エンジニア職から営業職へ転換した自分。苦しくも楽しくもあるこのIT業界について、職種を変えたからこそ分かる自分なりの視点で流行のキーワードをぶった切ります。

日本とクラウド(2)~欧米でクラウドが流行る理由

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 前回は「バカコンサルがクラウドを連呼」しているトコロで終わったコラム。今回は海外のクラウド事情とビジネス手法を例に挙げてぶった切ります。

■クラウドの手法

 クラウドにはSaaS、PaaS、HaaS(IaaS)といったさまざまな種類(手法)がある。これも筆者からすると「無理やり種類分けしてるだけじゃん」という気がしてならない。

 たまに顧客や異業種の知り合いから技術的なことやシステムについて相談されることがある。

 つい先日も異業種の知り合いからSaaSとPaaSの違いについて熱心な質問を受けたが筆者はこうアドバイスした。

 「んーと点、いま解決したい問題はSaaSでもPaaSでもなくて、その業務をいかに効率化するかだよね!? クラウドに限らず、最初からコン ピュータやシステムの導入を考えるんじゃなくて、まずその業務のドコにボトルネックがあって、どうして非効率になっているのか原因を調べるのが先じゃな い!? ウン百万、ウン千万の予算が有り余ってるのか分からんけど、カネかけなくても、もしかしたら198円の電卓で効率化できる方法があるかもしれない よ」点と。

 ソフトウェアのサービスプロバイドを受ける場合、プラットフォームのサービスプロバイドを受ける場合、ハードウェアのサービスプロバイドを受ける場合、更にはそれらの複合型の場合などさまざまに分類されるクラウド……ちょっとうんざり。

 Salesforce.comのSalesforce CRM、Amazon.comのAmazon EC2、名前はいろいろあるが、筆者から言わせれば、どれも昭和初期に見られた、隣の家に味噌、醤油、米を借りに来ているのと同じことである。

 SaaSだPaaSだと議論するのは借りるモノが醤油か味噌かの違いで、問題はソコではないという事に気付いて欲しいものだ。

 巷ではサーバの仮想化やクラウドという言葉が独り歩きしているようだが、本当に今後の日本で、いや世界で主流となるのだろうか?

 筆者の考えは半分Yes、半分Noである。

 まずYesの部分から話をすると、クラウドの導入が進みやすいのは海外の企業であると考えている。

 ではなぜ海外の企業はクラウドの導入が進みやすいのか?

 これは日本人と欧米人との物事の考え方やビジネス手法の違いだと考えている。

■海外のビジネス手法

 スカンジナビア半島に位置する某大手携帯電話メーカーの人と話しをした時に、その人が嘆きとも愚痴とも言えることを言っていた。

 「欧米企業ってさ、サービスや製品を良いものに育てていく文化が少ないんだよね。もっと割りきりが早いというか、世に出したサービスや製品がヒッ トしなければ『はい、次』って感じで、悪いところをブラッシュアップしてユーザーが望むものに仕上げて行こうって気持ちが少ないんだよね」と言っていた。

 その時は「ふ~ん」と聞いていたが、今思うとなるほど……と思う。

 クラウドも欧米で発表されて日本に上陸したコンピューティング思想である。

 もともと日本発の目新しいサービスというのは生まれにくいが、欧米人の割りきりの速さがクラウドを加速させていると思っている。

 欧米人の考え方が「はい、次」という考え方だとすれば、その製品やサービスを展開する企業の経営者は「スピード感は求めるが、結果がヒットするかしないか分からない製品やサービスに対して大きな投資をするのは嫌がる」はずだ。

 とすれば、必要な時に必要なだけサービスを受けられるクラウドというものは企業にとって非常にありがたい仕組みだろう。

 ビジネスの創世記には少ないコストで最大限のパフォーマンスを発揮し、ビジネスやサービスが大きくヒットした時には、最初からリソースの拡張性を考えて構築されているクラウドを使うほうが都合がいいのだ。

 特にインターネットを利用したコンシューマ向けサービスプロバイドを行う場合、何かのきっかけ(例えばテレビで紹介されるなど)でアクセスラッ シュが予測される場合でも、即座にリソースの拡大を行い、何事も無かったかのように対応しなければ、ユーザーは二度とそのサイトを訪問したいと思わないだろ う。

 筆者を含めてネットを利用する多くの人は、サーバが今どんな状況に置かれているかなどは全く関係ない。見たい時に見たいのだ。レスポンスに時間が掛かり、挙句「404 Page Not found」が返されるようなWebサイトは訪問したくないのだ。

 また逆にアクセスラッシュが時間の経過と共に穏やかになって行った場合、次にいつ来るか分からないラッシュに備えてリソースを自前で維持するのは無駄でもある。

 そんな拡張性や縮小性に優れたクラウドならスグに対応でき、ビジネスを止める可能性が低くなる。

 トヨタが実践している「JIT(Just in Time……必要なものを、必要なときに、必要なだけ)」という考えと一緒である。

 スピード感を求める欧米でクラウドが流行る理由はコレだろう、と筆者は考えている。

 海外でクラウドが流行る筆者なりの考え、いかがでしょう? 次回は「日本のクラウド事情」を筆者なりの考えで切ってみたいと思います。

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