組み込み系システムに3年、オープン系システムに7年。徹夜がこたえるお年頃。独身貴族から平民へと降格したホリは、墓場へまっしぐらなのだろうか……。

あなたはITエンジニアに向いていますか?

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 「あなたはITエンジニアに向いていますか?」

 こう聞かれたら、あなたは何と答えるだろうか。

 自信を持って「向いています!」と答えるだろうか。それともうつむき加減で「向いていません」と答えるだろうか。

 この業界に入ったきっかけとしてはいくつかあるのだろう。

  • たまたま求人があったから
  • 理系で情報系の学校へいってたから
  • パソコンが好きでプログラミングが趣味だったから

 いろいろあると思うが、僕の場合はプログラミングに多少興味があったからだった。

■趣味と実益を兼ねる■

 趣味とはいかないまでも、プログラミングの授業は楽しく、プログラムを書くことが苦ではなかった。その延長線上ということで、必然的にこの業界へ入ったというわけだ。

 趣味を職業にすると趣味は趣味でなくなるとよく言われるが、僕の場合は楽しく仕事ができていたのだ。プログラミングの醍醐味を感じたのも、社会人に入ってからだと思う。プログラムにのめり込んだ時など、家に帰ってから次の日、会社に行くまでが待ち遠しくて仕方がなかったでのである。

 なかなか思うどおりにプログラムが動作せず、デバッグに四苦八苦しながらも楽しかった。頭の中ではアドレナリンが出まくっていたのだろう。気付けば何時間もぶっ続けで作業していた、なんてこともザラだった。そして、完成したときの充実感ときたら、下手なストレス解消法よりも、ストレス解消できていたかもしれない。

 そんな楽しい状況にもマンネリ化がやってくる。プログラムの達成感が昔ほど得られなくなったとき、僕はある出会いに衝撃をうけたのだ。

 それは、自分ではまったく歯が立たないほど、プログラミング能力に長けた人との出会いだった。

 彼と自分とは根本的に頭の構造が違っているように思えたのだ。天性の才能というのだろうか、彼はプログラミング能力だけずば抜けていたのだ。そして、僕は彼と自分を比較し、自分はITエンジニアに向いていないと思ってしまったのだ。

 本当のITエンジニアとは彼のことを言うんだと、当時の僕は思った。おそらく彼にはITエンジニアが天職だったのだろう。僕は、彼と比較して自分の能力の低さを悲観し、そして、自信をなくしていったのだった。

■天職は何ですか?■

 この業界にいるとさまざまな人に出会うことがある。パソコン大好き。マニアックな知識満載な人。職人的プログラマ。すばらしく見栄えの良い資料を作る人。MFCをデバッグし、バグを発見する人。それらの人たちと自分を比較するたびに、僕には他に天職があるのではないかと思ってしまうのである。

 さまざまなポジションを経験し、今はほとんどプログラムを書くことがなくなった。それぞれの能力を比較すると、自分が劣っていると思うことばかりだ。しかし、僕は気付いたのだ。総合的な能力で勝負しよう。プログラミングでは負けるけれど、プロジェクト管理では勝っている。パソコンの知識では負けるけど、プレゼン資料作成では勝っている。ピンポイントでは自分より勝っている人がいるからといって、自信を喪失する必要はないのだ。

 このことに気付いて以来、僕は考え方を変えたのだ。比較して、その能力の違いに嫉妬するのではなく、劣っている部分はその人に助けてもらおう。得意な人にアドバイスをもらおう、という気持ちを持つことができたのだ。

 この気構えでいると、何もかもがすべて楽になってくる。苦手なことは得意な人にやってもらおう。そのかわり、自分が得意なことは率先してやっていこう。このことがITエンジニアとして正しいのか分からない。しかし、僕の中では前ほど焦りやプレッシャーを感じることがなくなった。

