テストエンジニアのキャリアを考える(その1)――資格
こんにちは、第3バイオリンです。
最近、資格や勉強法についての話題で盛り上がっていますね。そこで今回は、わたしが知るテストエンジニアのための資格と、資格について思うところをお話ししたいと思います。なお、これから3回に渡ってテストエンジニアのキャリアについて、わたしの考えを展開していきたいと思います。
■ソフトウェアテストの資格
ソフトウェアテストの資格と聞いて、「テストに資格なんてあるの?」と思ったそこのあなた。大丈夫です。知らなくても恥じる必要はありません。わたしもつい8カ月前まで知らなかったのですから。
今回は2つの資格を紹介したいと思います。
まずご紹介するのは「JSTQB認定テスト技術者資格」です。この資格はJSTQB(日本ソフトウェアテスト資格認定委員会:Japan Software Testing Qualifications Board)という組織が運営しています。JSTQBは国際的なテスト技術者認定組織であるISTQB(International Software Testing Qualifications Board)に加盟しています。そのため、JSTQB認定テスト技術者資格はISTQBの各加盟国の資格と相互認証を行っています。つまり、国際的にも通用する資格ということです。日本では2006年8月から開始された新しい資格です。
この資格には3つのランクがあります。上から順に
- Expert Level
- Advanced Level
- Foundation Level
となっています。日本で受験できるのは今のところFoundation Levelだけです。わたしは2009年2月7日に実施された試験を受験してきました。
Foundation Levelで問われるのは基本的なテストプロセス、テスト設計やテスト実施のための手法、テスト支援ツールなどに関する知識です。初歩レベルとはいえ、かなり幅広い知識が問われます。
テストエンジニアならぜひ押さえておきたい資格ですが、受験料が2万1000円と高額であること、開催場所が北海道、宮城、東京、大阪、愛知、福岡、大分の7か所しかないことがいささか難儀です。わたしの場合、交通費込みで4万円弱かかってしまいました。
肝心の試験の手ごたえは……まずまずといったところです。今は結果待ちです。合格したら「こいつはテストエンジニアとして、松竹梅で言えば梅のランクかぁ」と外国人エンジニアにも一発で分かってもらえます。やった、世界にアピールできるぞ! って、梅のランクではアピールとは言えませんね。早く日本でAdvanced Level以上の資格が受験できるようになることを祈るばかりです。
もう1つご紹介するのが「品質管理検定(QC検定)」です。この資格はJIS(日本規格協会)が運営しています。わたし自身、上司からこの資格を紹介されただけで受験はしていません。しかし、興味はあるのでJISのサイトから無料でダウンロードできる4級のテキストを読んだ範囲でのわたしの所感を述べたいと思います。
この資格はテストというより、テストを含めた品質管理全体に関する知識が問われます。4級では品質管理に関する用語やその意味を理解することがねらいです。4級の受験者として想定されているのが「品質管理を初めて学ぶ人、新入社員や学生」ということなので、PDCAサイクルや報・連・相といった社会人としての常識やマナーも試験範囲に入っています。上級になると言葉の意味だけでなく、QC7つ道具などの使い方も身につける必要があります。
どちらかというと、ソフトウェアよりも製造業向けといった印象があります。ただ、テスト設計や結果の分析に関する知識も問われているので、わたしのようなソフトウェアのテストエンジニアにも役立ちそうです。
以上、テストエンジニアのための資格の紹介でした。他に良い資格をご存じの方がいらっしゃいましたらコメントをください。
■わたしがいま一番取りたい資格
