自分のスキルを誰かのために生かすって素晴らしい!
こんにちは、第3バイオリンです。
10月17日に、新潟県の柏崎で震災復興祈念コンサートが開かれ、わたしもエキストラとして参加しました。本当に素晴らしいコンサートで、わたしも参加してみていろいろと思うところがありました。
今回は、そのお話をしたいと思います。
■震災復興祈念コンサート
柏崎は2004年の中越地震、2007年の中越沖地震で大変な被害を受けました。柏崎にも市民オーケストラがあるのですが、団員の方々も多くが被災し、定期演奏会などで使用していた市民会館も壊れて使えなくなってしまいました。
中越沖地震から2年が経ち、今こそ柏崎市民を勇気づけるために震災復興祈念コンサートを開催しよう、そこでベートーヴェンの「第九」を演奏しようという話が持ち上がりました。もともと柏崎のオーケストラで「第九」を演奏するという企画があったのですが、地震のため中断してしまっていたそうです。
しかし、コンサートの開催にはいくつかの問題がありました。
まずは会場です。柏崎市内には壊れてしまった市民会館以外に「第九」のような大規模な曲の演奏ができるホールがありません。現在は新しい市民会館を建設中ですが、完成まであと3年待たなくてはなりません。
それまではコンサートができないと誰もが諦めかけたとき、指揮者の先生が「市民会館じゃなくても広くて人がたくさん入れる場所、たとえば体育館などを会場に使えないだろうか」とおっしゃったそうです。先生の鶴の一声で市の体育館を会場にすることが決まりました。
会場が決まったところで、また別の問題が発生しました。
ホールよりも広く、音が響きにくい体育館で演奏するためにはそれなりの人数が必要です。しかし、柏崎のオーケストラの団員だけではとても足りません。そこで、新潟県内外の他のオーケストラからエキストラを募集することになったわけです。わたしが所属するオーケストラにもこの話が舞い込み、特に弦楽器の人手が足りないので余裕があればぜひ参加してほしいとのお話でした。
わたしはこれまで(学生時代も含め)エキストラの経験はありません。しかし「第九」はわたしのオーケストラでは毎年12月に演奏しているので曲を仕上げることはそれほど大変なことではありません。なにより、こういった趣旨のコンサートに参加することは単に楽器を演奏する以上の経験になると思い、参加の申し込みをしました。
■コンサートにかける柏崎市民の想いとわたしの想い
9月に2回ほど合唱も含めた全体練習に参加しましたが、練習のたびに柏崎のオーケストラの団長さんから「今回エキストラ参加してくださる皆さんには本当に感謝しています。本番もよろしくお願いします」と声をかけていただきました。
それだけでもありがたいお話ですが、さらに「これは(良い意味で)とんでもないコンサートになりそうだ」と思わせるできごとが起こりました。
本番当日のリハーサル終了後、時間があったのでわたしは会場の外に散歩に行きました。そこで目にしたのは開演の2時間半も前から入り口に並び始めた観客の姿でした。コンサートの実行委員だけではなく、柏崎市民のこのコンサートにかける想いを目の当たりにしたような気がしました。これはわたしの方も本気で向き合わなくては、と思いました。
そして本番。
まずはコンサートの開始を告げるファンファーレ、そしてジュニア合唱団の合唱から始まりました。ステージの袖で子供たちが「翼をください」や「ビリーブ」を歌っているのを聞くと、自然と涙がこみ上げてきました。どうして子供の合唱というのはこんなに胸に響くものなのでしょうか。
「これが終わったらステージに上がるのに、今ここで泣いちゃダメだ」と後ろを向いたら、すでに泣いているエキストラの方がいました。それを見たわたしは本当に泣きそうだったので、もう一度舞台の方に向いて、少し上を向いてなんとか耐えました。
そして、いよいよ「第九」の演奏が始まりました。
何度も演奏してきた「第九」ですが、今までにないくらい一音一音かみ締めるように弾きました(別に今まで適当にやっていたわけではないですよ)。最後の音を弾き終わった瞬間にこれまでにないほどの拍手に包まれ、コンサート終了後の充実感はまたとないものでした。
このコンサートには2000人以上の観客が来てくださり、立ち見も出たそうです。わたし自身、本当に参加してよかったと感じました。
■誰かのために役立てる喜びは仕事も同じ
趣味でやっているバイオリンがこういう形で人の役に立てたことは嬉しいものです。同時に、自分のスキルを生かすことで誰かの役に立つという意味では仕事も同じだと思っています。
実はこのコンサートの翌日に、わたしは応用情報技術者試験を受験しました。ある時期から、わたしにとって資格を取ること、勉強したことを仕事に生かすことは自分のためだけではなく、誰かのためという気持ちが強くなりました。
かつて自分のためだけに勉強し、資格を取っていたわたしは仕事に行き詰り、スキルアップのモチベーションが保てない状態に陥りました。そんな状態でどうすればいいか迷っていましたが、わたしの仕事に対して「ありがとう、助かったよ」と言ってくださる方々の言葉を素直に受け止め、「わたしに感謝してくれる彼らのために何ができるだろう」と考えるようになって、迷いは消えていきました。
自分のスキルが誰かの役に立つ、それで笑顔になれる人がいる。そういう人がいる限り、わたしはこれからもいろいろな種類のスキルを高め、それを世の中に還元していきたいと思います。
■おまけ:うれしい再会
このコンサートで、大学オケ時代の先輩と後輩に再会しました。先輩とは彼が卒業してから、後輩とはわたしが卒業してからずっと会っていませんでしたが、2人と話していると空白の時間はどこへやら、久々に学生時代に戻った気分で楽しくなりました。
音楽が取り持つ縁というのは本当に不思議なものです。いつかまた、彼らと共演できたらいいなと思います。