エンジニア歴20年のおっさんが語る、いろいろな経験やこれからのソフトウェア業界についてです。

第14話 面接はセルフプロデュースから始めよう

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 今月のお題が「転職」っていうことで、わたしの経験を少しを書こうと思います。

 今までのコラムを読んでいただければ、わたしの職歴が垣間見えると思いますが、それなりに転職の経験があります。中にはフリーになったり会社を共同で設立したり、最近では倒産も経験しました。就職エージェントも利用したことがありますし、他社からのお誘いもあります。幸い経験がないのは「解雇」ぐらいで、そういう意味では転職については経験豊富だと思います。

 わたしは、面接を受ける方(働く側)と行う方(雇う側)の両方の経験があります。面接は企業ごとである程度考え方や、面接官個人の考え方があるのですべて一様ではありませんが、ここではわたしが面接を行った時に感じたことを書こうと思いますので、参考程度に読んで下さい。

■自分を演出しよう

 わたしは最近、自分をうまく演出することが下手な人が増えたと感じます。つまり、必要以上にコンプレックスを持ってしまうため、自分の良いところを引き出せないのです。そのため、転職にしてもなかなか思うように自分が出せなくて悩むことが多々あると思います。

 世の中の変化もあります。昔のような集団で画一的な行動様式ではなく、教育の考え方も個性を重視するようになりました(「オンリーワン」ってやつです)。無理強いをしないので、“人は人、自分は自分”という部分だけが変に確立してしまい、他人からどう見られていてもあまり気にしない部分が見受けられるようになりました。

 テレビ番組や映画では「演出」という役割があります。演出というのは、簡単にいえば、世界観を壊さないように全体を統括することです(ドキュメンタリーやニュースの場合は「やらせか演出か」で時々議論になったりしますが)。全体の構成を重視するので、所々デフォルメしたりします。つまり、番組や映画をよく見せるためにおおげさにしたり、実際とは違うことを入れたりします。極端な話、うそも入ってくるのですが、見てる側もフィクションだと分かっている場合はそこは問題になりません。

 演出を行うには世界観を知り、良いところも悪いところも認識する必要があります。例えば、原作がある物語を映画にした場合、原作を読んでから映画を見ると全体では「あー」と分かるのですが、細かいエピソードや登場人物、セリフなどが異なっていることに気づくと思います。好き嫌いは好みの問題なのでここでは割愛しますが、この手法を自分に取り入れることにより効果的に相手にアプローチできる方法があるとわたしは思います。わたしの経験もあるので割合有効だと思います(笑)。

■己を知り、己を引き立てる

 わたしは、自分をよく見せる方法を「セルフプロデュース」と(勝手に)呼んでいます。元々エンジニアではなく映画監督を目指していたこともあり、いろいろな物や事柄を演出する方法を無意識のうちに考えるクセがあります。その延長線上で自分や人の「見せ方」を考えます。

 まず、自分の長所と弱点をきちんと捉えます。

 誰しもコンプレックスはあると思いますが、コンプレックスは弱点ではなくメンタル的な負い目です。自分では「ダメ」と思っていても他人から見ると「そうなの?」と感じることは珍しくありません。基本的にコンプレックスは自分ではどうしようもないので、気にしないようにするよりは必要以上に考えないように心がけます。

 長所は外見よりも内面で考えます。外見は見せ方があるので個々のパーツ(例えば目とか顔とかスタイルとか)の良さを考えても実はあまり意味がありません。内面はやや抽象的でもかまいません。例えば、「優しい」「明るい」「誰とでも話すことができる」「社交的」……などです。ただ、無理して出しても仕方ないので出てこなければ、自分は「控えめ」もしくは「コツコツやるタイプ」など前向きに考えます。

 それらを勘案した上でまず、弱点を直せるか直せないか考えてみます。例えば、背が低いなど、身体的なことは難しいですが、ファッションセンスがいまいちなら修正も可能です。眼鏡で表情がキツそうに見えるなら、コンタクトレンズにしてみるのもありです。人間の価値は外見ではありませんが、第一印象は間違いなく外見です。パッと見て暗そうならそれだけでハンデになります。無理することはないですが、最低限明るく清潔そうに見えることが大切です。

 次に、自分を引き立たせることを考えます。基本は「笑顔」です。優しいのであれば少し微笑む感じで、明るいなら正面向いて笑うぐらいの勢いで(本当に笑ったらダメです)、控え目なら多少伏し目がちでいいのでややはにかむ感じです。必ず鏡を見ながら練習します。角度も重要なので少しだけ顔を傾けたりして練習します。背の高さは姿勢が良いと気になりません。これも鏡などで一度チェックすることをオススメします。

