからの一言
このような状況の中、わたしは自分自身が不甲斐なくて、許せなくて課長に「もう無理です!」と八つ当たりめいた態度を取ってしまいました。そんなわたしに課長は言いました。
「できるかできないかじゃなくて、やるかやらないか、なんだよ」
この一言で、今の状況からは逃げられないことを悟りました。とにかく、これ以上傷が大きくならないようにするしかないと、わたしは腹を括りました。
まだ気分のうねりはあったものの、わたしは作業を続けました。しかし、わたしの思い違いから、さらにテスト項目に修正が必要なことに気がつきました。わたしの焦りといらだちは最高潮に達しましたが、何とか抑えて開発リーダーのもとに向かいました。
幸いにも修正はそれほどたいしたものではなく、開発リーダーとの話し合いはすぐに終わりました。そのとき、わたしは思わず言いました。
「これまでの失敗も、今回の思い違いも、わたし以外のリーダーなら絶対ないのに。わたしがリーダーでなければ何もなく終わったはずなのに」
すると、開発リーダーはわたしにこう問いかけました。
「第3バイオリンさんは、テストリーダーになってどれぐらいだっけ?」
わたしは「まだ1年未満です」と答えました。開発リーダーはさらに問いかけました。
「今の部署に移ってどれぐらい?」
わたしは「1年半くらいです」と答えました。すると開発リーダーはこう言いました。
「第3バイオリンさんはテストエンジニアとしても、テストリーダーとしてもまだ経験が浅いわけだよね。それで、長い間評価部署で働いている他のテストリーダーと比較する意味あるの?」
その一言で、他のテストリーダーと自分を比較し、「早く追いつかなくては」と焦っていたことに気がつきました。他のテストリーダーは、わたしとは年季が違うのです。たかが1年くらいで追いつこうなんて、おこがましいにも程があります。もしかしたら、まだ経験不足なのに、もう一人前のテストリーダーになったつもりでいたのかもしれません。
それに気がついて、今回の一件がわたしの中で整理されました。そしてようやく、自分自身を許すことができました。
その後、テストは無事終了し、あとはプロジェクトの反省会を残すのみとなりました。そのときには、たっぷり反省してきます。
■体を張って部署のバグ出し?
今回のテスト期間中、わたしはすべての失敗について部署の進捗会議でメンバー全員に報告していました。メンバーの中には「わざわざそんな恥ずかしいこと、会議で言わなくても課長だけに伝えればいいじゃない」という人もいました。
しかし、わたしはあえてメンバー全員の前で報告しました。理由は、わたしの失敗がわたし個人の問題なのか、それとも部署のプロセスの問題なのか知りたかったからです。もし後者であれば、メンバー全員にわたしの失敗を伝えて、問題を共有する必要があると思ったのです。
わたしは部署の中でも最も経験の浅いテストリーダーです。他のテストリーダーは、入社したときから評価部署で働いていて、キャリアはわたしよりもずっと上です。おまけに、何年も同じテストチームを担当している人がほとんどで、自分の扱う案件については経験も豊富です。
おそらく、わたしが異動してくるまで評価部署ではこともなく、淡々と仕事が進んでいたことと思います。しかし、わたしがやってきて「ありえない」失敗をすることで、ベテランのテストリーダーが意識しなかった、あるいは過去に意識したとしても忘却の彼方に消えてしまった問題点がどんどんあぶり出されているのです。
そう考えると、わたしは失敗をすることによって部署の体制や、プロセスについてバグ出しをしているようなものかもしれません。本当に、とんだテストリーダーですね。
コメント
Jitta
第3バイオリンさんに拍手
第3バイオリン
Jittaさん
コメントありがとうございます。
いえそんな(照)。
こんなみっともない失敗してしまいましたが、
その分、得るものがたくさんありました。
次回はそれを生かして、うまくやりたいです。
バサ
第3バイオリンさん
お疲れ様です。本当にいい経験をされましたね。
私にも重なる部分があって読んでてジーンときちゃいました。
私は、IT業界に入ったのが20代後半ということもありかなり焦っていました。
3年経った今もまだ焦る癖は完全にはとれていませんが、開発リーダーの方の言葉に似たことを1年が過ぎた頃あたりに言われた事がありました。
あの言葉には本当に救われたと思います。
やはり自分の状況を客観的に、的確に見るように周りからの意見を頻繁にいただくのは大事ですよね。
なんだか
ミスして、立ち直って、改善のために動く。
自分自身のアクションにたいし、PDCAが出来る人は少ないですよ。