QC検定も気になるところですが、わたしがいま一番取りたいと思っている資格は「応用情報技術者試験」です。実は開発をしていた時期、まだソフトウェア開発技術者試験と呼ばれていた頃に受験しようと思って少し勉強していたのですが、ちょうどそのころ精神的に行き詰まり、受験どころではなくなってしまいました。今は落ち着いて余裕も出てきたので、再チャレンジしようと思っています。とはいえ、2月までJSTQBの試験勉強に集中していたので、4月は受験しません。10月の試験に向けて、ゆっくり勉強しようと思います。
わたしがこう言うと、今は評価部門にいるのだから、開発系の資格である応用情報技術者なんて取る必要ないのでは? と思う方もいるかもしれません。しかし、わたしはテストエンジニアとして開発者と対等に渡り合うためには、応用情報技術者くらいの知識は必要ではないかと考えています。わたしはできる限り、開発者と同じ言葉で話したいのです。もちろん資格を取ったからといって、すぐに開発者と同じ言葉を話せるとは限らないでしょう。しかし、少なくとも歩み寄りたいという意思があることは分かってもらえるのではないかと思っています。
開発から離れ、わたしの中のプログラマの血は薄くなりつつあります。しかしそれではあまりにもったいない。良いものも悪いものも含め、開発の考え方を理解できることは評価に役立つはずです。プログラマの血はこのまま保ち続けたいです(注意:わたしが所属する評価部門は、開発経験者がけっこういます。だから、わたしが特別な存在ではありません)。
えっ、わたしの勉強法ですか? ひたすらテキストを読んで、練習問題を解いて……って、学生時代と進歩していません(苦笑)。勉強するのは主に会社の昼休み時間を使っています。頭が活性化したまま心は落ち着いているので、テキストの内容が頭に入りやすいのです。
また、自分のデスクに向かってテキストを読んでいると、周りの人から「何読んでいるの?」と声をかけられることがあります。資格の勉強をしていることを話すと、その人が受験したときの貴重な経験談を聞かせてくれたり、資格に関連する有力な情報を提供してくれたりすることがあります。ありがたいですね。
次回は、資格と並ぶもうひとつのキャリアの指標である「出世」についてお送りしたいと思います。
コメント
組長
こんにちはー。
「JSTQB認定テスト技術者資格」で世界にアピール!!かっこいいですね!!早く上位の試験も日本で受けられるようになったら良いですよね。でも、会社から交通費を支給してくれるなら海外まで乗り込んでいくのも楽しいかも。
とか、ノンキなことを考えてしまいました。ごめんなさい・・・。
私を鍛えて下さった前の現場のお客さん側の上司(すいません、ややこしい表現で)は製造業のSE出身だったので品質管理とか、QC7つ道具とか、何となく言葉だけは覚えています。懐かしいです。
「努力は人を裏切らない」誰が言った言葉か忘れましたが、無理せず、お互い頑張って行きましょうね★
m
はじめまして、こんにちは。
自分も梅ランクの者です。
>肝心の試験の手ごたえは……まずまずといったところです。
すばらしいです! 自分が受けたときは、引っ掛け問題に引っ掛かってやしないかと、あとから結構ドキドキしていました。
合格をお祈りします!
第3バイオリン
>組長さん
こんばんは。
>でも、会社から交通費を支給してくれるなら海外まで乗り込んでいくのも楽しいかも。
それもちょっと考えてみたんですけれど、間違いなく英語で出題されるでしょうから、まずは英語の勉強をしなくちゃ(笑)
>「努力は人を裏切らない」誰が言った言葉か忘れましたが、無理せず、
>お互い頑張って行きましょうね★
ありがとうございます。
そうですね。今は厳しいご時世ですが、こういうときこそ自分を磨く努力が大切です(もちろん、女磨きもね)。
今努力した分は、絶対あとになって効いてきますよ。
>mさん
はじめまして。書き込みありがとうございます。
>自分も梅ランクの者です。
おおっ、すでに合格されているのですか。すごいなあ。
>>肝心の試験の手ごたえは……まずまずといったところです。
>すばらしいです! 自分が受けたときは、引っ掛け問題に引っ掛かってや
>しないかと、あとから結構ドキドキしていました。
いや、他の人がもっとよくできていたらわかりませんよ(苦笑)。
私も試験終了3分前くらいに間違えている問題を見つけ、あわてて直しましたので、
本当に大丈夫かはちょっと怪しかったりします。
>合格をお祈りします!
