言語の歴史は人類の歴史。そして人類はコンピュータを言語で動かすようになった。

「簡単で分かりやすい」を追及しすぎるとエンジニアとして詰むという話

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基本的に「簡単で分かりやすい」はスタートダッシュで問われる要素だと思っています。簡単で分かりやすいというコンセプトの技術書は、初心者にはお勧めできます。ただ、技術を構成する要素が多数にわたり、多数の組み合わせが発生してくると、どうやっても簡単にはまとまりません。そうなると、「簡単で分かりやすい」が一つの観点を元に切り取った情報になります。

人間が一度に理解できる情報量を、200ccのカップだとします。ホットケーキを作りたいと思った時、200ccの牛乳を測ることはできます。ただ、卵を入れて混ぜるには200ccのカップはあまりに小さいです。材料を何回かに分けて大きな器に移して作業しなければ、ホットケーキを焼く前のトロトロなやつを混ぜられません。「簡単で分かりやすい」を求めるのは、200ccのカップだけで全部やろうとするのと似たようなものです。

スタートダッシュに求められる要素と、中級、上級で求められる要素は違います。ただ、日本の学校では一貫して暗記中心の同じ手段で対応します。その影響なのか、レベルによって手段が変わると思わない人が多いようです。なので、全レベル一貫した方法というのを模索しがちです。「簡単で分かりやすい」というのは、短距離走的なアプローチです。ゼロから1に至るアプローチとしては良いですが、1から100に育てるようなケースで有効は言えません。

例えば、「簡単で分かりやすい」方法が三つあったとしましょう。それぞれ、適用できる条件が違ったとしましょう。そうなると、この三つを使いこなすのに必要な情報量が、三つの方法と条件分岐のパターンになります。単純に情報量が増えることで簡単ではなくなります。また、条件分岐が入ることで複雑になり、分かりにくくなります。「簡単で分かりやすい」も、数や条件が加わると難しくなります。やろうとしていることが複雑な以上、一定の難易度は必ず伴います。

中級以上になって求められるのは、「簡単で分かりやすい」ではなく、「カテゴライズと優先順位」だと思っています。上級になると「組み合わせと条件の切り分け」が加わります。何かを説明するにしても、「簡単で分かりやすい」ができないと、「カテゴライズと優先順位」なんてできません。「カテゴライズと優先順位」も同様です。そういう意味では、「簡単で分かりやすい」は基礎です。しかし、基礎だけで全部と勘違いする人は基礎を超えることはできません。それぞれのレベルによって必要な要素は異なるということです。

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