組み込み系システムに3年、オープン系システムに7年。徹夜がこたえるお年頃。独身貴族から平民へと降格したホリは、墓場へまっしぐらなのだろうか……。

その日、彼女は品質管理者となる

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 プロジェクトマネージャというものはQCD(品質、コスト、納期)のバランスを考えなければならない。もちろんそれだけではないが、日々の生活においても、プロマネ的考え方はあらゆることに活用できるのである。

■新生活に向けて~PMBOKを参考に■

 今からさかのぼること2カ月前、1人暮らし暦5年以上のワンルームから、2人で生活するためのちょっと広めの部屋へ引っ越すという案がでた。さすがに、むさくるしい部屋で新婚生活というのもないだろうと同意した。

 新婚生活に向け、M嬢は浮かれながら部屋探しをし、新しい家具などを物色していた。引っ越すのは僕である。しかし、僕のことはどこか蚊帳の外だった。

 仕事をしながらの引越しというのは大変なのである。日々、仕事をしながら部屋の片付けをする。その困難さを予測し、僕はプロマネ的手法を用いることにした。1つの作業をタスクにわけ、スケジューリングし管理する。引越し日まで1カ月。あいだに夏休みというバッファまである。引越しというプロジェクトに何の問題もないように思っていた。そう、まだ、この時点では……。

■プロジェクトの阻害要因~窮鼠猫を噛む■

 プロジェクトを成功に導く上で欠かせないのは、要員のモチベーションである。プロマネ兼要員でもある僕は、余裕のあるスケジュールと夏休みというバッファに気を取られ、極度のモチベーション低下状態。気付けば残り2週間でほとんど何も片付けていないという状況であった。かろうじてクリティカルパス(粗大ごみを捨てる、各種手続き)だけは終わっていたのだが、それ以外は2週間前とまったく変わっていなかったのである。

 日々の生活をしながらの引越しというのは厄介である。ものが片付かないのである。気付けば引越し3日前にして、ほぼ何も終わってない状態であった。プロジェクトにおいて納期(引越し日)は絶対なのである。追い詰められたネズミは猫を噛むが、追い詰められたプロマネはどうするのか?

 もっとも安易な手段だが、効果的なのが要員追加である。

 僕は次の日、M嬢と近所に住む同僚2人を緊急召集し、プロジェクトの完遂を目指した。同僚2人には僕のタスクをふり分け、M嬢には品質管理(部屋掃除)をお願いしたのである。

■修羅場■

 次の日、午後いちで引越し業者がくることもあり、ほぼ徹夜状態の作業であった。まさか、プライベートでも納期直前の修羅場を経験するとは思わなかった。徹夜明けの朝日が目に痛いが、まだプロジェクトは終わっていなかったのである。

 引越し業者が到着し、なんとかまとめた荷物をトラックに運びいれてもらった。ひと段落ついたのもつかの間、すぐに引越し先へ行かなければならない。後は、荷物を運び入れてしまえば終わりだ、という軽い気持ちでいたのだが、引越し先にはすでに荷物が山のように積まれていた。そう、M嬢が自分好みの家具を買い揃え、送っていたのである。

 僕と同僚2人は四苦八苦しながら荷物を部屋へ詰め込み、なんとか事なきを得た。肝心なM嬢はというと、品質管理者(部屋掃除担当)として、前の部屋の管理人の立会いを受けていたので、この惨状には一切気付いていない。いい気なもんである。

■プロジェクト総括■

 今回のプロジェクトは納期を守れたということで、とりあえず成功と言っていいだろう。しかし、QCDのバランスは……。

 Quality:後日、敷金が半分戻ってきたということは、品質(部屋掃除)がよかったのだろう。品質管理者に感謝である

 Cost:引越し費用は当初の予定どおり

 Delivery:なんとか守ることができた

 と、総括したものの、その日の夜、追加要員たちに焼肉を奢ったことで、予算は大幅に超過したのである。

続く

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