 話す時は相手の目をみますが、それが苦手な人はやや下の首やネクタイ位置を意識します。間違っても横を見たらダメです。背筋を伸ばしてあごをやや引くと感じ良く見えます。最近はデジカメがあるので、デジカメを相手の顔に見立ててあれこれ試行錯誤するのも良いと思います。客観的に自分の姿を見て「これならいいかな」と言うポイントを探します。そうすることにより相手はこっちのやる気を察知してくれることが多くなります。面接も駆け引きなので相手に負けないようにする心構えが必要です。

 外見に関してはとにかく「清潔感」を心がけます。面接ならヨレヨレのスーツとか、ぼさぼさの頭とか、見た目の善し悪し以上にマイナスです。身だしなみなのでこざっぱりしましょう。不潔に見えるとスタートラインから不利です。女性の場合は化粧に少し気をつけましょう。男性はパッとみて派手に見えると少し「ん?」と違和感を覚えます。事実、わたしの知ってるケースで化粧が派手に見えて上司が面接試験を落としたことがあります。

 セルフプロデュースは自分を偽って良く見せようとするのではなく、自分引き立たせて短所を目立たなくすることです。嘘をついても基本的には見抜かれるので、良いところアピールするように心がけます。特にやや「笑顔」の方が緊張して強ばるより余裕を演出できます。

■面接する方から考えた面接の受け方

 (注意)ここはわたしが面接をしていた時に考えていたことを元にしてあるので、全部がどこでも通用するとは限りません。参考程度に読んでいただければ幸いです。

 当たり前ですが、人間たった1回会って話を聞いただけでは人柄や性格などの把握はまずできません。面接の場合は履歴書と職務経歴書(あれば)、そして話してみた印象で合否を決めるため、バランスよく見せることが重要です。

 そういう意味では、最低限服装や髪型などパッとみて違和感を持たれないことが重要です。面接官だって、面接に来ている人が素ではなくある程度練習したり自分を演出していると思っています。それを踏まえた上で1つ上を行くことを目指し、相手にもう一度会いたい、少し様子を見てみたいと思わせれば勝ちです。そのために上手に自分を演出します。

1.身だしなみは普通に

 男性ならロン毛、ひどい茶髪(赤とか黄色はもってのほか)、イヤリングなどのアクセサリはやめた方が良いです。美容室とかの面接なら良いですが、年配の人にはまず受け入れられません。せめて普通の髪型に軽い茶髪ぐらいでしょうか。当然、元から金髪とかなら別ですが。女性はスカートの長さや化粧でしょうか。普段の格好はともかく、面接ぐらいTPOを考えて行かないと常識を疑われます。「当たり前」と思われるかも知れませんが、当たり前のことができない人も結構います。

2.挨拶だけはきちんと

 面接の時に緊張するのはある意味仕方ありませんが、最初と最後の挨拶ぐらいはきちんとしましょう。若い人の場合は多少大目に見ることはできますが、30歳過ぎてまともに挨拶できないと、それは確実にマイナスです。

3.あいまいな返事をしない

 職種や経験によって内容は異なりますが、もし、自分が「不安」に思っていることを聞かれても、基本的に自信を持って「イエス」と答えましょう。しどろもどろになったりすると相手はそこを突いてきます。その場で少し突っ込まれることがあっても深くはあまりないので気になったら帰って復習して下さい。

 ただ、全然知らないことが出てきたらそれは「経験はありませんが興味はあります」など前向きに答えましょう。聞いたこともないと言うと相手は「ふーん」という感じになり、少し雲行きが怪しくなる場合があります。質問する場合、大抵は知っていないとダメなことと知っていると有利なことの2つです。後者の場合は特に問題ないですが、前者の場合は答え方によってアウトです。緊張しているなら、少しゆっくり話すと良いでしょう。

 わたしは前のコラムでも書きましたが、出来ないことや知らないことでも「できます」と言ってしまうクセがあります(もはやオオカミ少年おやじか?)。自分がどうしてもこの会社で頑張って行きたい、何が何でも頑張るというならこれもオススメします。必然的に自分でスキルを上げないと立場がないので、そういう意味では自分で自分を簡単に追い詰められます。ただ、あんまり高いハードルはかえって体調を壊しますからほどほどに。

4.自信を持って話す

 背中を丸めてぼそぼそ話すとコミュニケーション能力を疑われます。少しオーバーなぐらい「ハキハキ話す」と明るく社交的に感じます。また、いずれリーダーにしたい人材を捜している時はこういう人を採用したいと考えます。いくらITスキルが高くてもコミュニケーション能力がなければ(普通は)リーダーになることはできません。マイナスイメージで印象付けるならオーバーな奴で印象づけた方が勝ちです。

