テストエンジニア時代の悲喜こもごもが今のわたしを作った

「WACATE 2009 冬」参加レポート(その1)――三浦半島の先端でテストへの愛を叫ぶ

»

 こんにちは、第3バイオリンです。

 前回のコラムで参加への決意表明をした「WACATE 2009 冬」に行ってきました。決意表明では「勉強会ブルーになってしまった」と書きましたが、実際に参加してみるととても楽しく、刺激的で有意義な時間を過ごすことができました。

 それでは、さっそく報告いたします。

■日時と場所

  • 日時: 12月12日~12月13日
  • 場所: マホロバ・マインズ三浦

 会場となったマホロバ・マインズ三浦は、神奈川県の三浦海岸沿いに位置しています。開催期間中は天気も良く(前日は暴風雨だったらしい)、海がきれいで、そして食事がおいしかったです! このあたりはマグロが名物らしく、滞在中はマグロ三昧でした。これだけでも、本当に参加してよかったと思います。

■参加者

 今回の参加者は55名、そのうち女性は9名でした。参加前は、「募集要項に相部屋って書いてあるけど、女性の参加者がわたしひとりだけだったらどうしよう……」と心配していましたが、どうやら取り越し苦労だったようです。他の女性の参加者にも聞きましたが、女性の参加者は年々増加しているそうです。

 ちなみに今回は初参加の方が6割、リピーターの方が4割でした。意外と初参加の方は多いです。リピーターの中には2007年の1回目からすべて参加しているという強者もいらっしゃいました。

 また、意外に思うかもしれませんがテストエンジニアだけではなく、開発担当の方もけっこういらっしゃいました。わたしも最初はテストのワークショップなので参加するのはテストエンジニアだけだと思っていました。しかし、考えてみれば開発担当者も開発内テストをしています。だからテストに関心を持つ開発者がいることはおかしいことではありません。

 参加者はみんなテストの仕事が好きで、モチベーションの高い方ばかりでお話していてとても楽しかったです。1日目の昼食のときに「カラオケのリモコンでテストケースを考えた」「このコーヒーサーバ、使い方がわかりにくい。ユーザビリティが悪いな」という会話があちこちから聞こえてきて、よい意味で「この人たち、何者!?」と思ってしまいました。

■今回のテーマとオープニング

 WACATE 2009 冬のテーマは「基礎・おぼえていますか」ワークショップを通してテストの基礎を見直そう、基礎についてもう一度考え直そうというのがテーマです。

 まずはWACATE副実行委員長の山崎 崇さんのオープニングセッションから始まり、すぐにポジションペーパーセッションに移りました。ポジションペーパーセッションでは、事前に提出しておいたポジションペーパー(説明はこちら)を見ながら同じ班の人と互いに自己紹介をします。

 このポジションペーパーセッションの前に、「とにかくいろいろな人と話しまくること!」と言われました。実際、この2日間はとにかく、「話さないともったいない」という気持ちでいっぱいでした。

■線・マニアックス

 1日目の最初のセッションはWACATE実行委員の村上 くにおさんによる「線・マニアックス」。テストで使用する「線」の基礎を数式とグラフでおさらいしました。おそらくもっとも有名な信頼度成長曲線から、聞いたことがなかった線までいろいろな線のお話を聞くことができました。

 そして、普段の業務であまりこういったものを活用できていなかったということにも気がつきました。テストリーダーをやっているのにこれではいけませんね。自分の業務に応用するにはどうしたらいいか、帰って考えてみようと思いました。

■同値分割・境界値分析

 午後一のセッションはWACATE実行委員の奥村 健二さん、加瀬 正樹さん、加文字 諭さんの「WACATEイケメン3兄弟」がお送りする「テスト技法の基礎の基礎~同値分割・境界値分析~」でした。

 同値分割と境界値分析はテストケース作成における基本中の基本です。それくらい心得ている……と思っていたのですが、演習問題をやってみると「頭でわかっているのと実際に活用できることは別」ということを痛感しました。

 講義を受ける前の演習の結果は「これって思い付きでしょ?」と言われても反論しきれないような内容でした。しかし、講義を受けた後でもう一度演習問題をやってみると、だいぶ説得力のあるテストケースを作成することができました。

■コミュニケーション・意識してますか?

 このセッションは講師を務める予定だった、電気通信大学大学院の河野 哲也さんが残念ながら新型インフルエンザで欠席されてしまいました。そのため急遽、WACATE実行委員の小山 竜治さんが代役で講師を務められました。

 コミュニケーションの大切さはいまさら言うまでもありませんが、特に若手は効果的なコミュニケーションが必要、と説明がありました。なぜなら、若手は上司に話をうまく伝えないと何もできないからです。

 それでは効果的なコミュニケーションを取るには何が大切かというと、それは「話の設計図」です。まず話し手が、話の設計図を頭の中で作り、設計図に基づいて話すことで聞き手が設計図を理解する……話し手と聞き手が設計図を共有することがコミュニケーションの基本、というお話でした。

 その後の演習で、3人1組のグループで「WACATEの参加費を会社に出してほしい」と上司にお願いに上がるというシチュエーションのもと、上司を説得するために話の設計図を書き、上司役の人たちに話をしてみました。

 反対に、「JSTQBテスト技術者資格認定試験の受験料を会社に出してほしい」とお願いされる上司役になって話を聞く、ということもやりました。

 それにしても、相手を説得するために話すことは難しいですね。とくに「お金をください」という説得の場合、費用対効果など、具体的なメリットを説明してもらえないとなかなか「はい」と言えないことを身をもって経験しました。このあたりは、実際の業務で意識することがなかったので、よい機会になりました。

■プレゼンテーションのプレゼンテーション(基礎編)

