2025年の崖の本当の問題 (コメントに答えてみるシリーズ2)
皆さんは2025年の崖というのをご存じでしょうか。私は、言葉は聞いたことがありましたが、コラムのコメントでこの言葉を見て、調べてみた次第です。簡単に言えば、現行踏襲をやりまくったシステムが老朽化、複雑化、ブラックボックス化して国際競争力を低下させますよという話です。ただ、現場で状況を見ていれば、誰もが納得することでしょう。そもそも、SIerのスキルが低すぎて「現行踏襲」しか手札がありません。私はの認識では、現時点でも崖から落ちています。
2025年の崖による本当の問題は、国際的競争力が落ちることではないと思います。もっと深刻なのは、システムが維持できなくなり、社会的な影響が出ることではないでしょうか。技術者をないがしろにしてお金稼ぎに奔走した結果、現代社会の維持に必要なIT基盤を維持できなくなるというのが、私の考える最悪のシナリオです。経済的な側面から語られる情報はいろいろ見つかりましたが、IT基盤の崩壊のリスクについて言及されている情報はあまりありませんでした。維持費がかさめば、経済的理由でシステムが崩壊するリスクも高くなります。
もし、システムが崩壊すれば大きな打撃を受けます。これが行政で使用しているようなシステムであれば、社会的な影響も大きくなります。現時点で多くのシステムが複雑化し、ブラックボックス化し、すでに多くのリスクを抱え込んでいます。しかも、熟練者不足に陥っています。ここまで酷ければ、リスクではなく実際に損失が発生していると考えるべきでしょう。そのうえで、システムが壊れた時の被害を最小限にとどめるアプローチを取った方が賢明かと思います。この期に及んで「国際競争力」という言葉が出ること自体、ナンセンスに感じます。
凋落はすでに起きています。これを2025年に起きると思っているのであれば、発想が遅れています。むしろ、2025年にシステムが運用不能になるリスクが増大するという非常事態宣言と受け取る方が妥当かもしれません。実際にシステムが壊れだしてからアクションを起こすのでは手遅れです。今、日本は「国際競争力」を語れる立場にありません。「国際競争力」を語りたいなら、システムの運用をまっとうな価格と体制で維持できるできるようになってからです。自分たちの作ったシステムの維持もままならないのに「国際競争力」は状況を舐めています。
競争力は問題を抱えたままでも伸ばすことができます。日本が技術大国と呼ばれていた時も、いろいろな問題を抱えたまま成長を続けていました。成長時に積み残した問題は、成長が止まった時に明るみになります。それが現在の日本の状況です。現在、調子よく成長を維持している国でも、成長が止まった時にいろいろな問題が明るみになると思います。そういう観点から考えれば、日本は一足先に成長期に積み重ねた問題を清算しているのかもしれません。ちょうど日本が問題の清算を終えた頃に、他の国が成長のために積み重ねた問題が明るみになって成長が滞れば、相対的に日本は返り咲くかもしれません。