ありがとうございます。
投資した金額が金額だけに、不合格だったらシャレにならないです(汗)。
ヨギ
こんにちは。
精力的に活動されてるのですね。
JSTQBですが、Advanced Level以上が日本で行われないかなと思ってるんですケドねえ。
(こういうこと言ってるヤツがFoundation Level落ちたりするんですケドねえ)
実は僕も、Foundation Level受けようと思ったことあります。
第3バイオリンさんは実際に受験されてるので、気を悪くしないでほしいのですが、
過去問題見たら、あまりにアレというか、現場で役に立たないと感じ(資格ってそんなもんですが)、
このためにお金と時間を使うのはちょっと...と思って見送りました。
でも資格は資格。
そのうちJSTQBの資格持ってないとテストエンジニアとして契約しませんとかなりそうなので、
Advanced Level以上が日本で行われるようになったら受験してみようと思ってます。
>わたしはテストエンジニアとして開発者と対等に渡り合うためには、
>応用情報技術者くらいの知識は必要ではないかと考えています。
>わたしはできる限り、開発者と同じ言葉で話したいのです。
えらいなあ。でもホント、その通りですよ。
「この人は開発ができる(或いはその知識がある)」と思われると、
開発チームの態度変わりますから。
僕はいろんな客先にテストエンジニアのリーダとして行ってますが、
どこでも最初は軽く扱われます。 ハッキリ言うと蔑視。
口には出しませんが、「テスト?誰でもデキんじゃん」という態度をされます。
「しかも40才くらいでテストって、ぷっ」みたいな。
どう思われてもいいのですが、仕事がしにくいので、
機会を見て、開発の深い話をワザと延々とぶちかまします。
そうするとオカしいくらいに、ころっと態度変わります。
それまでは当日にいきなり「ここのテストヨロシク」だったのが、
「すいません、来週テストのお時間取れますでしょうか」みたいに。
大げさでなくほんとです。
第3バイオリンさんがテストエンジニアとして存分に力を振るうためにも、
ぜひ開発の勉強を進めていってくださいね。
応援しております。
第3バイオリン
>ヨギさん
>JSTQBですが、Advanced Level以上が日本で行われないかなと思ってるんですケドねえ。
>(こういうこと言ってるヤツがFoundation Level落ちたりするんですケドねえ)
それ、私の先輩です。
Foundation Levelに落ちて、Advanced Levelが始まったら受けるって言ってました。
>第3バイオリンさんは実際に受験されてるので、気を悪くしないでほしいのですが、
>過去問題見たら、あまりにアレというか、現場で役に立たないと感じ(資格ってそんなもんですが)、
>このためにお金と時間を使うのはちょっと...と思って見送りました。
それは確かにあるかもしれません。
私もテキストを読んでみて、勉強したからといってそのまま実践できるもんじゃないなと思いましたね。
私が受験しようと思ったとき、同じ部署にはまだ合格者がいなくて
「合格者第1号になってやるぜー!」という意気込みでいたのですが、
その後しばらくして異動してきた方が既に合格されているのを知り、ちょっとテンション下がりました。
>そのうちJSTQBの資格持ってないとテストエンジニアとして契約しませんとかなりそうなので、
>Advanced Level以上が日本で行われるようになったら受験してみようと思ってます。
今はまだマイナーな資格かもしれませんが、人気が高まってくるとテストエンジニアとして必須になるかもしれませんね。
私が受験した会場では200~300人くらいの人がいました。
年齢も私が見る限り20代~50代くらいとかなり幅広かったです。
私もAdvanced Levelが日本で開催されるようになったら受験するつもりです。
もしかしたら、どこかの試験会場でヨギさんに会ったりして(笑)。
>僕はいろんな客先にテストエンジニアのリーダとして行ってますが、
>どこでも最初は軽く扱われます。 ハッキリ言うと蔑視。
うわー、ひどい。
私は自社のプロジェクトのテストをしているのでそういうあからさまな差別はないですが、
自分たちが一番大変、どうせ評価には開発の苦労なんてわからない、みたいに思っている人はいそうですね。
>どう思われてもいいのですが、仕事がしにくいので、
>機会を見て、開発の深い話をワザと延々とぶちかまします。
>そうするとオカしいくらいに、ころっと態度変わります。
日本語は通じないけどプログラミング言語なら通じる人には効果的ですよね。
>第3バイオリンさんがテストエンジニアとして存分に力を振るうためにも、
>ぜひ開発の勉強を進めていってくださいね。
>応援しております。
ありがとうございます。
少なくとも今は評価から開発に歩み寄る姿勢を見せないといい関係が築けない状態です。
応用情報技術者だけでなく、もっと上の資格にも挑戦したいですね。
小夜
こんな資格があるんですね。知りませんでした。
Advanced Level が受けられる日本からもっとも近い会場はどちらになるのか木になります。
もしご存知でしたら教えていただけたらと思います。
第3バイオリン
小夜さん
はじめまして。
テストの資格に興味を持っていただけて、嬉しく思います。
さて、Advanced Level以上の受験ができる最寄りの国ですか。
ISTQBのサイトを見てみますと、加盟国(2008/07/05現在)の中で日本に近いのは中国、韓国ですね。
アジア圏というくくりで見ると、インド、マレーシア、バングラデシュ、ベトナムがあります。
また、日本から行きやすい国ということでオーストラリアも挙げてみます。
ただし、これらの国でどのレベルのテストが実施されているのかはさすがにサイトの情報からはわかりません。
それぞれの国の組織に直接問い合わせる必要があるでしょう。
加盟国の中で確実にAdvanced Level以上のテストを実施していそうな国は
やはりアメリカでしょうね。