 日本IBMの細川 宣啓さんのプレゼンテーションセッションです。細川さんは前回のWACATEでも講師をなさったそうで、リピーターの参加者の中には細川さんのセッションを楽しみにされていた方もいらっしゃいました。

 講義そのものがプレゼンテーションのお手本になっていて、すぐに引き込まれてしまいました。最初に「メモは取らせません!」と宣言されたとおりでした(そうはいっても、多少はメモを取らせていただきましたが)。

 講義のなかで聴衆を引き付けるテクニックを見せていただきましたが、大切なことは事前の計画、準備と練習、そして本番で聴衆を巻き込み自分の流れをつくることです。そのために何が必要かというお話を聞かせていただきました。近い将来、主任昇格試験でプレゼンテーションをする機会がある予定なので、とても参考になりました。

 あと、「若いうちにどんどんプレゼンテーションの機会を作って登壇しよう、若いうちは『失敗』などない」という言葉が印象に残りました。

■情報探索キホンのキ

 1日目最後のセッションはWACATE実行委員の川西 俊之さんの「情報探索キホンのキ」でした。

 エンジニアであれば、本を読んだり仕事をしたりしている最中で、わからないことが出てくるのはよくあることです。そのとき、本に記載されている参考文献を読むだけ、わからない単語をググるだけ、で終わらせているようでは、残念ながら情報探索レベル0です! と言われてしまいました。正直言って「ドキッ」としました。

 日本語だけでなく英語の文献も読むこと、論文も検索すること、1つのテーマについて複数の本やサイトをあたることetc. ……情報探索の基本について説明がありました。

 このセッションのあと、「最後に英語の本やサイトを読んだのはいつだっけ……大学院修了後、論文を読んだことがあったかな」と考え、ちょっと危機感を覚えてしまいました。これからは英語の本やサイト、論文も読むようにします。

  ◇ ◇ ◇

こうして1日目のセッションは終了しました。このあとは夜のお楽しみ、ディナーセッションと夜の分科会があるのですが、長くなるので次回に続きます。

Comment(4)

コメント

ビガー

ビガーです。こんばんは。

>情報探索レベル

これって何段階くらい定義されていたんでしょうか?

並列読みして、情報を大量にインプットすることは案外重要ではないと思っています。なぜなら、私には多すぎる情報を活かし切るスキルがないので(苦笑)

しかし、本当に重要なのは、テストでも実装でもそうですが、「問題」は何なのか?という本質的なコトを自分で整理でき、インプットした情報を取捨選択すること。

そして、よりスピーディにクオリティを高める活動を続けることが大事だと思っています。

情報探索とはズレましたが、情報探索は何のためにやっているかを考えるとこの辺りが肝になると思っています。

第3バイオリン

ビガーさん

こんばんは、コメントありがとうございます。

>>情報探索レベル

>これって何段階くらい定義されていたんでしょうか?

手元にある予稿集では、5段階に定義されています(カッコ内は私の補足です)。

レベル1:原典にあたる(参考文献の参考文献…まで読む)
レベル2:英語を恐れない(英語の文献、サイトを読む)
レベル3:論文を読む
レベル4:本当かどうか検証する(ひとつのテーマで複数の文献を読む)
レベル5:自分用の文献データベース(情報を整理する)

つまり、情報をなるべく早く、種類も多く見つけること(レベル1~3)、
見つけた情報から信憑性の高いものを取捨選択すること(レベル4)、
情報を整理していつでも引き出せるようにしておくこと(レベル5)、
これが「情報探索キホンのキ」というわけです。

>並列読みして、情報を大量にインプットすることは案外重要ではないと思っています。
>、「問題」は何なのか?という本質的なコトを自分で整理でき、インプットした情報を取捨選択すること。

まさにビガーさんのおっしゃるとおりです。
ちゃんと基本をおさえていらっしゃる!

ちなみに私のレベルは…今はノーコメントでいいですか(苦笑)。

ビガー

ビガーです。こんばんは。

情報探索キホンのキを開示いただきありがとうございます。
ホとかンとかもあるんでしょうね、多分。興味深いです。

昔、本を読む本とかいう本(何だかわけわからん)の趣旨と似ていると感じました。
必要に迫られると大体同じようなアプローチになるんでしょうかね。

そういえば、学校教育って、こういうことをまったく教えない(私が授業をマジメに聞いていないだけかも)気がするのは、何でなのでしょうかね。不思議です。
それと、最近思うんですが、原典にあたることが良い的なコトが云われている気がしますが、原典にあたっても、結局作者のバイアスがどうしてもかかるし、あたっていく中でドンドン抽象的になっていくから、中間くらいが一番実践向きだと思うんですよね。
スピードとクオリティを上げるには、結構大事だな~と思っています。

ちなみに英語は、苦手です。が、情報英語は不思議と好きなんですよね。やっぱり興味あることってのは、大きい気がします。

お邪魔しました。

第3バイオリン

ビガーさん

>情報探索キホンのキを開示いただきありがとうございます。
>ホとかンとかもあるんでしょうね、多分。興味深いです。

あるかもしれませんね(笑)

>原典にあたっても、結局作者のバイアスがどうしてもかかるし、あたっていく中でドンドン抽象的になっていくから、中間くらいが一番実践向きだと思うんですよね。

書物というのは著者によってアプローチの仕方も解釈も違いますからね。
だからこそ、レベル4に挙げたような、同じテーマの複数の書物を読む必要がある、
と川西さんはおっしゃっていました。

一昔前と違って、現在はIT関連の専門書もたくさんの種類が出版されていますし、
インターネットという便利な道具もあります。

情報にアクセスすることはたやすくなりましたが、
だからこそ、自分にとって有益な情報の見つけ方がわかりにくくなっているのかもしれませんね。

コメントを投稿する