技と名がつくと深入りしてしまうスキルマニアのエンジニア

雨雲の下のくだり坂

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 日曜の夜。休日出勤中だ。いいかげん煮詰まっている。なんだかイラっとしてきた。

 「帰ろう」

 そう決めた帰り道。大きな交差点の前で赤信号に躓(つまづ)く。あきらめて歩道橋を渡ることにした。じっとしていられない。とにかく歩いていたかった。

 眼下にテールランプを見下ろして、ふと足元。骨組みをつなぎ合わせるボルトがみどり色のペンキで塗られていた。この小さな部品は誰が作ったのだろう。

 建築物もプロジェクトの成果物だ。この橋は納期に間に合ったのだろうか。コストオーバーは発生しなかったのだろうか。

■読み違え

 わたしたちの仕事に標準というものはない。同じモノを作らせても、人によってかかる時間も、完成品のクオリティもまったく違う。

 プロジェクトはいつも出たとこ勝負。ふたを開けてみるまでまったくわからない。

 進捗というものは、どんぶり勘定でしか見積もりができないのかもしれない。何を根拠に人月という線が引かれるのだろうか。作業者のスキルも、体調もまったく関係ない。「できる人」の最大限のパフォーマンスを期待して時間が決められる。

 そして、遅れが生じると、残業、休日出勤があたりまえのように発生する。そもそも、高い稼働時間を前提に分担が決められている。

 がんばって、スケジュールを前倒しできても意味はない。「順調です」と、そう報告した瞬間に新しいタスクが増えるからだ。

■深読み

 兵士に戦う場所を選ぶ権利はない。与えられた戦場で与えられた役割がまっとうできればよい。しかし、戦いの中にいると、見えてしまうものがある。なぜ、こんなに激戦区なのか。なぜ、戦わなくてもよい場所が戦場になっているのかと。

 誰がこのデスマーチを作ったのか。消化作業にも参加せず、さらに火の手を広げようとしているのか。具体的な個人名が出せるくらいにハッキリと特定できる。

 別にそのことを、公にして弾劾するつもりはない。そもそも、政治力ではむこうが上だ。誰も何もいえなかったからこそ、こんな状況になってしまっているのだ。いや、誰も言えない状況を作り出せるから、そこにいるのだろう。

■心を読む

 不作為の作為を言いたいわけではない。この状況を受け入れるしかない自分自身の力のなさ嘆いている。フリーランスといえど、この程度でしかない。

 いくらプログラミング能力高くても、テストが効率よくても、ひとりで10人分の仕事などできるものか。

 システム開発は、コンピュータスキルによって支えられている。しかし、コンピュータスキルでは、状況は変えられないのかもしれない。

 1台の車が通りすぎる。雨が車の走る音を変えていた。

 どこか遠くからレベルアップを告げるアラート音が鳴り響く……。

【本日のスキル】

  • コラムニストスキル:レベル22
  • 前倒しをオンスケジュールと言い張るスキル:レベル16
  • バカの壁検出スキル:レベル7
  • いっそ転職しようかなと思うスキル:レベル1
  • 自己紹介スキル:レベル0
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