 そうは言っても、いまだに自分はITエンジニアに向いてないんじゃないかと思うことがある。しかし、なんだかんだといいながらも、10年以上この業界にいて、それなりに楽しくやってきたので、向いているのだろうと勝手に納得しているのである。

 冒頭のように聞かれたら、

 「向いてるかどうか分からないけど、10年続けられたから向いてるんですかね?」

と疑問系で答えることにしているのである。

 続く

Comment(9)

コメント

インドリ

向いているとか向いていないなんて関係ないと思うな。
そんなことどうでも良くてボクは考えた事がないよ。
向いているなんて言っても正確な定義はどこにもないのだから、結局は自分がやるかやらないかの差だと思う。
自分よりも優秀な人が居たら鍛錬すばいい。
自分よりも優れていないと感じる人に会っても、その人もどこか自分よりも優れている部分が絶対あるからそれを探して鍛錬すればいい。
ただそれだけの事だと思います。

ホリ

インドリさん
コメントありがとうございます。

>自分よりも優秀な人が居たら鍛錬すばいい。

鍛錬しても敵わないほどの圧倒的な差というか
発想の部分でその考え方はなかったと感じたことはないでしょうか。

昔は僕も、優れている人に追いつこうと一生懸命な時期がありました。
そして、なかなか追いつけず、別の人はまた違ったマニアックな知識をもっており
その人にも追いつこうと頑張ったりもして…。
その時はかなり無理をして、それでも追いつけずに落ち込んだりしました。

このコラムで書きたかったことは、
他人と比較して悲観すべきではないということを書きたかったのです。

文章力が無いために誤解されてしまったようですね。

第3バイオリン

ホリさん

第3バイオリンです。はじめまして。

>比較して、その能力の違いに嫉妬するのではなく、劣っている部分はその人に助けてもらおう。
>得意な人にアドバイスをもらおう、という気持ちを持つことができたのだ。
こういう気持ちをもって、能力のある人からうまく助言をもらえることも能力のひとつだと私は思います。

私は社会人4年目ですが、会社に入るとすごい人っていっぱいいますよね。
学生時代、いかに小さい世界で大きな顔をしてきたかを思い知らされました。
私は「あの人はすごいけど私はすごくない。ただそれだけですが何か?」と
ふてくされた態度をとっていました。
しかし、比べても仕方ないし、学校に入り直して勉強するわけにもいかないので、
「世の中にはすごくない人の方が多いんだから大丈夫」と開き直ることにしました。
それで本当に大丈夫かどうかはわからないのですが(苦笑)、気分は楽になりました。

とはいえ、知りたい、学びたいという気持ちはいつも持ち続けています。
IT業界というのはいくら学んでも追いつかないくらい動向の激しいところなので、もしかしたら私の頭がついていけなくなる時が来るかもしれません。
しかし、少なくとも学びたい気持ちがあるうちは、私はITエンジニアとしてやっていけるのではないかと思っています(楽観視?)。
学びたいという気持ちすらなくなってしまったら、そのときこそITエンジニアとしての引き際なんではないかなと思います。

組長

こんにちは。

> 「あなたはITエンジニアに向いていますか?」

自信を持って「いえ、本来は向いてない性格だと思います!」と答えてます。笑
ヘルプデスクになった時はドンヨリしてました。自分がダメすぎて。

ただ、「先輩は先輩。私には私にしか果たせない役割がある」と気付いてからは楽になりました。

インドリ

どうもホリさん。

>鍛錬しても敵わないほどの圧倒的な差というか
>発想の部分でその考え方はなかったと感じたことはないでしょうか。
残念ながら職場では感じた事ないです。
それで「俺より強い奴に会いに行く」と考えてネットや専門書の著者に目を向ける事にしました。
それで漸く強い人を知る事が出来ました。
その望みは叶って、5歳でハッカーと呼ばれた人が居るとの噂聞いて凹みました。
あと、タネンバウム教授とかリーナス・トパーズ氏・まともとゆきひろ氏などのハッカーと比べて差を感じた事はあります。
だけど私の場合は逆に血沸き肉踊ります。
自分よりも強い人が居ない世界なんてつまらなすぎます。
何を目標に生きればいいのでしょうか?


