技と名がつくと深入りしてしまうスキルマニアのエンジニア

言葉は理解できなくても伝わる気持ち。言葉は理解できても伝わらない気持ち。

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 朝。ある開発現場での初日。

 割り当てられた机に座る。目の前で電話をしている人がいた。何を言っているのか、さっぱりわからなかった。彼の名はロン。出身は中国。オフショアで出している現地のエンジニアと打ち合わせをしていたらしい。

 少し離れた島にも、意味不明な会話をする集団がいる。なんでも、インドからきたらしい。スーツにターバン姿がまぶしい。インド人もビックリではなく、わたしがビックリだ。

 しばらくして、イランから技術者がやってきた。ここは、ほんとうに日本ですか。

■世界の縮図

 そういえば、自己紹介されたメンバーの中には「通訳」という肩書きの人が存在していた。そういうことか。フラット化した社会ここに極まれり。

 もう、髪が赤色とか緑色だったり、左右の瞳の色が違う人がやってきても驚かない。

 神戸という街は、国際色豊かな都市らしい。たしかに観光で来ている外国人は多いかもしれない。あきらかに地域に溶け込んでいる人をみかけたりもするが、すれ違うだけのこと。わたしとの接点はあまりなかった。

 いきなりアジアンな人たちに囲まれた。ハードル高いなぁ。

■プロトコルが違う

 公式なコミュニケーションは通訳を経由するので問題はない。アジャイルとかプロトコルとか訳さなくても大丈夫だ。むしろ翻訳しないでくれ。

 非公式でも、日本語による日常会話が可能だ。さすがに日本で仕事をしているだけのことはある。多少のディスコミュニケーションはいたしかたない。もともとエンジニアはシャイな人が多い。日本人同士でも、仕事以外の会話がない現場はよくある。

 が、彼らは饒舌だ。同郷の心安さゆえか、同じ国の人同士よくしゃべる。彼らの言葉で。1日中しゃべっているみたいだ。それでも、しっかりと納期は守っている。いったいいつ仕事しているんだろう。

 人の声というのは不思議なもので、声が聞こえてくるとそこに意識が引き寄せられるもの。何語なのかよくわからなくても気がつけば聞いている。大きな声で笑ってるよ。頼む、集中させてくれ。

 顔なじみになると、メンバー全員でランチをする機会ができる。せっかくなのでいろいろと深く聞いてみたい。日本人のひとりが口火を切った。ナイスきっかけ。と、思ったら失望した。話題のチョイスはゲームとパチンコだと。日本人同士で盛り上がってるよ。何やってんだ。

 もう、このプロジェクトの日本人メンバーとは仲良くしない。決定。

■世界につながるプロトコル

 トーマス・フリードマンは自分の娘にこう諭す。

 「宿題をすませなさい。中国とインドの人たちがおまえたちの仕事を食べようとしているぞ」

 プログラム言語に国境はない。ソースをみれば技術力はわかる。彼らはできる人たちだ。

 もうすでに、テクノロジにてこ入れできる人間は「無敵の民」ではないのかもしれない。『フラット化する世界』では、エンジニアは日本人だけの仕事ではない。働き手は世界中にいるのだ。

 システムとは、あるべき姿というものがある。誰が作っても同じものが出来上がるのが理想だろう。もちろん、納期やコストによる品質の差はある。決められたリソースの中で、到達点に対してどこまでできるのかが勝負だといえよう。

 その人ならでは、その地域ならではというものがない。神戸でしか作れないエラー処理なんていうものはありえない。

 エンジニアの仕事は最初からグローバル化の要素が含まれている。「最強の兵士」には「世界」という接頭語がつく。国内最強の兵士では、意味がないのだ。

 どこか遠くからレベルアップを告げるアラート音が鳴り響く……。

【本日のスキル】

  • コラムニストスキル:レベル21
  • ボディランゲージスキル:レベル7
  • パワーランチスキル:レベル1
  • 孤高のスキル:レベル3
  • 自己紹介スキル:レベル0
Comment(2)

コメント

組長

はじめまして。お邪魔いたします。

あの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ファンです。

はがねのつるぎ

>組長さん
えっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとうです。

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