過去に、振り返れる失敗は糧になる。って言われた事がありまして、
ミスをして迷惑をかけてはいけないことだけど、ちゃんと糧になって、成長して、
迷惑かけた人達のお役に立てることで挽回をしようと、ちょっと前向きに
なれた気がします。
最近PDCAを回さずに、失敗をごみにしてる人を目にする事が多くなってきたので、
この記事を見て、妙な安堵感を感じました。
第3バイオリン
バサさん
コメントありがとうございます。
>お疲れ様です。本当にいい経験をされましたね。
>私にも重なる部分があって読んでてジーンときちゃいました。
ええ、このときはだいぶ荒れましたが(苦笑)
今となっては、いい経験だったと思います。
>私は、IT業界に入ったのが20代後半ということもありかなり焦っていました。
私も、もともと開発の仕事をしていて、評価の仕事に移ったのが1年半ほど前でした。
周りと比べても仕方ないのに、つい比べてしまうんですよね。
>3年経った今もまだ焦る癖は完全にはとれていませんが、開発リーダーの方の言葉に似たことを1年が過ぎた頃あたりに言われた事がありました。
>あの言葉には本当に救われたと思います。
バサさんにも、いい言葉をかけてくれた方がいらっしゃってよかったです。
そういう人がいてくれるだけで、本当に救われますよね。
>やはり自分の状況を客観的に、的確に見るように周りからの意見を頻繁にいただくのは大事ですよね。
自分がいっぱいいっぱいになってしまうと、周りが見えなくなって
どんどん道を外れて暴走してしまいますから、客観的な意見をいただくのは大事ですよね。
そして、そういう(ときには厳しい)意見を真摯に受け止められるようにしたいです。
第3バイオリン
なんだかさん
コメントありがとうございます。
>過去に、振り返れる失敗は糧になる。って言われた事がありまして、
>ミスをして迷惑をかけてはいけないことだけど、ちゃんと糧になって、成長して、
>迷惑かけた人達のお役に立てることで挽回をしようと、ちょっと前向きに
>なれた気がします。
そうですね。
今回の件で、たくさんの人に助けられました。そして、大切な気づきを得ることができました。
失敗した分は、これから取り戻していこうと思います。
>最近PDCAを回さずに、失敗をごみにしてる人を目にする事が多くなってきたので、
>この記事を見て、妙な安堵感を感じました。
失敗は辛くてみじめなことで、早く忘れてしまいたいという人もいるでしょう。
私も昔はそうでした。しかし、コラムニストになってから変わりました。
コラムニストを始めてから、失敗しても「これはネタになる!」と思うと、
必要以上に落ち込むことはなくなりました。
それに、コラムのネタにするとなると、失敗の顛末をはじめ、
なぜ失敗したのか、それを防ぐことはできなかったのか、など振り返って整理する必要があります。
これは正直言ってキツイです(苦笑)。
でも、そのおかげで失敗をうまく自分の成長につなげることができるようになったかな、と思っています。
インドリ
第3バイオリンさんは素晴らしいテストエンジニアだと思います。
第3バイオリン
インドリさん
コメントありがとうございます。
素敵だなんてそんな…嬉しいです。
こんなみっともない失敗をしてしまいましたが、
ただで起き上がるわけにはいきません。
絶対に、この経験を生かしてステップアップします。
第3バイオリン
インドリさん
ごめんなさい。間違えました。
素晴らしいだなんてそんな…嬉しいです。
どうやら照れるあまり動揺してしまったようです(苦笑)。
とみー
第3バイオリンさん体の張ったバグだしと、その周りの方々の助言や姿勢を読んで、いい現場だなぁと思いました。
今、私の部署に新人さんが多いのですが、どうも失敗を恐れて臆病になっています。
突き放して、失敗した場合、私が体を張って向き合ってみたいと思いました。
第3バイオリン
とみーさん
コメントありがとうございます。
>第3バイオリンさん体の張ったバグだしと、その周りの方々の助言や姿勢を読んで、いい現場だなぁと思いました。
私もそう思います。
このときは本当に、周りの人に恵まれていると思いました。
>今、私の部署に新人さんが多いのですが、どうも失敗を恐れて臆病になっています。
失敗するのは恥ずかしいし、かっこ悪いことですが、失敗しないと気づかないこともあると思います。
>突き放して、失敗した場合、私が体を張って向き合ってみたいと思いました。
上の立場になると、部下や後輩の失敗をフォローするのも大切な仕事になりますよね。
今回の恩返しといったら大げさですが、私もいつか、後輩が失敗したときにフォローできるようになりたいと思いました。