>他人と比較して悲観すべきではないということを書きたかったのです。
それはわかるのですが、比較そのものを避けている印象があったので注意を促したくなりました。
悲観してあきらめるのは論外ですが、だからといって比較を止めていいのでしょうか?
私は常に自分よりも優秀な人と比較して成長し続けないと人間は駄目になると思います。
プロたるもの自分を甘やかしてはなりません。
それはどの職業でも同じであって、向上心が無い人はどの業界へ行っても駄目だと思います。

歩亜

お邪魔します。歩亜と申します。若輩者ですが、お給料をもらって
仕事をするプロの1人としてコメントさせて頂きます。

個人的な感想ですが、インドリさんとホリさんでは捉え方が異なって
いるだけであって、お二方ともプロとして、IT技術者としての向上心を
持った姿勢だと感じました。

ホリさんはプロと自分を比較し足りない所に気づくだけでなく、
併せて別の分野にも自分の強みがあると気づいていらっしゃいました。
これは弱みを諦めたという意味ではなく、強みを更に強くしようと
されているのだと感じました。
インドリさんはプロと自分を比較し、足りない所があると感じた上で、
逆に目標が明確化した、と足りない所を向上させるモチベーションに
転換していらっしゃるのだと感じました。

ホリさんもインドリさんも、相手のプロの部分を認め、敵わない部分
があっても、自分を卑下する必要は無い、と同じことおっしゃっています。
どのスキルを伸ばすかが異なっているだけであり、自分を甘やかしている
訳ではなく、お二人とも向上心をもってプロの仕事をされていると感じ
ました。

IT業界と言っても、様々なプロが存在しています。
「プロの仕事」をするためにそのプロ達が力を合わせています。
そんなプロに共通しているのは、社会を変えたい、社会を良くしたい
という社会人としての根本ではないでしょうか。

ホリ

みなさま、コメントありがとうございます。

>第3バイオリンさん

>能力のある人からうまく助言をもらえることも能力のひとつだと私は思います。
昔、ある上司から「誰が何を得意かわかっていて、すぐに引き出せるようにしておけ!」としつこく言われたことを思いだしました。

最近は、この能力が本当に必要だと特に感じはじめました。


>組長さん

適材適所ですね。
プロジェクトをマネージメントするときに、一番気を使う部分です。
人の役割分担を間違えると、大変なことになりますから。


>インドリさん

もしかしたら、インドリさんは職場で目標とされるエンジニアなのかもしれませんね。
常に強者を求め、上へ上へ目指していくというのはすばらしいことだと思います。


>歩亜さん

一つのシステムを作るにも、さまざまな知識が必要です。
すべてを一人でやるなんてことは到底不可能です。

歩亜さんのおっしゃるとおり、様々なプロの存在あってこそ
うまくいくのだと思います。

私は最近、プロをうまく使うプロになりつつあります(^^;

お茶

プロを上手く使うプロほどお金をもらいます。

本文意図とズレてますが。

Joel Spielman

なにげなく、今仕事から帰ってきて”今の仕事むいてないかな?”と思っていたら、偶然以上の記事を読んで、感動しました。
そうですね、総合力ですね。その通りです。
私は、生物学の研究をしています。
全然、以上の文章の趣旨とは関係ないのですが、プログラミングの技術を生物理論の構築に役立てたいのですが、どうしていいか考えているところです。周囲には全くそういう人がいないので。
システムバイオロジーというのでしょうか?
もちろん、わたしは単なる実験細胞生物研究員で、プログラミングは素人です。将来どこかで自分がトレーニングを受けるか、いい共同研究者募集中です。

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