心も体も動かない
■深夜。異変。
痛みで目を覚ます。十二指腸潰瘍がぶり返したのかと思って、少し様子をみていた。何カガヲカシイ。腹痛が激痛に変わり体が震えだした。救急車を呼べと全身が警告する。
行きつけの病院が受け入れ可能との返事が入る。神戸では新型インフルエンザが流行していた。救急も24時間体制である。車中は意外と揺れると感じたのは、異変を起こした体が敏感になっているせいだろうか。
「盲腸」と診断された。それも破れているとか。即手術をしないと危ないという。痛みの原因が分かれば、安心してしまうのはなぜだろう。……えっ、なに? 手術!? 仕事が……。学校が……。
■朝。術後。
目覚めると、知らない天井。ここはドコだ。
しばらくは入院生活。パソコンもネットもない生活である。体が動かないときには頭を動かせばいいと思う。しかし、頭さえも動かないときもあるものだ。術後の痛みが思考を妨げる。体にチューブとか刺さってるもん。そんなの無理だ。
■昼。読書。
痛み止めが効いている間はゴールデンタイム。家人に頼んで自宅から本を運んでもらおう。はた迷惑な病人である。一度覚えたスキルというのは便利なもの。集中力さえ途切れなければいくらでも読める。もちろん、普段ほどのスピードで速読ができるわけではないが。
ついさっきまで読んでいた本はロボットの話。こうゆうことやりたかったな……と、はるか昔に選択できなかった道を思い出す。まっすぐにエンジニアになれたら、その道を歩んでいただろうか。兵隊みたいなエンジニアではなく、司令官になれていただろうか。外は雨。ネガティブな思考が頭をよぎる。我ながら弱っているのかもしれない。よくない傾向だ。
違う本に手をのばす。ネット論だ。インターネットはすべてをさらけ出すという。ノイズ的なもの、考えのまとまっていないものも含めて。永遠の未完成であるならば、情報を整理することは無意味なように思えてきた。ユーザビリティというのも上から目線だ。いや、商売の目線か。ネットの情報は玉石混合である。書籍にだってロクでもないものがある。使えない情報も含めて、ちらかったおもちゃのような状態が情報のあるべき姿だとしたら、石にだって存在理由があるのかもしれない。これはパレートの法則か。
いくら活字中毒とはいえ、1日中読書ばかりしているのもしんどい。痛み止めも切れた。ぼんやりとした頭で思索する。眠ったり起きたりしながら。何か考えているのか何も考えていないのかよくわからない。
■夜。退屈。
テレビでも見よう。最近の病室はテレビ付きなのだ。おお、今日から新しいドラマが始まっているじゃないか。ナイスタイミング。ナイスキムタク。……つまんない。たいていの元ネタは知っているし、オチも予想どおり。ついさっき、池谷祐二の最新刊を読んだばかりだ。
ドラマや映画でみるコンピュータやパソコンの映像表現ってウソくさい。ムダに大きなフォント。必要以上にインタラクディブなインターフェイス。見ているほうが恥ずかしい。できるなら安心して見ていたい。本当はコンピュータを触っている絵ヅラなんて地味なもんだ。
と、どうでもいいことを考える。もう消灯の時間。入院生活は規則正しいのだ。まだ9時だけど。当然こんな時間に眠れるはずもない。思考は駆け巡る。こんなときに、ふと思いついたことがライフワークになったりするんだろうか。まだアイディアはカタチにならない。コトバにすらならない。ついでに文章もまとまらない。
■日々。回復。
翌日。再び、読書。学校の教科書。コンピュータサイエンスをちゃんと理解していないことがよくわかる。外では新型インフルエンザで大わらわ。学校も休校である。幸運なのか不運なのかよくわからない。窓の外は晴天なり。
何もかもがストップした。こんな時間があってもいい。ずっとダラダラしていた生活を過ごすことができたらどれだけ幸せだろうか。しかし、いつまでもこの状態ではいられない。
動き出すにしても、きっかけというものが必要である。だから、こんなまとまりのない文章をダラダラと書いている。書くことは一種のリハビリだ。静止した状態からいきなり全速で走るこなどできない。いまは、ゆっくりと歩こう。
退院が決まる。寝たきり生活よさらば……太ったかも。
どこか遠くからレベルアップを告げるアラート音が鳴り響く……。
【本日のスキル】
- コラムニストスキル:レベル34
- ぐうたらスキル:レベル8
- リハビリスキル:レベル3
コメント
第3バイオリン
はがねのつるぎさん
私も最近お見かけしないので、「何かあったのかな?」と心配していたのですが、
盲腸の手術とは・・・大変でしたね。
今は無理をしないでゆっくりしてください。どうぞお大事に。
はがねのつるぎ
>みねさん
>第3バイオリンさん
ありがとう。そして、ご心配おかけいたしました。
体のほうは順調に回復しておりますが、心が若干くじけております(^^;
たまにはこんな時期があってもいいですよね。