会社に泊まるということ、生活するということ。
この業界にいると、納期前、トラブル発生時などに会社に泊まるというのは、よくあることです。
良いことかというとそんなことはなく、悪いことではありますが、残念ながらよくあることです。
3社目での出来事です。
数人で立ち上げたベンチャーは、マンションの1室をオフィスとしていました。2LDKの分譲賃貸。リビング・ダイニングが仕事場、廊下側の暗い一部屋がサーバルーム、もう1部屋が空いていて、物置として使っていました。
マンションで仕事ができるというのは便利な面があって、どんな格好でも、Tシャツ、短パン姿でもOKです。最初のころは日銭を稼ぐということで常駐していたメンバーも、受託仕事を獲得して自社オフィス、すなわちマンションに戻って仕事をしていました。そんなぼくも然り。
客先訪問があるときは備え付けのクローゼットに置きっぱなしにしているスーツに着替え、下駄箱から革靴を取り出して出かけていくわけです。そして戻ってくると、またTシャツ、短パンに着替え、と。
当時のぼくの勤務時間は9時~23時半。23時半だとギリギリ終電に間に合います(世間的には間違っていますが、ベンチャーだと当たり前だと思っていました。若かった)。
朝から晩までというやつ。
自宅に着くのは0時過ぎ、シャワーを浴びてすぐ寝ます。8時に起きて飛び起きて。と、こんな生活。
9時出社って意外に早いかと思うかもしれませんが、これにはわけがありまして。自分は泊まらないようにしていたのですが、やがてメンバーは泊まるようになってきて、例えば9時半くらいに出社すると電話が鳴っていたりするんですよ。で、メンバーは徹夜だったのだろう、疲れていてまだ寝ている、起きない、誰も出ない……。これ見て「こりゃ、やばい! 電話番がいない!」
ということで、朝一の電話番をするために9時に行っていたわけです。いわばぼくが「最後の砦」です。当たり前ですが、設立当初は事務スタッフを雇う余裕などありません。自分たちで電話応対です。
こんな会社生活をしていたわけですが、だんだん仕事以外のことが面倒くさくなってきます。分譲賃貸ですからきちんとしたバスルームがあるんですよ! ぼくのワンルームのユニットバスなんかより素敵な広いバス。ボタンひとつで給湯。
ということで、会社で風呂に入るようになります。20時くらいになると風呂です。ゆっくり湯船に浸かって気分転換、そしてもう一仕事。終電で自宅に帰ってからは、もう寝るだけです(お風呂の後はハミガキ)。
そしてキッチン。分譲賃貸だから当たり前にシステムキッチン、ガスコンロ。さすがに料理はしませんでしたが、会社が福利厚生? がてら冷蔵庫を買ってくれたので、ジュースはストックできる。ガスレンジがあるからお湯を沸かしてコーヒーでも紅茶でも、と。自宅からマイカップを持っていきます。カップ麺も余裕で。
そして、仮眠用の毛布だったのにいつの間にか敷布団と枕が用意されて、しっかりとした布団一式に。
気がつけば月曜の朝に1週間分の着替えとタオルが入ったスポーツバックで出勤し、週末に洗濯に帰る、という状態になっていました。会社で生活。
快適です。でも、なんか間違っています。
仮に日が変わる24時まで仕事をした場合でも9時に起きればよいから、9時間眠れます。充分過ぎる睡眠時間です。1時まででも8時間。だからといって、ずるずるする性格ではなかったため、しっかり8時間以上寝てました。完璧です。
16時間勤務の8時間睡眠(食事とか風呂とかありますが、念のため)。
……間違っていますが。
同僚の机はうず高くCDが積まれていたっけ。ぼくの場合は、PCに音楽ソフトが入っていました。
最後のころには、洗濯機も完備されて(分譲賃貸だからもちろん置き場がある)、さらには物干し竿まで。でも、ぼくはその洗濯機を使った覚えがない。なぜだろう?
そしてその会社で生活する生活は、オフィスビルへの移転と共に幕を下ろしました。
当時を思うと、独り身だったからできたんだろう、と。結婚していた同僚は、何だか嫌な雰囲気を漂わせていたし。夫婦仲が悪化していた模様です。家で食事をしないどころか、帰らないのなら、当たり前か……。
いまは絶対できないわ。
最近ですが、馴染みの整体で仕事の話になり「この間のお客さん、2日徹夜という方でしたよ」と言われ、思わず「着替え持って1週間泊まりこんでいたことありますよ」と言ったら、「上がいるものだ」と呆れられました。
そんな中、昔のことを思い出しました。
はじめまして。けいいちっくです。というか「けいいちっく」と名乗ります。
現在30半ばのエンジニア♂です。所帯持ち。PMやらPLやらSEやら、それっぽいことをやっています。いまの会社が5社目。
その中のエピソードを振り返っていこうと思います。お付き合いよろしくです。