5.自己アピールは簡潔に

 転職だと自分の経歴を話すことが多いと思います。ここではあまり余計なことを言わず、簡潔に期間、プロジェクトの内容、スキル(OSや言語、サーバなど)や担当した役割を述べます。あくまでもその人が何をやって来たのかが知りたいので、脱線したり脚色はしないこと。必要なら相手から質問が来るので、詰め込む必要もありません。むしろまとめ切れないと仕事でもまとまりがないと思われるかも知れません。わたしはここであれこれ脚色されると自信がないのであれこれ付け足しているのかなと考えます。

 必勝法としてはまず「自信」を持つこと。それだけで相手は「こいつは良いかも?」と思わせることができる可能性が高いです。若いうちは勢いだけでも良いと思います。それなりの年齢なら自信プラスまだまだ向上したいことをアピールします。相手の目を見てハッキリしゃべるだけで内容以上に良く見えます。逆に自信なさそうに見えるとスキルが高くても「ダメかな」と思われてしまいます。最低限、自信を持ち、向上心があることを言葉だけではなく表情でも訴えましょう。

 わたしの場合、それなりの年齢なら実績と落ち着き具合を見ます。実績は書類でしか分かりませんが、緊張は別にしてそわそわする人はあまり良く見えません。若い人はスキルよりは可能性を見ます。やはり明るく前向きな方が「取りあえず採用して様子をみようかな」と考えます。若いのに変に理屈っぽいと敬遠します。

 ちなみにわたしは、転職時や派遣先の面接で落ちたことは今までありません(これからは分かりませんが)。

■おまけ

 転職のテクニックはそのまま婚活にも使えます。あんまり着飾ってもボロは出ますが、少なくとも清潔感はないとダメでしょう。

 わたしは、どちらかといえば外見は良くない方で、学歴も高くありません(専門学校卒)。体型も決して痩せていませんし、背も高くありません(書いてて落ち込む……)。

 うちの奥さんは年上で、学歴も上、すらっとしててわたしよりも背が高く、しかも面食いです。初対面の時は相手にもされませんでしたが(まじで視線そらしてた)、それでも好きだったので自分の長所をアピールしながら一生懸命口説き、一緒になりました。

 転職もそれと同じで「何が何でも受かるんだ!」という気概が大切だと思います。マニュアル通りやってもまわりがみんなマニュアル通りならそれでは条件が良い方が有利です。もし、条件が不利なら1つでも良く見せられるよう考えて演出し、面接に臨みましょう。

 このコラムが転職を考えている人に少しでもお役に立てれば幸いです。転職予定の人は時期的に厳しいですが頑張って下さい。

Comment(3)

コメント

インドリ

おはようございます。にゃん太郎さん。
やはり大切は気概ですよね。
私も気概と努力だけで生きています。
実は私は自信なんて持っておりません。
この世界も上には上がおり、とてもじゃないけど自信なんて持てやしません。
例えば、リーナス氏などのハッカーと自分を比べると凹みます。
だけど仕事となれば、出来る/出来ないではなくて、やるかやらないかですよね。
世界一ではないけども、目の前の仕事だけは命を賭けてやり遂げる。
そんな気持ちが大事ですよね。

にゃん太郎

インドリさん、ありがとうございます。

 面接もそうですが、やる気って言うか覇気がないとこっちから見たら「本当にうちに入りたいの?」とか思っちゃいます。特に若いと覇気どころか無表情だし(苦笑)気概だけではダメですが。

kuma

にゃん太郎さん

こんばんは。
面接は、セルフプロデュース。つい最近まで、転職活動をするはめになっていた私からするとよくわかります。(なんとか仕事きまりましたが)
そうだと、納得できる点が多い記事でした。
わかっていても、結構、弱気に返事したりしてしまいましたね。


ただ、その経験から言うと、昨今では以下は通じにくいと感じます。
若い人なら、将来性を買う場合に通じると思いますが、年齢がそれなりになると全く無視です。即戦力がほしいし、正社員を雇用するという事は数百万円を投資する事になります。すぐに解雇するわけにはいかないし、そうすると、投資を会社は回収できません。もちろん、これまでの経験から理由づけでき、相手が納得してくれるような事項なら別です。

>出来ないことや知らないことでも「できます」と言ってしまうクセがあります
>自分がどうしてもこの会社で頑張って行きたい、何が何でも頑張るというならこれもオススメします。

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